≪本論・シルカ平原攻略戦・転1≫
メガネの問題は収束した。
しかし戦闘ストレス反応による戦意低下でシルカ平原攻略戦が停滞している、という問題については、解決の糸口さえつかめない状態が続いていた。
だがしかし、この泥沼化していた戦況を打破してくれる存在が遂に出現したのである。
それは忍者[ヌィンジャ]のオウタであった。
彼は一体どのようにして、難局を打開したのか?
それは、下劣の極みであり、最大のストレッサーであった、あの悪魔の連携攻撃・ダーティープラトンを破って魅せたのであった。
オウタは例のバリツの術で、ダーティープラトンを解明し、攻略法を編み出したのである。
その攻略法の内容は以下である。
まずは顎足付の歩脚を掻い潜る事から始まる。
突進時、高速稼働し、粉砕器と化している非常に危険な顎足付の六本の歩脚。
これをどうやって掻い潜れというのか?
実は、爆走している時の歩脚であるが、一本一本が不規則に動作しているのではなく、一定のリズムで規則正しく動いていたのである。
ゆえにタイミングを合わせれば素早く通り抜ける事が可能なのであった。
歩脚を掻い潜り、顎足付の腹下に入り込んだなら、次に行うのは、神経節、の破壊である。
神経節とは、歩行の運動パターンを自律的に制御する脳とは別にある神経の塊である。
顎足付は、この神経節が六本の歩脚の付け根の中心部にあり、これが損傷すると足がすべて麻痺し動作しなくなってしまうのであった。
よって、壊し、その動きを止めるのである。
神経節の破壊には剣を用いるのだが、顎足付の全身は頑丈な外骨格で覆われている。
それを剣で貫いて正確に神経節を損傷させるのは困難である。
ナパーム弾を起爆されてしまうので、何度もやり直す余裕は無く、一撃で遂行しなければならない。
そこで、外骨格で防護されていない特定の関節部の隙間へ、特定の角度で剣を滑り込ませる事により、一突きで神経節を損傷させるのである。
この時の、位置や角度について、少しのズレも許されない。
ズレれば失敗となる。
神経節の破壊が成功したら顎足付の胴体部へ移動する。
通常であれば胴体部に取り付いた瞬間、大顎が閉じてナパーム弾を起爆されてしまうのだが、神経節を壊された事によって顎足付の神経系に混乱が生じており、一瞬だけ大顎を閉じる動作にラグが発生する。
このラグの間に、顎関節部に剣を突っ込み、大顎の閉じる動きを阻害して、ナパーム弾の起爆を阻止する。
この時も、剣を突っ込む位置や角度が少しでもズレれば火達磨の運命が待ち構えている。
顎足付の大顎の力は極めて強いため、その動きを関節部の剣で妨げられるのは数秒程度である。
その数秒程度の間に、囚われている人をハイエーサーから解放し、脱出するのであった。
以上がダーティープラトンの攻略法であった。
薄氷の上で三段跳びをかましながら針穴に糸を通すといったレベルの離れ技中の離れ技であった。
しかしオウタはこれを例のしなやか過ぎる動きでやってのけ、救出絶対不可能とされていた囚われ人を物の見事に助け出したのである。
拍手喝采の偉業であった。
だが、これで停滞していた戦局を打破した訳ではないのである。
なぜならシルカ平原は広大なので、そこかしこでダーティープラトンが仕掛けられているため、オウタ一人が活躍しても焼け石に水であり、前線の冒険者達全体の戦闘ストレス反応による戦意低下は続き、大局は変わらないのであった。




