第4話 ドラゴンレース開幕
間もなくして、係員さんが参加者たちを中央の広場へ集めた。
「それでは、予選の説明を行います。全員こちらへお集まりください」
示されたのはコース図。
スタート位置から始まり、次に立体的な障害物エリア、またこちらに戻ってくる急カーブの旋回地点、そして最後の直線ゴールと示されていた。
「予選は参加人数が多いため、数組に分かれて実施します。各組の上位三名のみが本戦へ進出となります」
順を追ってグループ分けが発表されていく中、私の番になった。
「あなたは受付終了間際の駆け込み参加でしたので、最終組になります」
「最終組……! ふふっ、私が優勝する運命なのかも……本当はあんまり目立ちたくないんだけどなぁ……チラッチラッ」
チラチラとカメラ(パル)の方を見る私に、パルはジト目を向けた。
「こっち見んな」
周囲からは、不穏な小声が聞こえてくる。
「おい、最終組って……」
「飛び入り枠の強豪や、ドラタン様も最終組だぞ」
「運が悪すぎるな……」
ふふん、私がどうせ勝つんだから今のうちに盛り上げといてよ。
「最後に出てくるなんて、なんか物語の主人公みたいでカッコいいね!」
「自らフラグを立てていくスタイルか。頑張ってへし折れるといいですね」
--
「最終組の皆さん、出走ゲートへ入場してください!」
係員の誘導の声とともに、巨大な鉄製のゲートが重々しい音を立てて開いた。
ゴゴゴゴゴ……!!
扉が開いた瞬間、外から歓声と熱気が押し寄せてきた。
実況アナウンスの興奮した叫び声が聞こえてきた。
何万もの観客が踏み鳴らす足音と出走を待つドラゴンたちの猛々しい咆哮が相まって、場の空気が跳ね上がる。
周囲の参加者たちが緊張した面持ちで竜の背に跨っていく。
私もポポの柔らかな背中にそっと跨がり、短いたてがみを優しく握った。
「ポポ、よろしくね」
「クルル!」
可愛い返事が返ってくる。
ゲートを完全に抜けると、圧巻の景色だった。
見上げれば雲一つない晴れ渡った青空。
これは私に用意された舞台だと確信した。
「すごぉぉぉぉい!!」
私はポポの上で両手を広げ、大はしゃぎした。
観客席からも、私たちの姿を見つけてざわめきが広がっていた。
「おい見ろよ、あんな小さいドラゴンいたのか!」
「たしかにとんでもなく小せぇぞ! 毛が生えてるし!」
「あのエルフ勝つ気がないな。ただの思い出出場だろ」
観客たちの失笑や嘲笑が聞こえてくるが、私は気にならない。
なんか主人公補正で勝ちそうじゃん?
ポポの首筋を優しく撫でまわしながらニコニコと笑う。
「ポポ、可愛いねぇ。毛がフワフワだねぇ」
「クルル♪ クルル♪」
ポポも気持ち良さそうに目を細めている。
ピリピリとした緊迫感が漂うスタートライン上で、平和な空気が流れていた。
『位置について――』
係員の合図とともに、各選手が自分のスタートレーンへと入っていく。
私もポポの手綱を引き、指定のレーンへと足を踏み入れた。
隣のレーンからは、ドラタンが巨大な愛竜の上に跨がり、ギラギラとした情熱的な視線をこちらに向けている。
観客席を埋め尽くした数万人もの観客から、地鳴りのような歓声が湧き上がっていた。
「ドラタン! ドラタン! ドラタン!」
会場全体を揺らす大コール。
実況アナウンスの声も、興奮して裏返りそうになっている。
「最大の注目選手! ドラタン選手もスタートラインについたぁぁぁ!! 優勝候補筆頭の走りを、誰もが固唾をのんで見守っています!」
スタートレーンに並んだドラタンをはじめ、有力選手たちが一斉に愛竜の手綱を握り直し、前傾姿勢をとる。
「それでは……ドラゴンレース予選、開始まであと十秒!!」
「十!」
「九!」
「八!」
観客のカウントダウンが重なり、空気が最高潮に達していく。
ドラタンがニヤリと笑う。
「行くぞ!!」
「三!」
「二!」
「一!」
「スタート!!」
ドォォォン!!!! と腹の底に響く合図の音が響き渡ると同時に、数頭の巨大なドラゴンが一斉に飛び出した。
地面を激しく打つ重低音と巨体が空気を切り裂く爆音、それに負けない観客の大きな歓声が響き渡る。
「始まったぁぁぁぁ!! 一斉に美しいスタートを切ったぁぁぁ!!」
……一方。私たちは。
「クルル♪」
スタートの合図が鳴った直後、ポポはのんびりとした足取りで、なぜかコース脇の障害物エリアへとトコトコ歩き始めた。
「ええええ!? そっちじゃないよ!? ゴールは前! 真っ直ぐだよポポ!?」
私が必死に手綱を引いても、ポポはコース脇の草むらへ一直線に進んでいく。
観客席から失笑の声が上がった。
「おいおい、何やってんだあいつ!」
「ガハハハハ! ドラゴンレースおもしろいのぅ!!」
実況も注目する。
「おっとぉ!? 一頭だけ別方向へ進んでいるぞ!? 一体どうしたぁぁぁ!!」
肩の上のパルが、遠ざかるドラタンたちの背中を見送りながらハァと肩を落とした。
「開始五秒で終戦か……」
★★★
少し時間を遡り、レースが始まる直前の競技場裏。
物陰に、男たち八人が集まっていた。
今回のレースで大量の金貨を賭けている彼らは、何としてでも自分たちが裏で抱え込んでいる騎手、フンバルト・ベンデルを勝たせようと画策していた。
「作戦を確認する」
団長と呼ばれた男が囁く。
「岩役の三人は、予定通り各コースに潜伏せよ。魔法で岩に擬態し、コース脇に隠れるのだ。フンバルト以外の騎手が近づいたら、ドラゴンの大好物……野兎の肉をばら撒いて足止めしろ」
「わかりやした!」
「完璧だ」
団長は満足げに頷き、次に審判役の三人を見る。
「次に偽審判役の三人。審判に変装し、進路変更の指示、失格宣告、誘導ミス、何でも使って他を潰せ」
「任せてくだせぇ」
「完璧だ」
団長は満足げに頷き、最後に不安そうに指示役を見る。
「よし。最後に指示役。お前は遠距離通信魔法で、コース上の全員へ指令を出せ。競技全体の監視も頼むぞ。……問題は、我らの中でこいつしか遠距離魔法を使えないことだが……」
指示役の男が答えた。
「ガハハハハ! 俺に任せとけ!!」
「……団長、こいつ馬鹿だからなぁ。かなり不安だ」
「まあ良い。これで我々は歴史に名を刻む伝説となるのだ!」
「いやいや団長! 目立ったらアカンでしょう! バレたら捕まる!」
「あ」
「そこ一番重要だからな!?」
「そうかそうか。よし、気合を入れていくぞ!! 我ら『モフモフニャンコミルキーズ』の伝説の幕開けだ!」
「だから目立つ名前を叫ぶなと!!」
「ガハハハハ!」
「……まあ良い。俺は観客席でレースを楽しむから、みんな頑張れよ」
「ガハハハハ! そうかそうか、って……あれ?」
★★★
そして現在。
「クルル!」
ポポはひと鳴きすると、コース脇に転がっていた大きな岩へ向かって一直線に突き進んだ。
「違う違う違う! ポポ、そこただの岩! ゴールは向こう!」
偽装担当の男は、迫り来るポポの姿を見て冷や汗を流した。
(ん……? なんでレース序盤でこっち近づいてくるんだ……?)
ポポは岩の前で足を止めると、愛らしく頭をすりすりと擦り付け始めた。
スリスリ。
その瞬間、岩にかけられていた幻影魔法が解け、男がゴロンと横転する。
「ぎゃあああああ!! 俺は可愛いもの恐怖症なんだよぉぉぉ!!!」
横転した男が悲鳴を上げた。
それを見ていた観客から声が上がる。
「岩が……人間になったぁぁぁ!?」
「なんでいきなりバレてるんだよぉぉぉ!!!」
実況マイクから絶叫が響き渡る。
「さ、さあ!! レース開始直後から予想外の展開だぁぁ!! コース脇で一体何が起きているぅぅぅ!!」
「こっち来るなぁぁぁ!!」
可愛いもの恐怖症の男は逃げ出し、ポポは嬉しそうに追いかける。
背中に乗った私は、振り回されながら必死に手綱にしがみついた。
「レースぅぅぅぅ!! 私の金貨百枚が遠ざかっていくぅぅぅ!!」
「ポポはただ遊んでいるわけじゃなさそうだぞ?」
パルが周囲を見回す。
ポポは逃げる男をあっさり通り越すと、今度はコースの分かれ道に立っていた審判席へ一直線に向かった。
(な、なんだ!? なんでこっちに来る!? こっちは完璧に変装しているはずだぞ!?)
冷や汗を流す偽審判に対し、ポポはひょいと首を伸ばすと、男が手に持っていた合図用の旗を口で咥えて引っ張った。
ポロッ。
「あっ」
旗と一緒に男のカツラが脱げ落ち、隠されていた偽のコース案内看板がガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
「おい……あの審判、様子が変だぞ!」
「あの看板、間違った方向を指してなかったか!?」
「審判席で異常発生だぁぁぁ!! このレース、一体何が起こっているんだぁぁぁ!!」
その頃、木の上に隠れていた通信魔法役の男は、パニックになりながら水晶玉にしがみついていた。
「残りのメンバーへ! 緊急事態だ! だが作戦はこのまま続行する!!」
直後、ポポがピタリと足を止め、ゆっくりと上空を見上げた。
そして、一直線に木に向かって突進する。
「今度はどこーー!?」
ドシンッ!!
ポポが木に頭を軽くぶつけると、枝の上から男が真っ逆さまに落ちてきた。
「なんで俺の隠れ場所まで分かったんだぁぁ!!」
--
地面に叩きつけられた男を含め、これで怪しい男たちが三人、コース中央に転がっている。
「え……?」
私がポカンとしていると、パルが声を漏らした。
「……もしかすると」
「クルル♪」
「これはポポの能力か……? いや、まさかな」
私はポポの丸い頭を撫でまわした。
「ポポ、すごいね! 悪い人たちを一瞬で見つけちゃったの!?」
ポポは誇らしげに胸を張り、「クルル♪」と嬉しそうに喉を鳴らした。
すると、落ちてきた通信役の男が必死に叫んだ。
「ま、まだだ! まだ仲間の盗賊はコース上に隠れている! 作戦は続行だ!!」
「え?」
私は男を見下ろした。
「あなたたちって盗賊で……まだ仲間がいるの?」
「な、なんでそれを知っている!?」
「だって、今あなたが自分で全部言ったから……」
こんなことをしている間にレースは遥か先へ進み、私はぶっちぎりの最下位だった。
ドラタンたちはすでにとんでもない勢いで遠くを爆走している。
私はふぅと息を吐き、ポポの背中の上で肩をすくめた。
「まあいっか! ポポ楽しそうだし!」
「クルル♪」
金貨百枚は消えて行きそうだけど、ポポが満足そうならそれで良い気がしてきた。
その時、観客席の一部でざわめきが広がり始めた。
「あれ……?」
「なんか、遠くからヘンな音が聞こえないか……?」
競技場の外、遥か遠くに広がる深い森の奥から。
ズドン!! ズドドドドド!!
大気を震わせる巨大な地響き。
実況アナウンスの声が途切れ、観客のどよめきも波が引くように静まっていく。
「……なんだあれ?」
誰かが震える声で東を指差した。
森の木々がなぎ倒され、黒い影が怒涛の勢いで競技場へ向かって押し寄せてくる。
それは無数のモンスターの群れだった。
「ひ、ひぃぃぃぃ!! 魔物の群れだぁぁぁ!!」
「逃げろ! 逃げろーーー!!」
静寂は一瞬にして絶叫と悲鳴の渦へと塗り替えられた。
実況が半狂乱で避難を呼びかけ、係員たちが蒼白な顔で観客を誘導しようと右往左往する。
レースを走っていたドラタンたちも異変に気づき、強引にドラゴンを停止させて東の方を見ている。
捕まっていた盗賊たちも真っ青になっている。
「れ、レース中止だと!?」
「俺たちの賭け金がぁぁぁ!!」
観客席から紛れ込んでいた団長も叫んだ。
「ふざけるな! 俺の儲けはどうなるんだ!」
逃げ惑う群衆の中で転んで泣いている小さな子供とそれを必死にかばう親の姿。
「どうしよう……」
逃げるか、転んでる人たちを助けに行くか。
「ハルカ、無理はするなよ」
私の肩の上から、パルが声をかけてくれた。
ふと下を見ると、ポポが私を見上げていた。
そのつぶらな瞳は少しも揺れておらず、力強く私を見つめている気がした。
私は胸に手を当てて大きく深呼吸をした。
「……よし」
私は背筋を伸ばした。
「あんたたち!」
「ひっ! な、なんだお嬢ちゃん!」
「お、俺たちもう悪いことしないから許してくれ!」
私は強気な態度で言い放った。
「反省はあと! まずはあのモンスターたちを倒して!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
盗賊たちの絶叫が、パニックの競技場に響き渡った。
「無理ですってぇぇぇ!!」
顔を真っ青にした盗賊たちが一斉に拒否をする。
「俺ら戦闘系の盗賊じゃねえよ!」
「武器持ってないし無理無理!」
「うっ……頭痛が痛くなってきた……」
三者三様の無様さを出していた。
私の頭が痛くなってくるわ……と思いながら首を振って諦めた。
一方、観客席の隅に身を潜めていた盗賊団の団長は、地響きの音に額から冷汗を流していた。
迫り来る魔物よりも、レースが中止になった場合の破滅が頭をよぎる。
「レース中止になったらどうすんだぁぁぁ!! 俺の賭け金がぁぁぁ!!」
周囲の観客たちが一斉に振り返り、団長を睨みつける。
「そんなこと言ってる場合か!」
実況席のアナウンサーは大きく息を吐き、マイクを握り直した。
先ほどまでの熱狂を意識的に削ぎ落とし、できる限り落ち着いた声で語りかける。
「皆さん、落ち着いてください。現在、大会運営はフォルティス領主へ救援要請を送っています。守備隊が到着するまで、慌てず避難してください!!」
アナウンサーは客席の動きを見渡しながら指示を重ねた。
「子供とご老人を優先してください! 決して押し合わず、係員の誘導に従ってください!!」
客席の通路へ、係員たちが急ぎ足で駆け込んでいく。
「こちらです! 走らないでください! ゆっくり避難してください!」
押し合いへし合いの混乱は残りつつも、声の誘導によって群衆の動きは一定の方向へ保たれていた。
観客が逃げ延びる時間を稼ぐため、ドラゴンレーサーたちが自ら前に出て行った。
中心となるのは優勝候補のドラタンだった。
ドラタンは巨大なドラゴンの首を強引に引き、上空で旋回させる。
そして他のレーサーへ叫んだ。
「全員止まれぇぇぇ!! ここを突破されたら街が終わる!! 守備隊が来るまで時間を稼ぐぞ!!」
一人のベテラン騎手が頷く。
「当然だ!!」
別の騎手が声を張る。
「ドラゴンレーサーを舐めるな!!」
「「「おおおおおお!!」」」
ドラゴンたちが一斉に方向転換する。
目指すのは、レース場と街を繋ぐ一本道。
ここを突破されれば、その先にある街へモンスターが流れ込む。
ドラゴンレーサーたちは進路を塞ぐように並び、巨大な防衛線を築いた。
観客席から声援が上がる。
「頑張れぇぇ!!」
ドラタンが手綱を強く引き絞る。
「ドラタン流奥義!! ハイパーインフレブレス!!」
ドラタンの操るドラゴンの口から出た巨大な火炎が、戦場を薙ぎ払った。
先頭にいたモンスターの群れへ巨大な火柱が突き刺さり、大地が震えた。
観客席から歓声が上がる。
他のドラゴンレーサーたちも連続して攻撃を開始した。
鋭い風、激しい雷、冷たい氷のブレスが次々と炸裂していく。
ドラゴンレーサーたちの見事な連携によって、迫り来るモンスターを押し返していった。
拡声魔導具を通じて、実況の叫びが響き渡る。
「ドラゴンレーサーたちが防衛線を築いたぁぁぁ!! なんという連携だ!!」
しばらく膠着状態が続いたが、モンスターの群れは止まらない。
数の暴力によって、徐々に防衛線が崩れていく。
森の奥からは、次から次へと絶え間なくモンスターが姿を現した。
汗を拭う暇もなく、騎手が叫ぶ。
「数が減らねぇ! まだ来るのか!」
ドラタンが歯を食いしばる。
「くっ……!」
ドラゴンたちも少しずつ疲弊していき、じりじりと後退を余儀なくされる。
会場へ向けて、悲痛な実況が響いた。
「防衛線が押されています!!」
防衛線の端が崩れ、誘導していた係員が蒼白な顔で叫び声を上げた。
「もう防げません!」
観客席から悲鳴が上がる。
親が子供を強く抱きしめる。
街の入口まで、あと数十メートル。
まだ捕まっていない盗賊たちは、押し寄せる群れを見ながらおろおろと困惑していた。
「俺たちいつ登場したらいいんだ……」
団長も膝を震わせる。
「俺の賭け金どころじゃねぇ……」
競技場全体に絶望が漂っていたその時、ポポが鳴いた。
「クルル♪」
「ポポ?」
ポポはのんびりとモンスターの方を向くと、戦場へ向かってトコトコと歩き出した。
私は慌てて手綱を掴み直し、ポポを止めようと頑張った。
「ちょ、ま、待って!」
ポポは全く緊張していないのがわかる。
のんびりとした足取りのまま止まってくれない。
肩に乗ったパルが焦っている。
「ハルカ! ポポを止めろ! 無理なら降りろ!」
「わ、私だって止めたいよ! お願いポポ止まって!」
ポポはそんな私たちのやり取りを気にする様子もなく、トコトコと突き進んでいく。
「戻れ!! そこは危険だ!! あの数を相手に、そんな小さな一頭で行くのは無茶だ!!」
ドラタンが叫んでいる。
私も同じことを思った。
「これやばいんじゃ……」
ポポに秘めた力があるのは知ってる。でも、ここまでのことは想定してない。
先頭を走っていたモンスターがポポの姿を視界に収め、急停止した。
それに引きずられるように、周囲のモンスターたちも困惑した様子で足を止める。
ポポは首を可愛らしく傾けた。
「クルル♪」
そして、遊びのように前足を伸ばす。
ぽん。
「ギャオ!?」
一触されたモンスターが、とてつもない勢いで空の彼方へ吹き飛んでいった。
観客席から驚愕が漏れる。
「…………え?」
これは私も驚いたよ。
「もしかして……ポポならどうにかできる?」
ポポは嬉しそうに尻尾を振った。
次々と巨大なモンスターたちが面白いように転がり、吹っ飛ばされていく。
ポポが機嫌よく尻尾を振るだけでも、巻き起こる衝撃波に弾かれて何体ものモンスターが空へと飛んでいった。
私から見ても、ポポ本人には戦っているという意識はなさそうだ。
大きなお友達と遊んでいる、そんな感じが伝わってきた。
ポポは楽しそうに弾んだ声を上げ続ける。
「クルル♪ クルルル♪」
あまりの光景に、ドラタンが呆然としていた。
「…………は?」
盗賊団の団長も子分たちも、唖然としていた。
「…………え?」
実況のアナウンサーもマイクを握ったまま沈黙した。
「…………」
観客たちも言葉を失い、静まり返る。
誰も状況を理解できない中、パルが呟いた。
「……普通のドラゴンじゃない」
私の視た以上の力があったってこと?
「ポポ、やっぱりすごいじゃん!」
ポポが誇らしげに鳴く。
「クルルーー♪」
モンスターは次々と空へ吹き飛んでいく。
最後までポポには戦闘という認識すらなかった。
そこにいたのは、ただ楽しそうに遊ぶ一頭の可愛くて小さなドラゴンだけだった。




