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≪本論・十二人の怒れるヒーラー9≫

(よし! これでマクシアは無罪だ! どこの誰で、なぜ弁護してくれたのか知らないけれど、ありがとう8番ヒーラー!)


私は胸の中で感謝する。


その時であった。


「有罪だ!」


叫びに近い声が法廷内に響き渡った。

発声源は3番ヒーラーの男性であった。


「誰が何と言おうと被告は有罪なんだ!」


彼はマクシア有罪に固執していた。


その露骨なまでの態度に、私は理解した。


(アイツ、ブルータスだ)


この見世物裁判はブルータスが、ライバルのマクシアを陥れるために裏で仕掛けたものであったが、彼は隠蔽措置を利用し、3番ヒーラーとして表舞台にも立ち、直接、手を下そうともしていたのである。

だというのに出来レースであったはずの茶番劇が覆されたので、大いに取り乱してしまっているのだ。


「そうだ! 子爆弾だ! 子爆弾のエピソードだ!」


ブルータスは大声で強調する。


「飛び込んできた子爆弾に哀れな患者を被せて殺害した件! この悪魔の所業こそ、被告の人格がどのようなものであるのか如実に物語っているではないか! 被告は悪だ! 極悪だ! だから処刑すべきなのだ!」


マクシア死刑を意地でも押し通そうとするブルータス。


「うあぁぁぁぁぁぁ!」


突然、法廷内に女性の泣き声が響き渡った。


4番ヒーラーが急に慟哭したのである。


「すみません、すみません、すみません、すみません……」


何度も謝罪の言葉を繰り返す4番ヒーラー。


「その子爆弾のエピソードについて……私……黙っていた事があるんです……」


嗚咽を漏らしながら4番ヒーラーは、


「被告は……殺害なんて……していないんです。……だって……被告が爆弾に被せた患者さんは……既に死亡していたんですから……」


と告白したのであった。


「お亡くなりになっていたのは間違いありません、私が看取りましたから……。そして、その事を責任者である被告にも報告しました。……だから被告は、遺体である事を理解した上で、爆発の被害を防ぐために利用しただけなんです……、殺人行為じゃないんです……うあぁぁぁぁぁぁ……」


再び号泣し出す4番ヒーラー。


「すみません、すみません、もっと早くに言うべきだったのに、黙っていてすみません。私、被告の事をとんでもなく悪い人だと思っていて、だからそれに反する内容の事は言わない方がいいかなって思ってしまって……。けれども先ほどの弁護を聞いて、悪人なんかじゃなくて実は凄い人なんだってわかって……うあぁぁぁぁぁぁ……」


「……」


子爆弾のエピソードの真実が明らかになった事によって、ブルータスは言葉を失い、茫然としてしまっていた。

これでもうマクシアを糾弾する術は無いと思われたが、彼は執拗であった。


「……た、例えそうだったとしても被告が悪である事には変わりない! だって御遺体をそんな風に扱うなんて酷いじゃないか! だから天罰が下ったんだ! あの爆発で被告のみが致命傷を負うという天罰が! 天罰が下ったんだから、やはり被告は悪だ!」


もはや理屈ではなく天罰という運命的な事象を根拠として、マクシアを悪者にしようと足掻くブルータス。


だが、


「うあぁぁぁぁぁぁ!」


4番ヒーラーの泣き声が再び法廷内に響き渡った。


「すみません、すみません、実はもう一つ、黙っていた事がありました! 私、見たんです!」


自白する4番ヒーラー。


「爆弾の上に遺体を被せた被告が、更にその上に自分の身体を覆い被せるのを!」


4番ヒーラーは涙ながらに説明する。


「被告は爆発による周囲への被害を阻止するために、己の身も犠牲にしたんです! ですから被告が致命傷を負ったのは天罰なんかじゃ決してありません! 献身の証です!」


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