≪本論・シルカ平原攻略戦・転5≫
そういう教練法であるとはいえ、オウタの余りの御無体っぷりに、いずれブチギレてしまう者が出現するだろうと思われたが、果たして出た。
オウタは異世界人であるが、身体的特徴上有無種に分類されるので、最初にブチギレるのはレイシスト的観点からして、有無種以外の種族になると予想された。
しかし初めてのブチギレ者は意外にも有無種であった。
「口の利き方と態度を改めろ、この下女がっ! 私は皇族に連なる、やんごとなき血筋の者だぞ!」
そう声を荒げたのはカスムという男性であった。
故あって、その高貴な素性を隠して冒険者をしていたのだが、オウタの無礼に耐えられず、身分を明かしてしまったのである。
だが、尊い血脈が相手であっても、オウタは全く怯まなかった。
「何がやんごとなきだ。パパが作ったシーツのシミにママの割れ目が触れて出来たのが貴様だ! そんな奴に、やんごとなきもへったくれもあるか!」
オウタの罵声に、カスムは青筋を立て、ギリギリと周囲に聞こえるほどの歯軋りをした。
すわ手が出るかと思われたが、彼はすんでの所で自重し、その場から去った。
そして二度と講座に参加する事は無かったのである。
次に出たブチギレ者は、ヒラバヤという顔付きも体付きもひょろ長い有紋種の男性であった。
「モブが調子に乗りおって。劣等種であるという事を、この俺が身を以てわからせてやる」
そう息巻いて彼はオウタに戦闘を仕掛けたのである。
ヒラバヤは、他種族へ攻撃行為をしても六カ国不戦条約の適用外とする事を祖国が約束する、という私掠免許を持っていなかった。
よって戦いを吹っ掛ければ条約違反で身柄を相手国に引き渡されてしまうのだが、彼はそんな事はお構いなしであった。
ヒラバヤは一見温厚そうだが、逆上すると後先考えず何をしでかすかわからない要注意人物だったのである。
彼は個人保有魔力量100馬力の戦闘力の持ち主であったが、オウタに、
「私掠免許も無いくせに戦闘行為に及ぶとは。思考回路がショートしたか? パパとママの愛情が足りなかったのか?」
と煽られ、怒りのままに襲い掛かった。
が、案の定、ミラクルパンチによる初撃必殺で一撃の下に伸されてしまったのであった。
その後、オウタはヒラバヤの六カ国不戦条約違反については不問とした。
しかし事は、それで終わらなかったのである。
後日、ヒラバヤが復讐してきたのであった。
オウタを闇討ちしたのである。
襲撃時、ヒラバヤは二度と後れを取る事がないよう、非常に危険な行為をして己の戦闘力を高めていた。
同じ有紋種の者達を脅迫し、無理矢理自身への魔力供給を行わせ、その保有魔力量を200馬力にまでアップさせていたのである。
元の個人保有魔力量が100馬力であるから100馬力の追加である。
先にも述べたように、人一人が受け止め切る事が出来る魔力量には個人限界魔力量という上限があり、それを超えるまでに供給すると魔力が暴発し、爆発すると言われている。
よって過去事例より安全とされる20馬力程度を増やすまでに止めるのが一般規則であったのに、ヒラバヤはその5倍もの量を己が身に供給させたのであった。
魔力が暴発し、爆発を起こせば死ぬのはヒラバヤだけではない。
その傍で供給を行っている者達も当然巻き込まれ、爆死する事となる。
ヒラバヤは自身の復讐心を満たすために多くの同胞の命を危険に晒すという愚行に及んだのであった。




