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≪本論・シルカ平原攻略戦・転8≫

シルカの勇者達の活躍が戦場にもたらしたものは他にもあった。


それは、リスペクト、である。


リスペクトとは、他者の行為の価値を認め、敬意や尊敬の意を表す、という言葉である。


レイシストであるため、互いに差別合戦を繰り返すだけであった各種族の間に、このリスペクトが生まれたのである。


なぜリスペクトが生まれたのか?


それはシルカの勇者達が行ったのが


【無差別救出】


だったからである。


先にも述べたが顎足付の胴体部に貼り付けられている囚われ人はハイエーサーに取り込まれているため、その種族を判別するのが難しい。

時間をかけて注視すれば分かる可能性もあるのが、そんな真似をしていたら手遅れなってしまう。


ゆえにシルカの勇者達はどの種族であるのかという事は度外視して、とにかく助けに向かうのであった。


そうして救助した者が同じ種族であれば御の字であるし、他種族であれば性別関係無しで、


「ほれ、攫われてたお前んとこのお姫様だぞ」


と、横柄な態度で、相手種族にその身柄を渡すのである。


渡された種族は素直に礼を述べるのかというと、そこはレイシストなので、


「頼んでない」


「余計な事をしやがって」


「お前らの世話になるくらいなら死ぬべきだった」


など散々グチグチと言いはするのだが、結局は最後に、


「だが助かる」


と感謝の言葉らしきものを口にするのであった。


以上のような遣り取りを互いに行うのが、恒例行事となっていたのである。


非常に感じの悪い交流なのだが、命懸けで仲間を救出してくれたのは厳然たる事実であるため、それを蔑ろにするほど皆、不躾な愚物ではなかったので、差別意識だけでなく、リスペクトも抱くようになったのであった。


止む無くそうなったとはいえ、このレイシスト真っ盛りの時代において、異なる種族の間でリスペクトの応酬が繰り広げられるという驚嘆に値する事態が発生したのである。


リスペクトは種族の垣根を越えたのであった。




余談となるが、この偉業の立役者であるオウタはハートマン教練法を行った事により、全種族の全受講者達から大いに嫌われ、バッシングされまくってしまった。


「頭おかしきこと山の如し」


と批評され、その名を口にする事も憚られて、


「例の彼奴[きゃつ]」


「名前を呼んではいけない彼奴[きゃつ]」


等と呼称されてしまう始末であった。


しかしダーティープラトンを完璧に封殺するという結果が出ると、その一部が手のひらを返して、彼の事を褒め称えるようになったのである。


この事について当のオウタは、


「俺を非難する奴はキチガイだ。俺を称賛する奴は、よく訓練されたキチガイだ」


とコメントしていた。


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