≪本論・シルカ平原攻略戦・起3≫
シルカ平原のトーチカはイェンの読み通り、成長期間が数百年にも及んで巨大化しており、しかも平原を横断するようにして群生していたのである。
まさにそれはシルカ平原の通行を完全に遮断する、要塞線、であった。
ルート確保のためには、このトーチカによる要塞線を突破しなければならない。
トーチカの弱点であるが、植物魔物全般がそうであるように、火である。
しかしトーチカは、火に対する生体防御機構を備えていたのである。
トーチカは、ベトン、と呼ばれる極めて強固で不燃の外皮で全身を覆ってしまっているのであった。
したがって単に火炎魔法を浴びせかけるだけではベトンのプロテクトで燃えないのである。
まず外皮のベトンを破壊する必要があるのであった。
ならばシルカ平原のトーチカも遠距離からの攻撃魔法でベトンを壊し、続いて火炎魔法で焼き払えばいい、と思われるかもしれない。
だが、それは不可なのである。
ベトンはトーチカが成長すると共に厚みが増していき、数百年物ともなれば、軽く1メートルを超えてしまうのである。
更には自己修復能力もあるため、遠距離からの攻撃魔法では埒が明かず、破壊不能なのであった。
ならば、どう対処すればいいのか?
答えは、肉弾戦、である。
トーチカへ肉迫し、強化した剣や槍などの長物をベトンに突き立てて貫通させ、燃えやすい内部へと到達させる。
そうして長物を通して火炎魔法を撃ち込み、内側から焼き壊すのであった。
数百年物のトーチカを破壊するためには、この攻略方法しかなかったのである。
そのため我々前線の冒険者達は、まずトーチカに接近しなければならなかった。
けれども、制圧射撃と全力射撃のオンパレードが襲い掛かってくる。
平原なので地形的に身を守る遮蔽物が無い。
魔法にて強化した盾で凌ごうとしても、トーチカ群の火力が余りにも猛烈過ぎて、盾が持たないのである。
我々に残された最後の手段は、塹壕、であった。
塹壕とは、敵弾から身を守るために地表を掘って作る溝状の構造物である。
つまり地べたを遮蔽物にする防御施設であった。
この塹壕を数キロ先にあるトーチカ要塞線まで掘り進み、接近していこうというのである。
「剣と魔法の世界なのに、まさか塹壕戦をやる羽目になるとは」
異世界〈地球〉人のオウタはさも不本意そうに肩を竦めていた。




