第一話
「敵前方より接近!隊列Bを展開!」
「「「「了解!」」」」
隊長の声に合わせて隊列を整えていく。
何をしているのかと言えば訓練だ。出動がない時はほぼ毎日こうして訓練をしている。
「相良は俺と右へ!それ以外は左へ回れ!」
「了解!」
相良は返事をしてから右の隊長のいる方へ走っていく。
隊長である金村は足が速く判断能力も速い。さすがは第50代の副隊長といったところだ。
それに自称神野真のライバルである相良はと言うとなにか秀でているものがあるわけでもなく今回も金村に置いていかれている。
「おい!相良!そんなんじゃ敵にたどり着く前にやられるぞ!」
「はい!すみません!」
そんなことわかってるんだよっ!と心の中でつぶやき足に力を入れる。
それでも足が速くなるなんてことはなく目的地に着いた時には金村は銃を構えていた。
ようやくついた相良は息を切らしながら銃を構えるも肩が揺れて狙いが定まらない。
一発、二発。
「相良!どこ狙ってんだ!死にてえのか!」
隊長の声が耳に入るが無視をして打ち続ける。
三発。ようやく当たった。
そこで敵に見立てた的が倒れる。倒れた衝撃で砂が舞い風に乗る。
その砂の匂いと火薬の匂いが混じり鼻に入る。
フーーッ!と大きく息を吐いた相良は汗が目に入ることでようやく腕で額を拭った。
「相良!お前はどうして遅れるんだ!ひとつの遅れで敵に攻撃できずに反撃されることもあるんだぞ!わかってんのか!」
そうやって金村はいつも相良を目の敵にして怒声を飛ばしている。
相良はそれを殺すような眼つきで睨むが、どうにか堪えてそっぽを向きながら答えた。
「………ハイ」
金村はため息をついてから背を向けて二手にわかれた副隊長の方へと歩いて行く。
相良がいまだにそっぽを向いたまま立っているところに駆けてくる影が一つあった。
「たくみ!大丈夫だった?」
古河真奈美しかいないだろう。
「あぁ、俺は平気だよ」
「なんかずいぶんと隊長がしかめっ面してこっちに来たからなにかあったのかと思ってたけど…大丈夫そうだね」
「………」
相良が金村と同じようなしかめっ面をしていたことに気がついた古河はあわてて話を変える。
「ええっと、そういえば!今日の訓練はこれまでだって!この後は会議があるからそれの準備だってさ!」
「あぁ、わかった。」
相良はそんな気遣いなど知る由もなく言葉よりも先に体を動かして歩きはじめていた。
古河は心の中で少しばかりため息をついてから相良の後をついていった。
○
それから部屋に戻った相良は会議のために土のついた訓練着から着替えている。
もうさっきのことなど忘れていて頭の中は冷めきっている。
と、その時突然ドアが開いた。
「あーつーいー!廊下ってなんでこんなに暑いの!」
「お、おい!真奈美!着替えてるんだから入ってくるなよ!」
「わたしは着替え終わってるもーん!」
「そういう問題じゃねえだろ!」
もちろん真奈美だ。むしろ真奈美以外この扉を無断で開けるやつなんていない。
「いいから出て行きなさい!」
相良は焦ったように持っていたTシャツで体を隠す。
「もしかして恥ずかしいの〜?大丈夫!どんな体だろうがわたしは受け入れるから!」
「だからそういう問題じゃねぇよ…」
呆れたようにつっこむ相良はもう諦めたのか後ろを向いて着替え始める。
着替えているところを古河はじっと見つめている。その目は悲しげな表情を浮かべている。
「ねー、たくみ」
「なんだ?」
相良は持っていたTシャツを地面に置き、準備していた新しいTシャツを被ろうとして……
「たくみはさ、わたしが死んだら悲しい?」
相良はその言葉を聞いた瞬間に動きを止めた。
さらに、古河は相良の背中に向かって呟く。
「もし…もしね、明日要請があったら国のために死ななきゃいけないんだよなぁって考えるとね……」
古河は鳥肌をたたせ震えている。
相良は今にも崩れそうなそんな肩に手を置いて顔を寄せて言った。
「大丈夫だ。真奈美のことは俺が命を賭けて守る。だから安心しろ」
そう言って励ますことしかできない。だって、相良も同じようなことを日々考えて訓練を行っているのだから。
誰だって死の恐怖と向かい合い、戦場に恐怖を感じている。
真もこうだったのかなぁと相良はよく考えるが死んでいるから聞けるはずもない。
「たくみ……。ありがとう……。」
少し目に涙を浮かべていた古河は相良に向かって微笑んだ。
「でも、たくみ。服を着ようよ…。さすがに恥ずかしくなってきたよ…」
「え?」
相良が自分の体を見ると下は穿いているのに上は着ていない。後ろを見ればさっきまで手に持っていたTシャツが地面の上に残されている。
「ごめんなさいぃ!」
相良は謝りながらTシャツを拾い別室に消えていった。
「ふぅ……」
古河は相良が別室へ行ったあとソファに持たれかかって大きく息をついた。
その顔に先ほどまでの萎縮したような表情は見られない。それよりも好きな人に守ってやるなんて言われたことに対しての嬉しさのほうが大きくなっている。
「わたしももっと頼ってもらわないとな…」
本人は気づいていないかもしれないけれど相良は焦燥感に駆られている。
なにに追われているのかなにを背負っているのかわからないけど焦っているように古河の目に映っている。
「なにもないといいんだけど…」
相良は目を離したらどっかに行っちゃうような気がする。わたしはただ置いていかれないようにしなきゃいけない。
と、古河が思っていると相良が部屋のドアから出てきた。
「よし、会議に行くか」
もうその顔にはさっきじゃれた時みたいな楽しそうな表情は一切見られない。ピリリと引き締まった顔を周りに見せている。
そうして訓練終了から二時間後、会議のために相良と古河は部屋を出た。
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「なっ………隊長!ここにあるのは本当のことですか?」
「ああ」
「本当に出撃要請が来たんですか!?」
「ああ」
「……っ!」
会議が始まってからまだ10分も経っていない今。隊長である金村から出撃要請が出ていると通告があった。それに対して隊員の一人である小鳥遊愛が声を荒げている。
彼女は恋人がいてその恋人は今回の隊員試験に落ちたせいもあり個別訓練を日々行っている。
だからこそ、今まで何もなく過ごしていたのに急に要請によって命の危機に晒されなければならないとなった。
そりゃあ隊員を目指している身としていつでも国のために死ねるようにとは思っているものの感情の処理が追いつかない。
同情するように相良も古河も三浦も下を向くしかなかった。
でも相良は下を向きながら少し口の端を釣り上げていた。
それから小鳥遊は放心状態となったがこの後彼氏に慰められるのはまた別の話。
「とりあえず今日の会議はこれまでだ。近いうちにまた要請に関しての話はする」
金村が締めをして会議は終わり解散する。
がしかし、最後に言葉を発した。
「相良。お前は残れ」
「………わ、かりました」
下を向いていた相良だったがなんとか顔を整えてできるだけ感情を抑えた低い声で答えた。
「じゃあ、相良。また後で飯に行こうや」
「はい、三浦さん。少し待っててください」
「おーらい」
三浦は今日の夜ご飯の約束をしたら会議室から出ていった。これで会議室に残っているのは金村と相良だけだ。
「それで、なんの用ですか?」
「いや、用ってほどじゃないが少し話をしたくてな」
「話?なんのでしょう?」
「神野真についてだ」
そこまで言って金村はようやく席に座った。
相良は金村の言葉を聞いて驚いた表情を見せる。
金村が神野真についてや、清水奈津について話をすることなんて一度もなかった。
ましてやあの日の生き残りである金村はあの日のことについて口を開くことはなかった。
「詳しく聞かせてもらえますか?」
心の中はなんて表したらいいかわからない感情に押しつぶされそうになりながらも顔を真面目にして相良も席に座る。
「実は神野に伝えてくれと言われたことがあるからそれを俺が話そう」
もしかしたらあのトレーニングルームでの話したいことがあると言っていたやつかもしれないと相良は考える。
「ただし、覚悟しろよ……これを聞いたらお前は元には戻れない。それでもいいか?」
「真や奈津はそれを聞いてでも戦ったんですよね?だったら聞かせてください」
「…………わかった。俺が知ってることを全部話そう」
そう言って金村は話しはじめた。
○
「そ…んな…」
相良は絶句した。喉をなんとか震わせて三文字の言葉を絞りだすので精一杯だった。
それくらい金村の内容があまりにも残酷で非情で無常だったからだ。
「だとしたら俺達が戦ってる意味ってなんですか…?」
「………」
金村は相良の問いに答えることはできなかった。できるわけがなかった。この内容を聞いてそれでも戦闘を行おうなんて考えるやつは頭がおかしいとまで思う。
もしかしたら清水は知らなかったかもしれない。でも、神野は知った上で出撃していった。
「あいつは…真はこのことを周りに言っていたんですか?」
「いや、俺も知らなかった。実際に帰還してから神野の机を調べた時に出てきた。あの時、明らかにおかしいと思ったんだ。でも、わかってた上で戦場に出たんだと俺は思う」
金村はなにか言い訳でもするかのように捲したてた。
相良は黙るしかない。
受け入れるしかない。この現実を。
「これは、どうしようもないんですよね?もしこれが1割でも…いや、1%でも本当だとしても受け入れて戦うしかないんですよね?」
「…………あぁ、実際に神野はそうだったんだと思う。それでも、……死ぬとわかっていても出撃しなきゃならない何かがあったんだと俺は思う」
相良は唇を噛みしめる。
いろんな思いが頭に浮かぶ。
それは金村に対することだったり、神野に対することだったり…。
自分への憤りだったりする。
それでももう神野も清水もこの世にいない。
今は守るべきものが相良にはある。
「隊長。どうしてこれを俺に教えてくれたんですか?」
「それは………」
金村は何かを考えるように口を手で塞いだ。
そして、手で塞いだまま話しはじめた。
「お前だったら信用できたからかもしれない。話してもいいんじゃないかって思ったからかもしれない。……でも、本当は罪悪感があったからだ。お前にとって大事な人を二人も亡くしてしまったからな。話すことで償おうとしていた」
話している金村を相良はただただ黙って見ていた。
口を開くこともなく、聞こえるのは鼻を通って肺に出入りする空気の音だけ…
沈黙がいつまで続くのかわからないまま先に開いたのは閉じたままだった相良の口だった。
「隊長…いや、金村悟。神野真の友として言わせてもらう。気にするな。過ぎたものはしょうがねぇ、取り返せないものもある。
そして、一人の隊員として言わせてもらいます。僕にも守る人が出来たんです。その人くらいは守らせてください」
相良の眼には熱い何かが流れている。それは神野から受け継いだもの。そして、神野と同じく守る人を見つけた眼。
金村はその眼を見て黙って頷くしか出来なかった…。
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「よいしょっと」
相良はバイクから降りてヘルメットを外した。
今日はあのスイソアトムスが置いてある小屋に来ている。
出撃前の願掛けというわけではないが神野に挨拶をしてから行こうと思ったらしい。
ギシギシと木造の床の音がなり、キィィィとドアノブを回す。
机を開けるとスイソアトムスが。
このスイソアトムスの威力は真の手紙に書いてあった通り、街を一つ消し去るほどらしい。
でも、相良はこれを使うときはそう遠くないんじゃないかと思っている。
というか、今回の戦いもこれを持って守るべきものを守るために身につけておこうと思ってここに来た。
できれば使わないで済むほうがいいんだがアレを見てしまっては疑い深くなるのも仕方ない。
「しかしまぁ、どうやって手に入れたんだろうなこんな凶器」
街を一つ消し去るとか言うけど本当にそうなのだろうかと相良は疑問に思う。
神野も使ったことないと書いてあったからもしかしたら普通のアトムスと変わらないんじゃないかと考えている。
「まぁ使ってみようとは思わないんだけどな」
スイソアトムスを使うときは本当に最後なんだろうなと思いつつも腰に付けてきた予備のホルスターにしまう。
「とりあえず行かなきゃな、そろそろ時間だろ」
相良はもうすぐ始まる念の為の配備というやつに出撃しなければならない。そのためにもう一度バイクに乗って本部のある横浜に帰る。
腰に付けているのが最悪のお守りだとは知らずに…。
○
「さて、もう一度作戦を確認しておこう」
隊長の号令により、移動車の中で最終ミーティングが始まる。
「今回はおそらく配備だけになる。相手国もアトムス使いを連れて来ているとの話も聞かない。北側と南側に別れて二箇所で交戦中だ。俺達は南側へ行く。そこでまずは先行して俺と相良が南側の建物に入り中にいる仲間と合流。その後確認がとれ次第、他の三人が反対の北側の建物に入る。そしてそこで待機だ」
金村による事細かな作戦をもう一度確認される。
今回が初めての戦いであるものが半数を占めているから隊長と副隊長に別れて配備される。
おそらく睨み合いで終わるだろうと金村は考えている。
「きちんと装備を整えてどんなことにも対応出来るように」
この言葉は金村がいつも練習の時に口にしている言葉だ。実戦を意識しろといつも言われていたが今回が初の実戦である他の4人は顔が強張るのも無理はない。
「さぁ、作戦開始だ。」
金村と相良は銃を構えながら動き始める。
○
「ここで待機ですか?」
ここはさっき金村が話していた南側の建物の一角。金村と相良以外の三人は反対側の北側の建物にいる。
「あぁ、そうだ。次の連絡があるまではな」
今回の作戦は待機で終わる可能性がある。待機で終わったのならそっちのほうがいいが、相良は少し疑問を感じていた。
(嫌な予感がする…)
バゴォォォオオオンン
そんな予感がすると思っていたら近くで爆撃音が聞こえた。
「ッ、確認を急げ!」
相良はすぐに音のした方向にある窓の方に向かう。
しかし、爆発の煙のせいなのかすぐに窓から外を見ることが出来ない。その間にも相良の頭の中はさっきの予感がよぎる。
ようやく煙が晴れて見えてきたのは上部が崩壊している建物。
しかも、その建物は古河や小鳥遊がいる北側の建物だった。
「隊長!北側の建物に爆撃有り!行動の許可を!」
「ダメだ!待機だ!」
「どうしてですか!仲間がやられたんですよ!助けに行かないと!」
「ダメだ!助けたいのはわかるが、待機だ!」
「隊長…もういいです!見損ないましたよ!」
「オイ!相良!」
相良は金村の声を振り払って急いで階段を駆け下りる。
「無事でいてくれよ…真奈美!」
相良が建物の出口から出て走り出した時もう一つ爆撃音が聞こえた。西側の建物が崩落しているのを横目に北側の建物に走る。
嫌な予感が的中したかのように周りから爆撃音が聞こえてくる。
爆発の衝撃で砂が舞う。前も見えないくらい舞っているが相良は気にせずただ真っ直ぐ北に向かう。
砂が鼻腔や気管に入って咳込むが吐いた息を大きく吸い込みまた咳込む。それでも走るのをやめない。
砂埃が収まり、相良の足が止まる。
目の前に映るのは一階部分だけを残して崩落した建物。
そこにいたのは小鳥遊のみ。
小鳥遊だけが建物を見つめていた。
相良はすぐに小鳥遊に駆け寄り、確認を取る。
「小鳥遊さん!大丈夫ですか!怪我はないですか?」
「わ、わたしは大丈夫だけど……」
小鳥遊はそう言って目を伏せる。まるで目の前の情景から目を逸らすように。
「真奈美はどこにいますか!一緒でしたよね!」
「…………古河さんは。」
小鳥遊はそう言って建物を指差す。その指は震えていた。
相良は指差した方向を音が出るんじゃないかってくらいの勢いで駆け出す。
そこにあるのは瓦礫だけ。瓦礫しかない、一面灰色の塊。鉄筋コンクリートと呼ばれる物体しか目に入らない。
あの古河真奈美の透き通るような肌、整った顔、そしてなによりあの周りを元気にするような声が………
「タクミくん………」
!?
相良は古河の元気にさせるような声じゃなく心配にさせる声のするほうに顔を向ける。
「どこだ!真奈美!俺はここにいるぞ!」
「ここだよぉ……」
古河は自力で瓦礫の隙間から這いずり出てきた。
体はボロボロ、でも五体満足でいることに相良は見てわかるくらい大きく安堵する。
「あはは、さすがに天井が落ちてきたときはどうなるかと思ったよ……っトト」
「あっ、おい!ほんとに大丈夫かよ!」
古河は足が動かないのか立ち上がろうとするとよろめいてしまうのを相良が支える。
その時、顔が自然と近づいてしまう。
相良は急いで顔を逆に向ける。
「そ、そんなことより足大丈夫か?」
「んー、巧が背負ってくれたら嬉しいかも」
ハァーと大きく息を吐いた相良はしゃがんで手を後ろにやる。そう、おんぶするときの体勢だ。
「それくらいお安い御用だよ。ほら、乗れよ」
「あ、ありがと」
古河はおんぶしてくれるとは思ってなかったみたいで少し面を喰らうが足は動かないので言葉に甘えて背中に乗る。
「ちょ、ちょっと待って!巧!」
「どうした、早く足を治療しないと」
「三浦さん!三浦さんも巻き込まれてるの!」
相良は一度足を止める。本当は一刻も早く古河の足を治療しなければいけない。
相良は顔に皺を寄せる。
「巧、わたしは大体の場所はわかるから連れてって!」
「わかったよ!その代わり俺の背中から離れるなよ!」
古河の言葉でようやく動きだした相良はもう一度灰色の瓦礫に足を向ける。
○
金村は相良が走って行ったあと少ししてから追いかけた。
金村が着いた頃には小鳥遊が一人で安全地帯を確保して座っていた。
「あ、隊長…。報告が……」
「今はそんなことはいい。とりあえず座っておけ」
小鳥遊の顔は真っ青で血が通っているのか疑うほどだ。それだけの恐怖を味わったのだろう。
金村は大きく息を吐き自分を落ち着かせようとする。
とりあえず状況を把握するところから始めないといけない。
「それで、相良はどこに行った?」
「相良くんは……古河さんを探しに瓦礫の方に…」
「あっのバカ…、あれほど言ったのに……」
もう一度大きく息を吐いた金村は立ち上がり建物の方を向く。
瓦礫の影に隠れているのか相良の姿は見えない。
「とりあえず小鳥遊はここで待機だ。自分の身は守れよ」
「??はい」
金村の後半の言葉に疑問を感じているのか首をかしげている小鳥遊。
金村はそれを横目に建物に向かって走り出しす。
○
「三浦さーん!どこですかー!」
背中に背負ってる古河の言う三浦さんが配置されていた場所を中心に相良は歩いているが一向に見当たらない。
「巧!あれ…なに?」
古河の目線の先にあるのは地面から突き出てる鉄棒みたいなもの。
その根本に……
三浦が刺さっていた。
建物から落ちてきて刺さったのか背中から腹部にかけて一突きである。
しかも、当たるときに避けようと思ったのか少し体がねじれて斜めに刺さっているのがわかる。
内臓が飛び出ていて、体からぶら下がり風に揺れる。
相良と古河は言葉を失う。
口が開かない。
目が閉じない。
息が出来ない。
古河は自分がああなっていたかもと考えるだけで胃から物が出そうになる。
「たくみ………」
古河は相良の顔を覗く。
相良は目を開いたまま三浦の遺体に近づく。
何も考えずに足を引きずりながら近づく。
三浦の遺体の前に来てようやく相良はその口を開いた。
「ほんとう……なのか……?」
その声はあまりにも小さすぎて古河の耳にすら届くことはない。
古河を背負ったまま鉄棒に刺さっている三浦の腕に巻いてある布を取る。
遺品として持ち帰るつもりなのだろうか相良は布をポケットにしまう。
その布には血が付いているが気にすることなくポケットへ。
相良は三浦を発見してから一度も古河の顔を見ていない。
見るのが怖いんだ。自分がどんな顔をしているのか見られたくなかった。
古河の顔を見たら泣いてしまいそうだから。
相良は一度隊長のところに戻ろうとして………
そう遠くないところから光が目に入る。
聞いたことのある破裂音。
それらを感じる前に後ろの古河が前に全体重をかけてきて倒れ込む。
小さな鉄の塊が回転を描いて相良の耳を掠めていく。
耳から赤い液体が流れると共に聞きなれない音が入り込んでくる。
それは、本当に空気が爆発したような音だった。
次に顔を上げた時には人間が一人頭の失くして死んでいた。
それから後ろを振り向くと金村が……
銃口から煙が出てる『チッソアトムス』を構えて立っていた。
「間にあってよかった。できればこれは引きたくなかったけどな…」
金村はそう言って『チッソアトムス』をホルスターに仕舞う。
そこでようやく相良は全てのことを理解して…………。
「?たくみ?どうしたの?」
「あは、あはははははははははははは!!ハハハ!」
嗤った。
ようやく話が始まりました。相良を中心に話が進んでいきます。
※誤字脱字があればご指摘よろしくお願いします




