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≪付録・序5≫

倒された他種族達が累々と横たわる中で、コスタニコが悠然と佇んでいる。

その姿からはまだまだ余力が感じられた。


「そんな……」


イェンが唖然としている。


「その途方もない魔力量……。まさか忍法なのか……」


コスタニコの個人保有魔力量は28馬力あるが、今の戦いで使用された魔力はどう見ても、その数値を遥かに超えていたのである。

では、どこからその魔力を得たのかといえば、考えられる手段は忍法:核融合反応の術だけなのだが……。


「忍法を使うためには、忍者一人と魔法使いが二人必要っていう話だったんじゃないのか……」


イェンの疑問に対して、


「あ、それなんですけど~」


答えたのはマクシアであった。


「二人の魔法使いの内、一人の役割は飽く迄トラブルが起こった時の補助なので~。魔法使いは一人いれば事足りるんですよ~。三身一体じゃなくて二身一体で使えちゃうんですよね~忍法~」


そう打ち明けるマクシア。


「そうなんだ……。だとしてもやはりオウタがいないと使用できないじゃないか。なのになぜ、コスタニコは単独で忍法を発動させる事ができたんだ」


戸惑うイェンに、


「アハハハハ」


とコスタニコは愉し気に哄笑し、


「いるよ、オウタは、ここにね」


と言って、その腰に下げていた小さなケースを、コンコンと人差し指で叩いてみせたのである。


「?」


イェンはコスタニコが何を言っているのか理解できず、首を捻る。


「ふむ、ついでだ。オウタの件も話してあげよう」


彼女は腰のケースを愛おしそうに撫でながら、


「オウタをこちらの世界へ召喚したのは、この私だ」


と衝撃の新事実を語り始めたのであった。


その内容は以下である。



50年前の権力闘争において敗北したジンコ派は、ダイマ派による執拗な殲滅行為に晒されていた。


もはやこの世界に安住の地は無いと判断したジンコ派は、異世界を亡命先に選んだのである。


ジンコ派が独占していた当時の最新の高度な魔法技術は、異世界転移を可能としていたのであった。


しかし、その魔法の技術的制約により、ジンコ派全員が異世界に行く事ができず、一部がこちらの世界に残らなければならなかったのである。


「異世界へ渡ったら、そちらで研究を行い、残された者達を必ず呼び寄せる」


転移組と残留組の間で、そう固い約束がなされ、異世界転移は実施された。


が、約束は即座に裏切られた。


異世界転移直後、残留組の中で、転移魔法を使える者が全員死亡したのである。

死因は遅効性の毒物による中毒死であった。


犯人は異世界へと渡った転移組であった。


こちらの世界に異世界転移の魔法を扱える者が残っていると、その者がダイマ派に掴まった場合、異世界にまで追手がかかる危険性があるため、口封じしたのである。


転移組から見捨てられた残留組は絶望した。


絶望したが、王位を取り戻すという復権の悲願は捨てなかった。

それまで捨ててしまったら、もはや絶望の中で滅び去るしかなかったので、その悲願に縋り付いたのである。


そうして時は流れていった。


残留組は、一人また一人と無念の内に亡くなっていった。


終にはコスタニコ一人だけとなってしまったのである。


たった独りになっても彼女は復権の悲願を諦めなかった。


けれども一人の力ではどうしようもない。


そこでコスタニコが考えたのが、異世界へ亡命した転移組を、こちらの世界へ強制的に呼び戻す事であった。


それは復権の悲願をつなぐ行為であると同時に、裏切った転移組に対する復讐でもあった。


転移魔法を使える者は全員殺されてしまったが、その知識の一部は残っていたので、彼女はそれを研究し、異世界召喚魔法を開発したのである。


そして召喚魔法を試してみたところ、現れたのが意識を失った状態のオウタであった。


召喚目標は、転移組の不特定の誰か、であったので狙い通りにはならなかったが、召喚魔法の仕様上、全く無関係の者が呼び出されるという事は無かったので、コスタニコは念のためオウタが意識を取り戻さないよう処置を施し、彼の体を調査してみた。


するとオウタが魔力を持たない異世界の人型知的生命体であり、さらにこちらの世界の魔法技術で改造を施されている事を確認したのである。


(転移組が魔法で現地人に手を加えたのだ。いざという時の戦力を確保するために)


コスタニコはそう理解した。

更に調査を進めていったところ、


(! これは!)


復権の悲願を成就させるための糸口を彼の体に発見したのである。


(これがあれば……)


だが、出来たのはそこまでだった。

見出した糸口を具現化するためには、オウタがちゃんと意識のある状態で、自主的に協力してもらう必要があったのである。


しかし、オウタを覚醒させるのは危険であった。

彼は裏切った転移組の手先である事が考えられ、意識を取り戻した瞬間、残留組の自分に敵対してくる危険性があったのである。


そこでコスタニコは一計を講じた。

オウタの肉体を魔法で性転換し、異世界感のある物はすべて取り上げ、そして当面の生活費、偽造の身分証明書、こちらの世界のお手製ガイドブックを与えて、しばらく泳がせたのである。


そうして彼を監視し、その正体を見極めようとしたのであった。


判定結果は白であった。


オウタはこちらの世界について全くの無知であり、転移組と残留組の因縁について知っているとは思えなかったのである。


続いてコスタニコはオウタと接触を持つ事にした。

彼の所属するパーティに自身も入る事にしたのである。


その際、彼女はキャラクターを偽装した。

猫背気味でボソボソ喋りの内気で気弱で大人しいコスタニコ・セクスタという人物に化け、髪で顔を隠すようにしたのである。


このようにした理由は、オウタがこの世界に召喚された当初の事を認識しているかもしれなかったからであった。

彼は意識を失っていたが、異世界の未知の技術で周囲の状況を把握していた、という可能性が捨てきれず、もしそうなのだとしたらコスタニコ・ジドラジドのキャラで会った途端、


「僕をこの世界に呼び出して、色んな事をして、放置した怪しい女だ!」


となり、強い不信感を抱かれ、都合の悪い事になってしまうため、念には念を入れての対処であった。


コスタニコはキャラクター以外に、もう一つ偽装を行った。

それは極レイシストであるにも係わらず、ノットレイシストを名乗った事であった。

立ち上げ最中の新米パーティに、自分のような優秀な人材が加入を希望するのは非常に不自然なので、理由付けが必要であった。

その理由となり得るのが、リーダーのイェンがノットレイシストである事ぐらいしかなかったのである。

ノットレイシストを称するなどコスタニコにとっては虫唾が走る行為であったが、目的のために我慢したのであった。


オウタと同じパーティメンバーになれたコスタニコは、本来の目的である、彼に自主的に協力してもらう、という事に取り掛かった。


ここで功を奏したのが、オウタを事前に女体化しておいた事であった。


性転換魔法が固定化し、女のままになってしまっていたオウタは男の身体に戻る事を切望していた。

その望みに付け込む形でコスタニコは彼に協力してもらう事を同意させたのである。


オウタにかかった性転換魔法が固定化している原因は、彼を召喚した時の調査で既に判明していた。

原因は転移組による肉体改造であった。

オウタの身体は性転換魔法を施すと、意図的に解除するまで、そのまま固定される仕様となっていたのである。

ちなみに動物化魔法でも固定化される仕様になっているのを確認したが、彼を動物にしても使い道が無いのでやらなかった。


オウタの自主的な協力が得られるようになったので、コスタニコは復権の悲願を成就させる糸口の具現化に取り掛かった。


その糸口というのが忍術と魔法を合体させる忍法だったのである。


オウタを改造した転移組の設計思想、つまり、


「何を目的として改造するのか」


を読み取ったところ、忍法の実現、を目指している事が確認できたのであった。


(これを引き継いで完成させる事ができれば、復権の悲願を達成する決定的な力になる!)


そう考えたコスタニコは、才のマクシアの助力も得て、見事、忍法:核融合反応の術を結実させたのであった。


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