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≪付録・序4≫

コスタニコは視線をイェンへと向けた。


「先ほどジェノサイドの手始めとして「あいつら全員殺すから、それを許可してくれ」と言ったけど、おそらく私の真意が伝わっていないと思うから補足しておく。手始めなのは「あいつら全員殺す」ではなく「それを許可してくれ」の方だから」


「なに? どういう事だ?」


イェンが顔をしかめる。


「リーダーに他種族を殺す事を認めて、ノットレイシストである事を放棄して欲しいのだ。ジェノサイドを遂行していくに当たって、当然、ノットレイシストなどという存在は排除しなければならない。リーダーとは一緒に冒険し、生死を共にした誼があるから、個人的には始末したくはない。だから他種族のあいつらを殺す事に許可を出して、今ここでノットレイシストである事を辞めて欲しい。それこそが私のジェノサイドの手始めなのだ」


「断る」


速攻で拒否するイェン。


「そもそもの話、ジェノサイドなど実行不可能だ。なぜならオウタが絶対協力しないから」


その通りであった。

忍法を発動させる主体は忍者なので、オウタの力が無ければ使えない。

そして彼はジェノサイドに賛同し、協力するような人物では決してないのである。


「アハハハハ」


コスタニコは笑った。

額に指を添え、今のイェンの発言を嘲るように笑ったのである。


「果てして本当にそうかな?」


意味深な目線をこちらに向けてくるコスタニコ。


その時であった。


「俺達を全員殺すだと? 聞き捨てならないな。貴様ら、有無種の私掠パーティか!」


私達にそう声がかけられたのである。


振り向くと、先ほどまで負傷者の救護に当たっていた他種族パーティのメンバー達が武器を手に敵意をまとい、こちらを取り囲んでいたのである。

私達の会話の一部が漏れ聞こえてしまっていたのであった。


「言っておくが横取りできる成果など何もないぞ。俺達は大魔王と戦い、大きな損害を受け、その強さを改めて思い知っただけだからな」


「私達は私掠パーティではない」


コスタニコが返答する。


「お前らを皆殺しにするのは、単純にお前らが駆除すべき害獣だからだ。六カ国不戦条約も知った事か」


「!!」


彼女の言葉に他種族パーティのまとっていた敵意が殺意へと変貌する。


「さあ、抗え。でないと一方的に鏖殺されるだけだぞ」


コスタニコも殺気を放ち、他種族パーティへと向かっていく。


「いきなり殺しに来るとは、なんと野蛮な! シルカの件で、有無種にもマシな奴はいると思ったが、所詮、モブはモブという事か!」


コスタニコと他種族パーティはバトルへと突入してしまった。


他種族パーティは先の二体の大魔王との戦いで損耗しているとはいえ、有無種以外の五種族すべてがいるので、その数は多い。

さらにはトップランカーの精鋭達なのである。


それをコスタニコたった一人で相手取って勝利するのはどう考えても到底無理であった。


二人の他種族が同時に剣でコスタニコへ突きかかった。


それを受ける彼女のローブが翻る。

ローブ内から二本の剣が出現し、コスタニコはそれを操って苦も無く二つの刺突を止めてしまう。

それだけではなかった。

止めた次の瞬間、相手の剣を破壊してしまったのである。


剣には斬撃魔法がかかっており、魔力を上乗せすれば斬れ味が増して優れた剣と化すので、コスタニコの二剣には相当な量の魔力が注ぎ込まれているようであった。


強力な二剣を手にコスタニコは縦横無尽に立ち回り、他種族の武器を次々と破壊して、斬り倒していく。

その洗練された動きは超一流のダボーソーダーのそれであった。

彼女はその本領を私達に隠していたのである。

過去の戦闘においてコスタニコはこれまで一度も深手を負った事が無かったのだが、それは接近戦におけるその実力の片鱗を見せていたからなのであった。


彼女の真のジョブは火力支援士〈ファイエル〉ではなかったのである。


前衛も後衛も務められる、多用途士〈マルチローラー〉であったのだ。


「舐めるなぁッ!」


一人の他種族がコスタニコの右手の一剣を受け止める事に成功する。

自身の個人保有魔力量をすべて己の武器に注ぎ込む事により、破壊されるのを免れたのである。

だが、完全に破壊されるのを免れた訳ではなく、今までのように一瞬で壊されてしまうのを防止しただけであった。


「このメスモブがッ!」


別の他種族が反対側から斬りかかり、コスタニコはそれを左手の一剣で防ぐ。

こちらも先のと同様の手法で、自身の武器がすぐに損壊してしまうのを凌いだ。


コスタニコは二名と同時に、一時的に鍔迫り合う状況となり、その動きが止まる。


他種族の精鋭達はこの好機を見逃さなかった。

彼女の前後からだけでなく、跳躍してその直上からも襲い掛かり、三方向より仕留めにいったのである。


両剣が塞がり、その場から動く事も出来ないコスタニコは正に万事休すであった。


しかし彼女はここで多用途士としての真価を発揮したのである。


引力光線の魔法を放ったのである。


信じられぬ事に三つ同時に。


三重詠唱〈トリプルタスク〉であった。



以前、三重詠唱というものは存在しない、と記述した。

なぜなら通常の人体で呪文が唱えられるのは口と脳内の二か所しかないからである、と。

それは事実である。


けれども実は一つだけ三重詠唱をしたも同然の事象を実現させる方法があるのである。

通常の人間には不可能とされる事象を可能にする特殊能力、すなわち超能力〈スペック〉を使う事によって。

呪文の詠唱無しで魔法を発動できる無詠唱のスペックがあれば、二重詠唱と合わせる事により三つの魔法を同時に行使する事ができ、トリプルタスクとして成立するのであった。


つまりコスタニコは無詠唱の超能力者〈スペッカー〉だったのである。



引力光線とは、金色をしたギザギザと波打つ光線であり、これを受けたものはその重量を失ってしまう。


コスタニコが照射した三筋の引力光線は前後と直上から襲撃しようとした他種族を捉え、その身体を空中に持ち上げてしまった。


そしてその後、それらを猛烈な勢いで振り回し、鈍器よろしく、それで他の他種族を殴りつけ出したのであった。


強力な二本の剣と、強烈な三本の引力光線にて暴威を振るうコスタニコは、もはや大量破壊兵器であった。


トップランカーの精鋭であろうと人の身でこれに抗う事は不可能であり、他種族パーティは次々と薙ぎ倒されていき、全滅してしまったのであった。


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