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≪本論・シルカ平原攻略戦・起4≫

塹壕戦となったのだから、溝を掘り進めて行けば身の安全を確保できるようになったのかと言えば、無論、そんな事はない。


直線の弾道で飛んで来る椎の実弾は塹壕でどうにか避ける事ができるが、山なり弾道で飛来する爆弾は塹壕内に落ちる場合があり、そうなってしまえば内部の人間は吹き飛ばされてしまう。


更にトーチカは通常の爆弾以外に、クラスター爆弾を放ってくる事があった。


クラスター爆弾とは、内部に多数の子爆弾を内包している爆弾である。

爆発すると周囲に子爆弾を撒き散らし、時間差を置いて、その子爆弾が炸裂するのである。

クラスター爆弾は通常の爆弾と比べて加害範囲が広く、また塹壕内に子爆弾が転がり込んでくる可能性も高くなるので、内部の人間はそれを即座に拾い上げて塹壕外へ投げ捨てるといった対応に追われる事となったのである。


以上のように、塹壕戦は常に危険と隣り合わせで、絶えず気を張っておかねばならず、一瞬たりとも神経の休まる暇が無かったのであった。


この過酷な環境は我々前線の冒険者達の精神を摩耗させていった。


そして、そんな擦り減った我々の精神に、敵は最悪の攻撃で追い討ちを仕掛けてきたのである。



魔物の中には他の種類の魔物と連携するものがおり、トーチカもそういった類であった。


トーチカは二種類の魔物と協力体制を築いてきたのである。


その一種類目は、ハイエーサーという植物魔物であった。


見た目は黒い毛玉で、その大きさは成人の握り拳程度である。


しかしそれは縮小化の魔法で小さくなっている状態であり、本来の大きさは直径2メートル弱ある。


ハイエーサーは小さい毛玉の状態で地表スレスレをフワフワと飛び、獲物である人間にその死角から忍び寄っていく。


そして触れた途端、一瞬にして縮小魔法を解除して元のサイズに戻り、人体を丸呑みにして拘束し、人ごと再び縮小化して、何事も無かったかのように飛び去ってしまうのであった。


一連の行為はすべて無音で行われるため、周囲は気づけず、事後、しばらくしてからパーティメンバーが失踪しているのを知る事になるのである。


以上のような襲撃をしてくる事からハイエーサーは、別名・人攫い魔物、とも呼ばれている。


ハイエーサーに攫われてしまった人間であるが、もう助からないのかというと、そういう訳ではない。


ハイエーサーは人を攫った後、飛行を続け、犯行現場から十分な距離を取ると元のサイズに戻り、大木や大岩などに張り付いて体を固定する。

そうして、そこで長い時間をかけて、獲物である人間の養分を吸収していくのである。

この時、拘束されている人間は生かされたままであるので、それを発見し、ハイエーサーから解放してあげれば助かるのであった。


二種類目は、顎足付[あごあしつき]という蟲魔物である。


大きな顎に六本の歩脚が付いた鋭利な外観をしており、体表は強固な外骨格に覆われ、その全高は4メートルにも及ぶ。


斬撃魔法が使用されているその大顎に挟まれてしまえば、防具があっても切断は免れない。


更に、六本の歩脚が鋭い鎌状となっており、そこにも斬撃魔法がかかっているため、突進してくる顎足付の高速稼働する歩脚は、まさに粉砕器と化しており、巻き込まれれば五体バラバラにされてしまうのであった。


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