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≪本論・十二人の怒れるヒーラー4≫

2番ヒーラーによる証言。


「被告は常に目隠しをされていますが、治療時、手元に止血帯が無くなると、その目隠しを外して一時しのぎの止血帯として使用する事があったのです。そして、使い終わるとそれを絞って再び目隠しとして装着してしまうのです。血で赤く染まった目隠しをして、しかも絞りが甘いものですから血がそこからダラダラと垂れてきてしまいまして……見た目がホラーになってしまっているんです。そして、そんな姿で患者の生死を決定していく訳ですから、ビジュアルもやってる事も完璧に死神です。そうした彼女の有様はV8野戦病院を恐怖に陥れました。彼女のその姿を目にしただけで、お迎えが来た、と失神してしまう者まで出る始末です」


6番ヒーラーによる証言。


「そうした極限状態のV8野戦病院で、ヒーラー達のメンタルが崩壊せずに済んだのは副責任者のブルータスさんがいてくれたからです」


ブルータスとは、以前に少しだけ触れたが、帝立勇者聖女養成専門学校の成績最優秀者の双璧の一角で「識のブルータス、才のマクシア」と並び称された人物である。


「ブルータスさんは「私が責を負います」と言って、死ぬまでの経過観察の時に禁止されていた患者さんへの鎮痛魔法使用を許可してくれたり、被告に指定されなかった患者さんへの治癒魔法行使をOKしてくれたんです。そうした事がメンタルヘルスケアとなってヒーラー達は精神的限界を迎えずに済んだんです。ブルータスさんがいてくれたおかげで助かったんです」


「あの時のV8野戦病院内は、マクシアが悪でブルータスさんが善、といった構図が出来上がっていたよな……」


11番ヒーラーがそう証言を添えた。


1番ヒーラーによる証言。


「シルカ平原攻略戦は終わりました。ですが、助けられる者を見殺しにした事、苦痛の中で死んでいく患者を最後まで見届けさせられ事によって、V8野戦病院に務めた多くのヒーラーがPTSDを患う事になってしまいました」


PTSDとは、極度の心理的ストレスに晒された事によってトラウマ〈心の傷〉を負い、後の日常生活において心身の不調が後遺症のように継続していくことである。


「悪夢・急な胸の苦しみ・鬱などに皆、苛まれています。中でも深刻なのが、ヒーラーであるのに、治癒作業を行う事に対して忌避感を抱いてしまうという症状です。さらにPTSDとなったのはヒーラーだけではないのです」


1番ヒーラーは訴えるようにして言った。


「V8野戦病院で救命された多くの冒険者の方々にも、サバイバーズ・ギルト、というPTSDが発症したのです」


サバイバーズ・ギルトとは、災害・事故・戦争などによって周囲の人々が命を落とす中で、生き延びられた人が、


「自分だけ助かってしまって申し訳ない」

「自分なんかよりも助かるべき人が他にいたはずだ」

「助からなかった人は自分を恨んでいるに違いない」


といった強烈な罪悪感に襲われてしまう事である。


ここまでの証言が行われたところで、満席の傍聴席には暗く沈んだ空気が充満していた。

傍聴席には、V8野戦病院にいた者達が詰めかけており、皆、1番ヒーラーの言ったPTSDの罹患者だったのである。


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