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第41話 未完成

セレナと離れたあと、ミリア達は先へと進んでいた。


「なんか倒れてる人いっぱいだー!戦ってる人もいるし」


周りの喧騒が耳をつんざく。

ルナはここの人たちも倒しておいた方が良いのだろうかと考える。


「無駄な戦いは避けるべきだと思うんだよ〜。体力が底を尽きたら本末転倒かな〜?」


リズの言葉にハッとした。ルナ達はそのまま走り続ける。しかし目の前に現れた大男により動きが止まる。


「よう、お嬢さん方。ここは君たちのようなか弱い乙女たちが来るところじゃないぜ?」


ほとんど裸のような服装に男気を感じた。

その大男は強く見せようとわざと近づく。


ミリアは目を見開き驚いた。


「でっかぁー!」


ルナは勇ましく反抗の睨みを効かせた。

リズは余裕そうに笑っている。


その態度に大男がイラッときたのか拳を大きく上げた。


そこでじっと見ていたエリカが前に現れた。

その目はキリッとしていた。


「お?なんだただのガキじゃねぇか。迷い込んだのか?」


エリカは反発した。


「そこをどいてください!」


と言うと、大男は笑う。


「はーはっはぁ!どかせるもんなら力づくでどかしてみろよ!!」


エリカは前に傾き両腕を下に伸ばした。

そしてその後右腕を大男に向けた。


「私、今ちょっとだけ機嫌が悪いんです!加減できなかったらごめんなさい!」


魔力の塊が手に練り込まれていく。それは丸くなっていき、それを撫でるように押すと水風船に穴が空き水が放たれるかのようにそこから魔力が勢いよく直線に流れた。


天井の1部が破壊され下の人間に降り注ぎ下敷きになる。


肝心の大男は指が焼き焦げるほどの軽傷で済んだ。

さすがにこの勢いには冷や汗をひとつかく。


エリカが間髪入れずに次の波動を繰り出した。

もろに食らってしまい、腕を全身火傷してしまった。血が垂れに垂れている。


勢いよく後ろに下がったあと、なぜか手のひらを力強く合わせた。


「生半端じゃてめぇに勝てねぇ。全ての魔力を使わせてもらう。」


そう言ったあとリズが慌て始めた。

リズがルナに「少し離れるかな」と言った。


リズは危険ななにかが起こりようとしていたことを察した。リズはエリカに助言をしようと手を口に寄せ叫ぶ。


「エリカちゃん!あの魔力の放出には気をつけるんだよ〜!ただ横溢しているわけじゃないかなー!」


エリカは高らかに呼応する。


「はい!」


(分かってます!あの男から出てくる魔力は何かがおかしいです……)


大男からでる魔力は地面を支配しエリカのそれを侵食しようとした瞬間、エリカは宙に浮く。


しかし魔力は依然這い蹲る。


大男が右ストレートを放つ。しかしそれは空回りする。だがエリカは警戒した。


微かな音が少し聞こえる。それは二重に聞こえた。

皆は微妙に動きつつ、様子を見ている。


そんな警戒をくぐり抜けるかのようにエリカは謎の方向から攻撃を受けた。


そして地面へ落ちていく。


「エリカ!」


ルナが叫ぶが止まりはしない。そしてやっと

エリカは地面に伏せた。


大男は息を吸い叫んだ。


無意味の距離(ゼロポイント)


「ちっ未完成……!構造がぐっちゃぐちゃだな!」


大男は自分で笑っている。


「全魔消費。あの男がやった、技なんだよ。」


説明口調でリズは話し始めた。


「私も詳しくは知らないかな。全ての魔力を代償にする代わりに莫大な威力の能力を使用できるってことだけだよ。」


「あの能力……、攻撃必中と言ったところかな。」


ルナは納得する。しかしあの大男には不可解な点がある。


「全部の魔力を使えば体力も当然底を尽きたかのように無くなる。なのに何故あの男は?」


リズが考察した。

あの構造。そして魔力の勢い。術式の形。


「あいつのはやっぱり不完全な消費だよ。全魔消費はそれほど難しい技なんだよ。」


エリカが地面から立つと直ぐに魔力を溜める、しかしそれは上手く練れずにバラけてしまう。


大男が空気を再び殴る。

エリカの後頭部が殴られる。


「ぐっ!」


エリカは魔力の攻撃ができない。物理も当然。このままでは勝てない。


ルナが出た。ルナが剣を振りかぶり、輝石を使い炎で斜めに断ち切る。


しかしそれは大男に止められてしまった。

というよりも、動けないのだ。


「縛られてる!?この闇……私のところまで来ているッ!!」


大男の出した瘴気はルナとリズの所へ続いていた。


打つ術が無くなったと、完全に挫折した。

大男は右に捻じるようにしゃがみそのまま左に右の拳を振ろうとした瞬間。


大男の腕が止まる。


いや、大男の身体が止まった。

大男は前を向く。


するとリズは手をかざし、ニタリと笑っていた。


リズの足元にあるのは大男の魔力ではなかった。

そしてこの状況。


つまりリズはなぜか魔力を使えていた。


「君の身体にかかったのは、影縫い(おどし)、だよ〜。」


リズはそう言った瞬間リズは一瞬で大男の背後へと忍び寄った。大男の首筋に冷たい金属の感触。今大男はリズに命を優しく包まれてる感覚だ。


その気持ち悪さに大男は少しだけ嗚咽してしまった。


「チェックメイトかな〜?」


リズは短剣を横に振った。


「これはあまり使いたくなかったぜ!」


大男は構えた。

リズはその刃を鈍ることなく切り裂く。しかしその攻撃はリズに向かった。


「ぐあ"ぁ……!!」


リズの首は裂けてしまった。しかしリズが咄嗟に首に触れ自身に「影縫い(おどし)」を付与し、致命傷を免れた。


有意義の距離(アンゼロポイント)


大男は震える声でそう言った。

体力の消耗が著しかったようだ。


「自身の攻撃を跳ね返す能力に変化したってことかな?同時発動ができない所が難点だね〜。」


リズは余裕そうに言うが、疲れが身体に出ている。

そしてこの男に対する攻撃が無力化されてしまった。


同時にルナとエリカの身も解放された。

3人は大男を囲む。


大男はエリカに攻撃をしかけた。


しかしルナが腕で止める。


「ふっ、攻撃しなければ能力が発動しないわけだな!」


ルナが攻撃を弾く。

エリカはルナが止めている間にリズの首を治療している。


大男に攻撃は届かない。魔力切れを待つしかない。

全魔消費のおかげであと少ししか魔力はないはず。とルナは確信した。


次の瞬間大男は地面を破壊し、大きな平の岩を持ちルナに投げた。それにルナは剣を振るう。岩をなんとか切れたが、岩の間隙から出てきたのは


大男だった。


大男はそのままルナの剣に貫かれる。それはルナが貫かれたことを意味する。


「ぐはぁぁ!!」


「ルナ姉ちゃん!!」


ルナは腹を抑え膝を着いた。大男は止めを刺そうとする。


「どうすれば……」


大男には攻撃が通じない。かと言ってあのまま攻撃を喰らえばルナは死ぬ。リズは首が負傷して、上手く体が動かない。


(私が何とかしないと……!)


エリカは動こうとした。大男がルナを攻撃する前に止める!


しかし、


感度(バイブ)


謎の男が突然現れ大男に触れた。

次第に攻撃が効かないはずの大男が震えだし、吹っ飛んだ。


「え!?」


不可思議な状況にエリカはつい口を開けたままにしてしまった。


「面白い能力と、いい筋肉。強いな、君。」


謎の男は倒れた大男の身体の上へ乗った。そして頭をそっと撫でると、大男は眠るように泡を吹いて気絶した。


「味方なのかなーそれとも敵なのかな?」


謎の男は段々と近づく。

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