封印されし黒鋼の山ネクロファンタジア・マウンテン①/イゾルデの先
ネクロファンタジア・マウンテンに踏み込んだハイセたち一行は、いきなり足止めを喰らった。
まず、山の麓から先に進むと……そこにあったのは、山を囲むように張り巡らされた巨大な『金属の壁』だった。
あまりにも巨大な壁だ。壁の向こう側が『ネクロファンタジア・マウンテン』に違いないが、先に進むことができない。
シズカが言う。
「私が、壁の向こう側に行ってみるわ」
「待て」
ハイセが止める。だが、すでにシズカは上空へ。
すると……数分とせず、シズカはフラフラしながら降りてきた。
その様子を見て、サーシャがギョッとする。
「な、お、おい!! 大丈夫か!?」
「ウ、っげえぇぇぇぇッ!!」
凄まじい状態だった。
両腕が炭化し、全身に酷い火傷を負い、顔色が真っ青で激しく嘔吐した。
すぐにピアソラを呼び治療……何があったのか説明する。
「い、いきなり、壁から攻撃を受けた……何をされたのか、理解できなかった。気付いたら、両腕が炭化して……頭痛に、めまいに、気持ち悪くて……」
「……壁そのものが防衛の役割をしてるな。不快感は……恐らく、狂乱時空大森林と同じ、上空での不快感と似た感じか」
防衛機構、電磁波と、上空からの侵入を拒む仕掛けが施されているようだった。
ハイセは嫌な予感がしていたが、まさにその通り。
サーシャは周囲を見渡す。
「……ハイセ。ここは安全圏のようだ。一度、全員を呼ぶ方がいいかもしれん」
「ああ、そうしよう」
壁の周囲は、切り開かれている。
魔獣の気配もなく、全員が出ても問題なさそうだった。
ハイセ、サーシャはリングを手にし、全員を召喚するのだった。
◇◇◇◇◇◇
ネクロファンタジア・マウンテンの入口に、全員が集合した。
この場を仕切るのはサーシャ。誰も異存がないようだったので話を進める。
「さて、我々は現在、深度5の先……ネクロファンタジア・マウンテンの入口にいる。この巨大壁の向こうが、最後の禁忌六迷宮だ」
「ふん、こんな壁、あたいが飛んで……」
エアリアが飛ぼうとした瞬間、ハイセが頭を押さえつける。
「バカ。シズカの二の舞になる。話は最後まで聞け」
「ぐぬぬ、頭押さえんな!! 縮むだろー!!」
手を離すと、エアリアはぷんぷんする。
サーシャは軽く咳払い。
「この先がネクロファンタジア・マウンテン。そしてその入口……あそこだろう」
壁と壁の間に、切れ込みがあった。
その先が、山の入口となっている。
切れ込みの間から先に進めないよう、透明な壁がで仕切られていた。
タイクーンが言う。
「恐らく、あれが『封印ゲート・イゾルデ』というモノだろう。あれを開けることができるのは……」
全員の視線が、ヒデヨシに集中した。
ヒデヨシはビクッとして、ハイセの背中に隠れてしまう。
ハイセは、シドラに優しく言う。
「心配するな。俺たちがいる」
「は、はい……」
妹に接する兄のような、そんな雰囲気だった。
クレアがムスッと頬を膨らませ、ハイセの腕を掴んでヒデヨシをジッと見る。
「じゃあ、ヒデヨシさん!! 扉開けてください!!」
「え、えっと」
「バカ。いきなり開けるやつがいつか。まずは、俺とタイクーン、ロウェルギアで調べる。扉を開けるのはその次だ」
「むぅ~」
ハイセは、タイクーンとロウェルギアに目配せし頷く。
そして、サーシャに言う。
「サーシャ、この先に進むメンバーを決めよう。あと……この辺りは安全みたいだ。扉の調査もあるし、出発は明日にしよう」
「やった、宴会ね!!」
ヒジリがウキウキするが、レイノルドが頭をビシッと叩く。
「バカ。んなことできるわけねぇだろ。ハイセたちの調査を護衛しつつ、アイテムボックス内で待機だ」
「えー」
「ってわけでサーシャ、守りはオレの専門だ。ハイセたちの護衛は任せて、ネクロファンタジア・マウンテンの攻略メンバーを決めてくれ」
「ああ、わかった」
こうして、ネクロファンタジア・マウンテンの攻略メンバーを決めることになった。
◇◇◇◇◇◇
ハイセ、タイクーン、ロウェルギアが『イゾルデ』に近づき、外観を眺める。
壁と壁の間にはめ込まれた透明な壁。それが正しい認識だった。
不用意に振れる真似はしない。攻撃もしない。何があるかわからないので観察のみ……だが、やはり見るだけではわからない。
ハイセは言う。
「どれ……」
小石を拾い、投げてみる。
透明な壁に『カンッ』とぶつかり、石が転がった。
壁にも石を当てるが、同じように金属音がして跳ね返る。
「……触れても問題ない、のかもしれん」
説明書などない。完全に手探りでの調査なのだ。
すると、ロウェルギアがハイセに一礼する。
「では……ワタクシにお任せを」
「おい、お前」
「ハイセ様、アナタの役に立つのならば!!」
ロウェルギアは、両手を透明な壁に押し付ける。
ハイセ、タイクーンが止めようとしたが……遅かった。
透明な壁に触れた瞬間、一瞬で透明な壁が真っ赤に染まり、点滅した。
『エラー、エラー、エラー』
壁から声がした。
ロウェルギアが手を離すと、壁が一瞬で透明に戻る。
しばし、三人は目を見開いてそれぞれの顔を見て、透明な壁を見た。
「……どうやら、資格なき者が触れると、今のような反応をするらしいな」
タイクーンが言うと、ハイセが舌打ち。そして気付いた。
「……おいタイクーン、ロウェルギア。見ろ」
「……おおおお」
「これは……」
透明な壁に、何かが表示されていた。
「これは、地図か……?」
透明な壁に、地図が表示されていた。
そこには古代文字で『イゾルデ』と書かれ、さらに地図の先に『イズールド』、さらに『ロディーヌ』と『オルウェン』と表示されていた。
そして、ハイセは気付く。
「……おい、まさかこの地図」
「……ハイセ。その『まさか』は……ボクも同じ意見を考えている」
ハイセ、タイクーンは地図を見て何かに気付いた。
ロウェルギアが首を傾げる。
「ハイセ様、タイクーン様。ワタクシ、頭がよろしくないので……ご説明を」
「見ろ」
画面には、『イズールド』、『ロディーヌ』、『オルウェン』と三か所、光点があり点滅していた。
それぞれの位置は、『イゾルデ』から三方向に分かれている。
そして、それぞれの位置には『鍵』のマークがあり、三つの鍵に矢印が伸び、山頂部分に『アーサー』と書かれたゲートがあった。
「つまり、ネクロファンタジア・マウンテンで三か所から鍵を集め、山頂の『アーサー』を開けることで、踏破となる……」
「……パーティーを三つに分ける、ってことか」
ハイセが言うと、タイクーンが提案する。
「ひとつのパーティーで、三か所を回る……というのは?」
「それもありだ。だが……」
「……今のボクらなら、パーティーを分断しても対応できる、ということか」
ハイセとタイクーンは黙りこみ、互いに頷く。
「よし、決を取るか。分断か、一つで行くか」
「ああ、そうしよう」
すると、サーシャがハイセたちの元へ。
「ハイセ、パーティーの件だが」
「サーシャ、事情が変わった。パーティーを分断して進むか、一つのパーティーで進むか」
「な、なに? どういうことだ?」
「説明する」
ハイセは、サーシャに説明を始めた。
話し合いの結果、パーティーを分断し、三つの鍵を集めるために進むことになった。
◇◇◇◇◇◇
翌日、ネクロファンタジア・マウンテンの入口にて。
「で、では……」
ヒデヨシが、おっかなびっくり透明な壁に触れた。
次の瞬間。
『認証』
パリンと、透明な壁が砕け散り、先に進めるようになった。
そして、パーティーを分断し、三方向から鍵を集めることに。
ハイセ、サーシャ、エクリプスをリーダーとした、鍵を集めるチームたちの、冒険者となって最大の戦いが始まろうとしていた。





