領兵達的熱烈大歓迎
アイリーンの領地は学園から馬車で普通5、6日かかる。
今回大公家の馬車を借りたので、ありとあらゆる優遇を受けて3日と半日で着いた。
ちなみに若君は半笑いで馬車を貸してくれた。悪いことをしたという想いと同じ穴のムジナを得た喜びが伝わってきた。
領地へ着くと、 関所の領兵が気さくに話しかけてきた。
「立派な馬車だなぁって思ったら、若様じゃないですかい。」
「ああ。悪いな、先を急いでいるんだ。」
顔見知りの領兵に軽く挨拶をして馬車を出そうとするも、わらわらと兵達が集まってきてしまった。
「そういや、若様。若様が東国から貰ったっていう種がね、芽吹いたんらしいんですよ。農民達が騒いでやした。こりゃあ、東国の専売特許のブツなんじゃねえかって、な?」
「ああ、連中お祭り騒ぎでしたぜ。若様がおっぱじめるつもりだってなあ。」
「そうそう。こりゃ戦争が起きてもおかしくねえぞって。」
「若様は危ない橋を平気で渡るから、俺達がしっかりせんとなぁ。」
兵達はがははと笑い合う。
「ええい!聞き捨てならないぞ。東国から確かに種は頂戴したが、正当な報酬である!確かにどさくさ紛れであることは否めないが、戦争なぞ起こらん。かの国は内紛でそれどころではないからな!はっはっはっ。」
急いでいるというのについつい高笑いを見せつけてやると、兵達はキャッキャッと騒ぎたてた。
「なんだい、若様。元気じゃないですかい。」
「なんだって?」
聞き返すと、兵達は顔を見合わせた。
「そりゃ、アイリーンお嬢様にフラれたんだって言うから。」
「こりゃもうとんでもないことになるぞって。」
「お祭り騒ぎにして慰めてやろうって。なぁみんな?」
やんややんやと騒ぐ兵達に絶句した。
「な、なぜそれを?いや決してフラれてはないが…」
「若様~。情報収集の大切さは耳酸っぱく教えたはずですぜ?」
「若様、学園に通ってボケちゃったんですかい?」
ニヤニヤ笑いの兵達に何も言い返せない。肩身が狭い。せめて、ぐう位は言ってやる。
「おいこら、あんまり若様に無礼なことをするな。」
関所の領兵長が見かねて兵達を諌めてくれた。
「若様はな、ただでさえお嬢様にフラれ落ち込んでいるんだぞ。それをだな、お前たちはナメクジに塩をかけるようなマネをしやがって…」
クドクドと兵達を叱る領兵長。あれ?領兵長?何しにきたの?
領兵達の熱烈な歓迎を後に領主の館へと向かった。いい加減付き合っていられない、僕は急いでいるんだ!決して逃げたわけじゃない。
後日話を聞いたが、領兵達はどうやら領主へ謝罪に伺うだろう僕の緊張を解そうと思ったそうだ。全く不器用なやつらめ。ふふ。
なんて僕が言うわけなかろう!覚えてろ!




