ロッテの気紛れ
残すところはアイリーンだ。
後回しにしたせいで余計にハードルが上がってしまった。
ロッテに探りを入れるため、ティータイムに招待すると生温かい目で見られた。
「君の言いたいことはわかる。けど、僕にだって事情があったんだよ。」
「そうなのだろうとは思っておりましたけれど。私にはどうでもよいことですから。」
ロッテはカップを下ろすと、あからさまな溜め息をついた。まさしく貴族令嬢らしいロッテが自身の感情を顕にするのは珍しく、おやと思った。
「…他人のアレコレなんかどうでもよいと思っていたのですけどね。」
ロッテは少しばかり吐き捨てるようにそう前置きをした。
「貴方に何か事情があって、あんなことを言ったんだって端から見ていても分かりますわ。それなのにアイリーンは分からなかった。それが問題なのでは?」
「……もう少し噛み砕いてくれ。」
「…貴方。アイリーンの周囲を固めることに熱心なあまり、核心を疎かにしているのでは?」
「何のことだ?」
ロッテはふぅと溜め息をついた。
「アイリーンにとって、貴方は、お金儲けが生き甲斐で、アイリーンの領地を繁栄させることが趣味の唐変木ですわよ。貴方がアイリーンのことを想っているなんてちっとも考えていないのではないかしら。」
ロッテの言葉に愕然とした。なんだそれは。まるでヘンジンじゃないか。
「ど、どうしてだ?」
「さぁ。ただ、アイリーンは一途で真っ直ぐな人だわ。…見ていてイヤになるくらい。何か原因があるのでは?」
「…でもアイリーンが言ったんだ。領地領民を富ませること、それが全てだと。愛の言葉など不要だと。」
ポツリと言葉を溢すと、ロッテはカチャンと音を立ててカップを置いた。
「…思ったよりも堪えますわね…。」
彼女の不作法は珍しい。
「失礼。…外から見ていますと、アイリーンも貴方も羨ましいばかりでしたけれど。」
よく分からず困惑していると、ロッテは小さく微笑んだ。
「…言って差し上げれば?貴方がアイリーンをどれだけ想っているのか。」
それからは、でもとかだってだの、どれだけ僕がグダクダ言っても、ロッテは面白そうに微笑むばかりで取り合ってはくれなかった。
心なしかロッテは嬉しそうで、それが妙に印象的だった。
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昔昔の話だ。
婚約者が可愛くて照れ臭くて素直になれなかった。けれど、すごいって言われたくて、褒めてもらいたくて、一生懸命勉強した。
言えなかった言葉があったけれど、彼女はそれを望まなかった。
領地領民を富ませること、それが全てだと言い切った。
だから僕は心に誓った。何が何でも彼女の大切な領地を栄えさせようと。
それだけだ。
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