≪序論・背景・世界情勢6≫
この火の三連急により各帝国は、
「第二次世界征服戦争よりも優先すべき事がある」
という良識的にして常識的な判断を下し、その国力の矛先を大魔王へと向ける事となった。
【大魔王討滅戦争〈ワイルドハント〉】
発動である。
この大魔王討滅戦争を遂行していくに当たり、各種族が協力体制を築く事はなかった。
他種族への攻撃行為を禁止し、破った場合には、その者の身柄を相手国に引き渡す、という内容の
【六カ国不戦条約】
を締結するまでであった。
夥しい数の死者を出した大魔王という共通の脅威が出現しても、六種の人型知的生命体達が手を取り合う事は無かったのである。
そうなってしまった要因は三つ上げられる。
まず、各国の首都が魔界から離れていて無傷であった事。
次に、各国の正規軍は他国との国境に配置されており魔界沿いにはほとんどいなかったからか、その軍事力への被害が異常なまでに軽微であった事。
そして何より、皆レイシストなので劣等種と力を合わせるなど唾棄すべき事だったからである。
ここで極めて重要なのはワイルドハントの目的が、大魔王から帝国を守るという国家安全保障だけではないという事である。
大魔王も魔物である。
魔物とは重要資源である。
大魔王の無限の保有魔力量のメカニズムを解明または利用できれば、後に開始される第二次世界征服戦争において、他国を圧倒する事が間違いなく可能なのであった。
伝説の一節にある、
『大魔王を倒せし者には大いなる力が与えられる』
は、まさに事実なのである。
大魔王は世界の命運を左右するほどの
【超重要資源〈レアアース〉】
であり、各種族は血眼になってそれを求めたのである。
グレイト・インベーダ・ツーはワイルドハントという形で、既に開戦していたのであった。
各帝国が大魔王討滅戦争を遂行していくに当たり、活況を呈する事となった職業がある。
【冒険者】
である。
冒険者とは、職人・医者・娼婦と並ぶ世界最古の職業の一つである。
その職務内容はパーティと呼ばれるチームを組んで人外の領域である危険な魔界を探検する事である。
探検していく中で魔物を狩って持ち帰り、魔法技術の発展に貢献していくのである。
ゆえに冒険者はある意味、魔物狩りの専門職、ともいえるのであった。
正規軍は後の第二次世界征服戦争に備えて温存しておかなければならないので、各国はこの冒険者を、ワイルドハントを実行していく主役とする事したのである。
各国は冒険者事業を活性化させる事にした。
魔物を狩って得る事の出来る報酬を大幅に増額した。
福利厚生も充実させた。
税制の優遇措置も取った。
そして最終目標である大魔王を倒した者には、
男なら【勇者】
女なら【聖女】
という究極の称号を与え
【富・権力・名声・免税】
の四つが思うままである事を確約したのである。
結果、冒険者事業は活気づき空前の盛り上がりをみせる事になるのである。
世はまさに
【大冒険時代】
へと突入したのであった。
これが今から6年前の話である。




