≪付録・序6≫
コスタニコの、オウタに関する話を聞いた私は、今までの半信半疑であった気持ちを改め、彼女は真実を語っているのだと判断した。
「ずっと疑問だった。どうして魔物のいない異世界で、忍術という魔法的なものが発祥できたのか。しかも忍術は500年程度の歴史しかないのに、その技術レベルは極めて高い。その疑問の答えは、こちらの世界の人間が異世界転移し、現地人を改造して技術供与を行ったからだったのか。すなわち忍術とは魔法が逆輸入されたものだったのか」
私は基本、観察者の立場でいるスタンスなのだが、溢れる探求心を抑えられず、コスタニコに問いかけた。
「けれどもまだ疑問が残る。それは時間のズレだ。転移組が異世界に渡ったのは50年前、忍術の歴史は500年、この450年のズレはどういう事なんだ?」
「可能性は三つ考えられる。一つ目は、異世界転移の時にタイムスリップ現象も併発しており、転移組は450年前の異世界に行っていたという事。二つ目は、私の異世界召喚魔法にてタイムスリップ現象が併発し、450年後の未来の異世界からオウタを呼び寄せてしまったという事。そして三つ目は、こちらとあちらの世界には時間の流れに差異があり、こちらでの1年はあちらでの10年に相当していたという事」
コスタニコはそう見解を述べた。
「それでオウタは、肝心のアイツはどこにいるんだ?」
イェンがオウタの件について話の先を促す。
「私はオウタを召喚し、彼を利用する事によってジェノサイドを遂行するための忍法の開発に成功した。しかしリーダーの言う通り、オウタの性格上、彼がジェノサイドに協力する事は有り得ない。だから私は、オウタが私の望み通りに忍法を使用せざるを得ない状態へと、彼を加工したのだ」
彼を加工、という不穏なワードがコスタニコの口から不意に飛び出した。
「!!」
目を見張るイェン。
「つまり、オウタを【生体ユニット】にしたのだよ。持ち主の意思に従い、忍法によって莫大なエネルギーをもたらしてくれるだけのアイテムにしたのだ。もう一度言おう、彼はここにいる。その名もー」
コスタニコは再び腰のケースを指先でコツコツと叩いた。
「【オウタデバイス】だ」
「……うぅっ」
コスタニコの発言を耳にしたイェンの身体が、異常発汗し、動悸を起こし、震えている。
再びフラッシュバックに襲われているようである。
「私はオウタデバイスにより単独で核融合反応のエネルギーを自在に引き出す事ができるようになったのだ。アハハハハ!」
高らかに笑うコスタニコ。
「さあ、リーダー。私のジェノサイドの手始めの件はまだ終わっていないぞ。リーダーが許可を出す前に、他種族の奴らが襲い掛かってきてしまったからな。仕切り直しだ」
そう言うとコスタニコは足元に倒れ伏していた有尾種をぞんざいに掴み上げて、イェンの方へ投げて寄越した。
その有尾種はイェンの手前に転がった。
コトゥーゲだった。
「コトゥーゲーーー!!!!!」
イェンは叫んだ。
「先ほどの他種族パーティとの戦いでは、なるべく殺さないよう手加減した。トドメはリーダーに刺してもらおうと思って。それを以てノットレイシストである事の放棄を示してもらおうと思ってね。けれどリーダーは体調悪そうだから、生きている奴らを全員殺すという事までは求めない。そいつだけでいい。確かそいつはリーダーが一方的に仲間だと認識している奴だったはずだから、実におあつらえ向きだ。さあ、そいつを殺してリーダーがもうノットレイシストでないという事を私に見せてくれ。出来ないというのであれば、あなたにはここで死んでもらう」
「断る!」
誰よりも仲間の大切さを知り、何よりも仲間を大事にする男・イェンは速攻拒否した。
「……やはりそうなるか。ならば残念だが、死あるのみ」
コスタニコは人差し指をイェンへと指向する。
その指先が紫色の光を放つ。
対物光線〈アンチマテリアルビーム〉であった。
非常に高い貫通力を誇る光線魔法でヘッドショットし、せめてもの情けで一思いに楽にしてあげようというのである。
次の瞬間、イェンの額に穴が開いた……と思われたが、
「え~い」
それよりも先に射線上へマクシアが飛び込んだのである。
彼女は魔法で防壁を張り、対物光線を弾いたのであった。
しかしコスタニコが照射を止めないので、ビームと防壁のせめぎ合いとなる。
「何の真似だマクシア。君はそういう事をするタイプの人間ではないだろ。V8野戦病院での子爆弾エピソードを聞いた時も私は強い違和感を覚えた。一体どうしたというのだ?」
対物光線は放ちながらコスタニコはマクシアに問う。
「私は良心の欠損・共感性の欠落・罪悪感の欠如と三拍子揃ったサイコパスなのですけど~、不思議と義務感というものはちゃんと働くんですよね~。野戦病院では責任者としての義務からああしましたし~、今は仲間としての義務からこうしてます~」
マクシアの答えにコスタニコは、
「なんと面倒な性質か」
とコメントしたが、それに対してマクシアに、
「それはお互い様ですね~」
と返され、
「……」
少しムッとなる。
「そこを退けマクシア。退かなければリーダー諸共死ぬぞ」
コスタニコは警告したが、マクシアは従わなかった。
マクシアの個人保有魔力量は42馬力とかなり高いが、オウタデバイス有するコスタニコ相手に勝ち目は無い。
いずれ魔力が尽きて防壁を張れなくなり、ビームに貫かれてしまう運命にある。
どうにかしなければならないのだが、どうしようもない。
絶体絶命である。




