封印されし黒鋼の山ネクロファンタジア・マウンテン②/『イズールド』
新年、あけましておめでとうございます!!
今年もS級冒険者が歩む道をよろしくお願いします!!
ハイセ、プレセア、ヒデヨシ、エアリア、シドラ。
五人は周囲を警戒しつつ、山道を歩いていた。
ハイセは最大級の警戒をし、傍にいるヒデヨシを守るよう銃を手にしている。するとプレセアが言う。
「今は、魔獣の気配はないわ。安心していいわよ」
「……お前を疑ってるわけじゃない。でも、ここは未知の領域だ。警戒は必要だろ」
「そうだけど、私の精霊を疑いすぎるのもね。あなた、疲れるわよ」
そう言い、ふよふよと二メートルほど上空を飛ぶエアリアにプレセアは言う。
「エアリア、そっちはどう?」
「どうもなにも、こんな低空じゃ何もわからんぞー!! もうちょい高く飛びたい!!」
「ダメ。シズカがどうなったか忘れたの?」
「むうう」
ちなみに、警戒しているのはハイセだけではない。
「むううう……」
シドラだった。
久しぶりに外に出て、とにかく周りをキョロキョロしている。
その様子を見て、ハイセが言う。
「おい、お前はアイテムボックスにいてもいいって何度も言ってるだろ」
「い、いえ!! わたし、ヒデヨシ様の護衛ですし。それに……わたしも」
シドラは、オーバースキル『岩神』のスキル保持者。
ロウェルギア、シズカと同じなのだが、力に目覚めたのは最近であり、戦闘経験どころかスキルの仕様すらまともに知らない。
アイテムボックスに入る前、プレセアに『ヒデヨシの護衛』と言われ、それを果たすべく頑張っている。それを見てヒデヨシはクスっと微笑む。
「シドラちゃん、ずっと私に付いてくれたんです。寝る時も、お風呂も一緒で」
「ううう、やっぱりご迷惑でしたか?」
「そんなことないよ。ふふ、妹ができたみたいで、うれしい」
「……妹。えへへ」
シドラは嬉しそうに微笑んだ。
その様子を見て、ハイセはプレセアに言う。
「……これも、お前の狙いか?」
「どういうことかしら?」
どこかとぼけたように言うプレセア。
プレセアは、大人ばかりで居心地の悪そうなシドラを気にしていた。そして、同じように居心地の悪そうなヒデヨシを見て、二人を一緒にすればいい友人になれると踏んだのだ。結果は見ての通り。
「あのさ、シドラちゃん。帰る場所がないなら、私のところにくる?」
「あ……いいんですか?」
「うん。オーバースキル、もっと使えるようになりたいんだよね。シズカもオーバースキル保持者だし、イエヤス様やゲンパクはスキル研究者だから、きっとすぐに使えるようになるよ」
「あ……はい!! 一緒にいたいです」
本当の姉妹のようだった。
ハイセは横目で見つつ、少し安心したように頬を緩ませた。
すると、プレセアが顔を覗き込む。
「シドラ、引き取ることも考えてた? イーサンやシムーンのいい友達になれるとか考えてたでしょ」
「…………うるせ」
「まあ、あなたも言ったじゃない? ロウェルギアの『魔導船』が実用化すれば、人間界と魔界の行き来が可能になるかもって。そうなれば、いつでも会えるわ」
「……だから、うるせえっての。お前も警戒しろ」
山道は、人間界にもあるような普通の山道と同じだった。
魔獣の気配もない。ここが『ネクロファンタジア・マウンテン』と言われると、そうも思えないような……そんな、あまりにも普通の道だ。
安全だからこそ、パーティー分断し、山道の途中からの分岐道を進んでここにいる。
このパーティーも、一日かけてハイセたちが考えた結果のパーティーだ。戦力を分散し、どんな状況にも対応できるメンバーである。
シドラ、ヒデヨシはアイテムボックス内で待機……という話だったが、二人が『力になりたい』と言って、パーティーに入ったのだ。
「む? おーいハイセ、なんか見えてきたぞー」
鳥並の視力を持つエアリアが、何かに気付いた。
ハイセは警戒。プレセアも弓を手にし、シドラとヒデヨシは会話をやめてハイセたちの傍へ。
そして、エアリアが先行し、ハイセたちがあとに続き……到着した。
「……どうやら、ここからが本番のようだな」
そこは、広場になっていた。
そして、木々に絡みついた蔦が、大きなゲートを隠すように垂れていた。
まるで、森の中にある遺跡。
ハイセが近づき、ゲートに触れる。
「石造りの、ゲート……か」
『イゾルデ』に触れた時のような警告音、特殊な演出はなかった。
プレセアが近づき、蔦に触れる。
「……この蔦も、本物ね。純粋な植物……精霊も住み着いている」
「あ、あの」
と、ヒデヨシが挙手。全員の視線がヒデヨシへ。
ヒデヨシはゆっくりと、右手を壁に向けた。そこには文字が書かれていた。
「……『イズールド』か。イゾルデの壁に書かれていた文字と同じ。どうやら、この先に『アーサー』を開ける鍵の一つがあるようだ」
シドラも気付く。
「あの、ハイセさん……これって」
扉の近くにプレートがあり、スイッチのようなものがあった。
エアリアが近づき、スイッチをペシッと叩く。
すると、遺跡の扉が開き、先に続く道が現れた。
「おー、開いたぞ!!」
「おい馬鹿、調べもせずに触るなバカ。罠だったらどうするんだ馬鹿」
「バカバカ言うな!! スイッチがあれば押すだろうがー!!」
ぷんぷんするエアリア。ハイセはエアリアの頭をペシッと叩き、入口の前に立つ。
「……プレセア、わかる範囲でこの先を精霊に調べさせろ」
「もうやってるわ。というか……何、これ」
「なんだ」
プレセアは険しい顔をしていた。
右手が淡く発光している。ハイセにはそれが精霊の発する光だと気付く。
「先が見えない。ただの遺跡……というか、山の中なのか、わからないわ。生物の気配なのか、魔獣なのか……人なのか。私にはわからない」
手の光が消えた。
エアリアが、小石を拾って入口へ投げる。
「フン。この先が何であれ、先に進むしかないんだろー? だったらあたいは進むだけだ。それがS級冒険者だからな!!」
単純だが、その通りだった。
ハイセはシドラとヒデヨシに言う。
「二人とも、アイテムボックスに戻れ」
「だ、大丈夫です。わたしだって」
「わ、私も」
「そういう次元じゃない。ここから先、全く未知の領域だ。お前たちを守れるかわからない以上、安全な場所に避難してもらうしかない」
「「…………」」
二人は、足手まといなのだ。
心意気が立派だろうと、強い決意をしても……現実では意味がない。
二人は互いを見て頷き、ハイセに言う。
「何かあったら、呼んでくださいね!!」
「わ、私も……役に立てれば」
「ああ、わかった」
二人はアイテムボックスへ。
ハイセは、プレセアとエアリアに言う。
「行くぞ。最大級の警戒で、決して単独行動はするなよ」
ハイセたちは、『イズールド』の中に踏み込んだ。
◇◇◇◇◇◇
一方、サーシャたち
◇◇◇◇◇◇
「うー、師匠たち大丈夫かなー」
クレアは、サーシャの隣でブツブツ言っていた。
サーシャ タイクーン レイノルド クレア ピアソラ。この五人がパーティーである。
ロビンの代わりにクレアが入っただけで、実質『セイクリッド』のようなパーティーだ。
サーシャは言う。
「クレア、気を引き締めろ」
「わかってますよ。よーし、気合い入りました!! サーシャさん、前衛頑張りましょうね!!」
「ああ、そうだな」
サーシャたちも、山道を進んでいた。
タイクーン、レイノルドが警戒し、その間にピアソラがいる。
サーシャが戦闘で、常に薄く闘気を纏っていることで、ありとあらゆる状況に対応できる。
その様子を見て、クレアも真似をしたが……すぐに疲れたので闘気を解除。
薄く闘気を纏う。これだけのことを、クレアはうまくできない。
「……むー」
闘気の扱い方で、クレアはサーシャに勝てる気がしない。
纏うことより放出が得意なクレア。逆に、サーシャは放出が苦手だった。だが……今は放出も、サーシャが上かもしれないとクレアは思う。
得意分野でさえ、サーシャに負けている……そう思うと、クレアは悔しくなった。
「サーシャさん、聞いていいですか?」
「む、なんだ?」
「その、稽古の時間ってどれくらいですか?」
「稽古? そうだな……早朝稽古、日中は仕事、夜は稽古……半日以上だな。いや、最近は日中も闘気を薄く纏っているから、『ソードマスター』の力は常に発動している」
「え」
つまり、ほぼ一日。
その密度に、クレアは唖然とした。
「お前は、ハイセに稽古を付けてもらっているんだろう。フフ……負けていられないな」
「むぐぐぐぐ……!!」
勝てる気がしないと感じてしまうクレア。
だが、ここで諦めるのは、師であるハイセに申し訳ないと思った。
「ま、負けませんので!! フン!!」
クレアは薄く闘気を纏い、サーシャに張り合うように前を歩くのだった。





