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第40話 三重依頼



 

「王位継承戦ってことっすか……」


(漫画とかではありがちな設定だが……殺し合うのか?)


 そう考えた瞬間、背筋が凍った。

 と、思ったら、背中に何か感覚があるだけだった。


 正体を確かめるべく、振り向くと、クハパリが背中を人差し指でなぞっていた。


「何してんの……?」


「別にぃ」


 そう言いながら、クハパリは肩をウチの肩にくっつかせてお尻を地面につかせた。


 どうしたんだろうか。

 さっきから、様子がおかしい。


「で、王位継承って何やるんですか?」


 今は一刻もここを脱出したい。

 見た感じ、ここは地上ではない。

 地下なのだ。


 窓がなかったってのと、空気が不味かったってだけで判断した。

 でも、そうじゃなきゃ、この施設が国に見つからないはずがない。


 地下であるのなら、あれだけ戦闘したのだ。

 崩壊のリスクも視野に入れたい。


「ザックリ分ければ“演説”と“戦闘”です」


(やっぱり戦闘か。殺伐としてんねぇ……)


 また背筋が凍った。

 だが、今回はクハパリが背中をなぞったせいではない。


「王位継承戦はポイント制なんです。演説で、ウェイシアをどのように導くかを演説します。そして戦闘で、国王に相応しい力を示します」


 戦闘を取り入れた選挙のようなものなのかもしれない。

 演説ということは、国民にも聞いてもらうのだろう。


 それにしても、演説か。

 学校ではクラス内発表ですら緊張したのに、国中全土に知られるのか。


 これが王の責務か。

 ウチには無縁だな。


「戦闘って、僕らが参加してもいいんですか?」


 エザスタが話に割って入った。

 ちょうど、ウチも聞きたいところだった。


「はい! 歓迎です!」


 王の力を示すのなら、部外者のウチらは邪魔なんじゃないのか?

 勿論、それが許されているから“護衛についてくれ”と依頼されたのだが。


「強い部下を仲間につけるのにも、力は要ります。貴方方を仲間にするのにも力は要る、と見做されるのです」


(誰が部下じゃッ!!)


 ウチは心の中で()()に唾を吐いた。

 

 

――――――――――――――――――――――――


 

 ――そんなこんなで、無事作戦は終了。


「そう言えば、クハパリ!」


 ウチはクハパリを呼んだ。

 言っていないことがあった。


 前を歩いていたクハパリはこっちを振り返る。

 振り返える際に崩れた髪の毛を掻き上げていた。

 

 ウチは手でメガホンを作って大きな声で言った。


「お帰り!!」


 ウチの声は一本道の廊下に反響した。

 やっぱり地下だからか、想像以上に反響した。


 すると、クハパリは頬を赤らめた。

 安心したからだろうか。


「た、ただいま……」


 その顔を見た瞬間、ウチの疲れが吹っ飛んでしまった。

 

 それで、今は来た道を戻っているのだが――


「――なんか静かじゃない?」


 不気味な空気が漂っていた。

 ネルもそれを察知したようだ。


「確かに。戦いは終わったんじゃないか?」


 ストレイダーズとは違って、素人組は能天気だった。 


 確かに、ウチらが考えすぎな気もするが、本当にそれだけだろうか。

 何だが嫌な予感がする。


 ――さっき戦った鉄格子の部屋に来た。


(何だッ!? 何だこの“違和感”はッ!?)


 ニアスが周りを見渡した。

 視界の何処かに変化が現れたんだ。


 でも、この部屋は鉄格子以外、殺風景で何も無い。

 

 元々こういう部屋じゃないのか……?

 部屋に何かがあったわけではないのか……?


「――はッ! アイツ……副司教がいないッ!!」


(副司教……? やっぱり他にもいたのか?)


 ウチらはクハパリを四方八方、取り囲んで衛る。

 辺りを警戒しつつ、手を前に出した。


「――遅いんだよなぁ、視認がよぉ」


 背後から聞こえたその声は、ノラリーと呼ばれる副司教の声だった。


(――後ろッ!?)


 振り返ると――クハパリの首に閃光刀を掠めていた。


 ニアスはその光景に激昂し、腕を振り上げる。


「おおっと……そんな事していいのか?」


 ニアスはそこで、自分たちが置かれている状況を理解したようだった。

 

 “動いたら、クハパリ(こいつ)を殺す”それが、ウチらに課された、クハパリが生き残るための条件だった。


 ノラリーは怪しく笑った。

 それでも、額からは汗が出ていた。


 クハパリは、腕を動かそうとするも押さえられている。

 後ろに腕を回され、動けない状況なのだ。


 だが、エザスタの様子もおかしかった。

 ネルの様子もおかしい。


 表情が曇るというか、疑問を感じているようだった。


 ノラリーを見れば、呼吸が荒々しい。

 戦闘直後だからか?


 鼻から赤くなっている。

 散々痛めつけた後なのだろう。


 辺りを見れば、注射器が見えた。

 

 まさか――


(ドーピングによる弊害!?)


 ウチは一瞬にして本質に辿り着いた。


「性格も戻って……いや、もっとダウナーに……」


 エザスタがそう呟いた。


 元の性格より大人しくなったのか?

 それが弊害?

 そもそも何の効能なんだ?


 いや、考えすぎだ。

 それよりも――


 クハパリとコクバを連れ戻す。

 これが地口教の狙いのはず。


 寧ろ、クハパリはもう用済み。

 それは知っているはずだ。

 コクバを連れていけば目的は達成されていたはずだ。

 

 なら――


「何が……目的だ……」


 見たところ、顔が随分と引き攣っている。

 精神も不安定なようだ。

 ここで一気に刺激するとヤバい。


 閃光刀も速そうだ。

 ここで、クハパリを助けに強行的に剥がそうとすると、躊躇なく首をいかれる。

 

 “人質に取られている”

 ――これを重視して会話に臨まなければならない。

 そうじゃなきゃ――クハパリが殺される。


 ウチの問いに、ノラリーは静寂を貫いた。

 だが、次の瞬間、彼の口が動く。

 

「AAAを潰すの……手伝ってくれ……」


(依頼三個目……!?)


「俺の兄弟……双子のクラリー以外に、メルファオって妹がいるんだ。そいつが、AAAに連れ去られた」


「クハパリを解放してやるから、そいつを潰せと?」


「そいつ……というか、そいつ()だが……まぁ、そういうこった」


「いいだろう」


 即答だった。


 だが、これは仕方がない。

 事勿れ主義のウチだが、仲間が関与するとなると話は変わる。


 しかも、このノラリーってやつ。

 巨悪でないのなら、

 敵意がないのなら、

 その想いを、ウチが蔑ろにすることは、到底できなかった。


 その後、ウチはAAAの説明を受けた。

 そして、依頼の詳細も聞いた。


 快くってわけではないが、ウチはその依頼を呑んだ。


「ありがとう……」


 そう言いながら、ノラリーは頭を深々と下げた。

 相当切羽詰まっていたらしい。


(そりゃそうか。身内が行方不明だもんな)


 その、メルファオって妹とどれだけ仲がいいのか分からないが、ウチにはそんな思いができることは、()()()()

 家族との思い出は、大切にしてほしいのだ。


 それでも、こっちだってその妹の行方を知らないのも事実。

 国ですら、AAAの正体を知らないって話だし。

 

 そんな連中を、ウチらが探す。

 出来るだろうか……


「まぁ……善処はするよ……」


 ――ウチらはこの時、AAAを軽く見ていたかもしれない。

 ()()()との出会いがなければ、AAAどころか、()()()()()、世界が180℃変わって見えることはなったかもしれない。

 

――――――――――――――――――――――――


 戦いは終わった。

 そして、目的もできた。

 結構いっぱいだけど……


 まずは身近なものからだ!

 一番手っ取り早くて、終わればそうな目標は――


「王位継承戦……」


 全ッ然身近じゃねぇ!!!

 これは片付けられる課題なのか……?


(ま、まぁ……別に勝つことが条件じゃないから。それより、ウチらはまず、メッちゃんに鍛えてもらわないと!)


 そんな言い訳を抜かすのだった。


 そう。

 稽古がまだだったのだ。


 すっかり忘れていた。

 元々、パリカノティタへは戦いのなんたるかを知らしめられる為に連れてこられた。


 今回はより実践になったから……結果オーライだよな。


 ――執事さん達が戦っている部屋についた。

 

 全員無事生還達成!

 パリカノティタ選手は当然だが、素人組ですら勝てるのか。


 まぁ、殆ど素人が相手だからな。


 執事さんはコクバロッテスを見た瞬間、飛びかかって心配した。

 心配性なだけなのかもしれないが、次期国王が攫われたんだ。

 そりゃ心配する。


 ウチが執事だったら――あんまり焦らないかも……


 ――そして、地上到達!

 土や、恋しかったぞ。


 すると、忘れていた大雲入道が姿を現した。

 現れたことで、周りの霧が晴れていた。


 大雲入道を見たことがないニアス達は眼を丸くしていた。


「やっと戻ったか」と心配するや否や、大雲入道の一部をくれた。

 というか、飲ませられた。


「ゴホッ! ゴホッ! な、何すんだ……」


 蒸せていたウチに大ウンコ野郎は腕を組んで説明した。


「お前さんが願えば、体の一部にワシの霧を纏うことができるぞ」


 ウンコ野郎の霧の性質。

 それは、相手からの干渉は許さず、自分からは干渉できる霧だったはず。


「おぉ! 結構いいねぇ!」


 その返答に、ウンコは鼻を高くしていた。

 あんまり鼻は見えなかった。


――――――――――――――――――――――――


 ――ネヴキュベートに戻った。


 すると、早速地口教を国に投獄させた。

 パリカノティタ選手の腕は凄まじく、一人が十人を相手するとかも余裕らしい。


「では、私達はこれにて。一ヶ月後の王位継承の件、忘れないでくださいね」


 そう言うと、彼女の懐から紙切れが四枚出てくる。


「これが、見えない壁を通過するためのチケット?」


「はい。これは二回まで使えますが、依頼は必ず出席してもらいますよ?」


 そう言ってコクバロッテスさんと、執事さんは頭を下げた。

 そして、馬車に乗ってウェイシアに帰って行った。


 最初、門でみた馬車に乗って、だった。

 やっぱりあれはステラ家の馬車だったのか。


「じゃあ、俺たちももう行くよ」


 素人組たちも行くようだ。

 ロードブルク方面じゃなく、ウェイシア方面に行くらしい。

 素人組達が一箇所で長時間屯しないと、一生会うことはないのだろうか。


「えぇー! もう行くの!? 一緒に行動しようよぉ〜」


 ウチはマダグの手を握って円な目で見つめた。


「それ、一緒に行ったら王位継承戦に巻き込まれんだろ?」


 ウチの魂胆がバレてただと!?

 上手くはぐらかしたつもりだったが、流石だぜリーダー。


「ま、一生おさらばではないんだ。また会おうぜ?」


 すると、横からギスターナも顔を覗かせた。


「そうだぜ? 俺はお前と尺で飲んでみたいんだ。それまで酒は預けてやるから」


(そこまでしてなのか? かっこいいぜ兄貴!)


 そうして、素人組達もウェイシアへと赴いたのだった。


「さて、メッちゃん!」


 ウチらの目はメッちゃんへと集中した。

 メッちゃんも、柔和な微笑みで返してみせた。


「わぁてる。修行だろ? 覚悟しとけよ? シロだけきついぞ?」


「あぁ゙? 何でウチだけなんだよぉ!」


「逆らったな? はい、今ので練習量二倍ぃ!」


「逆らってねぇよ!」


 ウチらはメッちゃんを追うような形で道場へと戻った。


 今に思えば、今までで一番成長したかもしれない。

 ウチ以外だけど。


 まぁいいさ。


 ウチらには、やるべきことがある。

 そして、依頼も3つ掛け持ちだ。

 クハパリの護衛、王位継承戦、AAAの壊滅。

 やること尽くしだ。


 全部まとめて、乗り越えてやる。

 その為には、まずは修行だ。


 3つの依頼で、苦労しないぐらい、強くなってやる!



       〜 第四十話 完 〜

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