第42話 本物の虚飾
忍び寄る不気味な人間にエリカ達は固唾を飲んだ。
フィッシュネットトップスを素肌の上に着て、その異質さをオリーブ色のロング丈パーカーで羽織り隠している。
エリカは覚悟を決めた。そしてエリカは1歩前へ出る。
緊迫した状況に音楽をかけるがごとくエリカがリズ達に言った。
「ここは私に任せて、先に行ってください。」
それは決心した姿だった。
リズとルナはエリカの背中を見た。小さな背中だが背負うものは大層に多く、立派であった。
「ほら、レツお兄ちゃんのために、お姉ちゃん達がこの先の道を作ってあげてください。私はここの掃除をします。」
リズとルナは信じた。必ず戻ってくることを。
「頼んだよ〜!エリカちゃん!」
「きっと!合流しよう!」
返事は必要なかった。それ以上にエリカの背中には重みがあったのだ。
リズ達が去った後、エリカは牽制した。
「あなたは、誰なんですか!」
謎の男は、エリカの周りをぐるぐるしエリカの顔をじっと見た。その行動にエリカは目で追うことしかしなかった。
「名乗るものではないんだけどね」
そう言った瞬間エリカは、容赦なく魔力をぶつけた。
放った閃光は謎の男へと向かう。
しかし男は自分の体に手を置き
「感度」
閃光は男を過ぎ去り、もはや塵も残さない。
はずだった。
なぜか男は無事。跡ひとつない。
ブゥゥゥゥンッ
気づけば男はエリカのすぐ横に来ていた。
エリカはすぐ反応が出来なかった。男にエリカは触れられてしまった。
「感度」
エリカの脳裏に浮かんだのは、大男。
あのようにされると冷や汗をかく。
「終わりだ。」
男はそう宣言した。
こんなんで終わりたくない!
その原動力がエリカの身体を動かした。
エリカの身体が一瞬で消え男の後ろに現れる、そして丸い魔力瞬間的に生成しそれをそのままぶつけた。
そして煙が舞い上がるが、構わずエリカは男の前へ現れ顔を身体を埋め込ませながら殴る。後ろに傾いた所をそれよりも後ろからエリカは蹴り上げた。
エリカは右手と左手に魔力を溜めた。
それを真上に同時に放つ。
「はぁぁ!!」
天井がボロボロと降ってくる。
エリカは感じ取った。男が大した傷を負っていないことに。
すぐさま指先に小さな魔力を数個作る。辺りに散らばせた。
「やば、予想以上に強すぎじゃないか?」
男が疲労感を見せつけながらゆっくりと降りると、エリカは片手に魔力を溜め、それをまた真っ直ぐはなった。
その魔力を男は避けるが、先程ばらまいといた魔力の塊に反射し方向を変えて、男を刺した。
「ぐっっ!?」
魔力は止まることを知らず、次々と反射し男を指した。
男は、体に穴が空く。
決着がついた。
「感度」
男は穴が空いたところの周辺を撫でると、まるで砂岩を撫でると砂がサラサラと落ちていくように、穴は埋まっていった。服も同様にだ。
「化け物ですか!あなたは!?」
無傷となった彼にエリカは戦慄した。
男は顔に着いた血を拭うと、視線を逸らした。
「まさか、こんな攻撃されるとは思わなかったぜ」
やれやれとした感じの態度を取る。
「アイはトーマス・アバウト。見ての通りナイスガイだ。」
先程戦ったとは思えないほど元気で、親和的だった。
トーマスはエリカに突然変な事を言った。
「ユーには、好きな人いるでしょ?」
「!?」
エリカの心臓が「ドキッ」と鼓動を刻んだ。
エリカの態度がよそよそしくなり、顔が赤くなって目が泳いでいる。
「い…いません!」
トーマスがうんうんとわかったかのような顔をしている。
「アイの潜在輝石感度はね、自分以外の人に恋をしている場合は効かないんだ。」
自分の輝石の開示をした。エリカはどんどんと赤らめていく、目がぐるぐるとなる。
「それにね、ユーにそれを聞いた時とても心拍数が上がってる。激しい動きをしたせいじゃない。」
エリカは下を向いて質問した。
「なんでそんなことわかるんですか……?」
トーマスは胸に手を当て高らかに答えた。
「アイはね、セクシーな男優をしているんだ。」
エリカは頭を傾げた。
「要するに、恋愛のプロフェッショナルだ。」
数秒待ったあと、手を下げ遠くを見つめた。
「と言っても、アイは男の人としかしてないけどね。」
「それに相手はミーを本当に愛してはくれない……。ゼイらは演技なんだよ。」
悲しそうな顔で自分語りをした。
エリカの顔をふと見る。顔を赤らめながらボーッとしていた。そして自分の顔を横に震わした。
「ごめんごめん、その人はどういう人なのかな?」
エリカはキュッと身を縮めて答えた。
「あの人は……自分じゃなくて他の人を優先してくれて、自分のことはどうしても他人に結びつけたがったりします。」
「だから、私は甘えられないあの人を甘えさせ…たい」
そう言い切った時、エリカは思い出した。
烈が平等の思想を持ってその夢を実現するためにここに来て、エリカは烈を支えようとしたけれど、またしても自分を犠牲にさせてしまったこと。
***
「俺たちがすることはゴールへ行くことだ!」
***
だけど、少し違った。ちょっとだけだけど、エリカ達を頼ってくれた。
(私はここで立ち止まっている場合じゃないのです!)
エリカは片手ずつを重ねた。そして魔力を溜める。
魔力の生成による風圧により髪が少しふわっと上がった。エリカの瞬きの数が増える。
エリカの目には光が消えていた。
完全に敵を排除する。
「全魔……」
「気に入った!お前の仲間にさせてくれ!」
突拍子もない発言にエリカの魔力は爆発した。
「アツっ!」
純粋なトーマスの笑顔にエリカは困惑した。




