第34話 誰が引き留めたんじゃー!
今日、夜20時頃にもアップしますが、それでストックが尽きます。
今はまったく執筆に手を付けられなくて、簡単なプロットすら無いんです。
1ヶ月ほどお休みをいただきまして、それから再開します。
もし、楽しみにしていらっしゃった方がいましたら申し訳ありません。
案はちゃんとありますので、形になりましたら活動報告に入れさせていただきます。
魔王さんの奪還会議を開いていたらスパイが紛れ込んでいた。
スパイはウーラ・ギール元軍務卿。
特殊能力でもなんでもなく、日本人なら名前でわかるやつ。
「オーエ・ライサンを連れてまいりました!」
二名の兵士が会議室にオーエ・ライサンを連れてきた。
私を見るなり、顔を真っ青にして汗をかくのやめてほしい。
まるで私が拷問していたみたいじゃん。
「ハ、ハルカ様もいらっしゃったのですね」
こんな卑屈な人だったっけ?
ライサンさんの態度がこれまでと全然違う。
「誰が話して良いと言った!」
兵士がライサンさんを小突いている。
「捕虜に乱暴はやめよ。ライサン殿はこのギール卿をご存じか?」
大臣さんが兵士を静止して、ライサンさんに問いかけた。
ライサンさんは私を見てから、ウーラ・ギールをチラっと見て違う方向に目を向けた。
「ぞ、存じております。救国軍事評議会の同僚です」
「ラ、ライサン! 乱心したか!」
ウーラ・ギールが口をパクパクさせている。
こんなときに不謹慎だけど魚かなって思ってしまった。
「ライサンさん、嘘はついてないよね?」
「ハルカ様に誓って、嘘は申しておりませぬ」
まじでこの人だれ?
完全に別人じゃん。
「ふむ、ライサン殿。知っていることを全て申してみよ」
大臣さんが穏やかな口調で告げた。
ライサンさんは神妙に頷く。
「ギール卿は、救国軍事評議会の実働部隊の幹部です。救国軍事同盟は魔王国の元貴族で構成されております。縦割りの組織となっておりまして、ギール卿は他組織だったために詳しくは知りませぬ。ただし、噂ではギール卿が強硬派の先鋒ということは耳にしておりました」
「デ、デタラメを……」
「ギール卿、諦めなされ。ハルカ様には嘘は通用せぬ。ハルカ様に背けば死よりも恐ろしいことが待っておりますぞ」
ライサンさん、遠い目をしないでください。
ヤクメーさんとマチルダ、うんうんって頷かないでくれる?
「こ、こんな小娘に何ができる!」
ウーラ・ギールの私を見る目に、少し怯えが入っているような。
「ギール卿、諦めなさい。嘘を認めれば寛大な御心を持つハルカ様は許してくれましょうぞ」
ライサンさん、今にも私を拝みそうじゃん。
ウーラ・ギールは震えながら首を振って、何も答えなかった。
「衛兵、まずはギール卿を拘束するように。ギール卿の出した案はおそらく罠でしょう。新たな案を考えねばならなくなりました」
「ここはどうだろう。一時間後にまた作戦会議を開くとして、一旦中断しないか? ノヒト大臣、休憩を入れて皆に考える時間を与えよう」
「それもそうですな……では一時間後にまたここで再開するとして、一旦解散とします。各自、案を考えておいてください」
ヤクメーさんと大臣さんがテキパキと仕切っている。
私もお手洗いに行きたくなっていたから助かるよ。
「私、ちょっと休憩に行ってきますね」
「ああ、ハルカ様。少々お待ちください」
「なんですか?」
「ギール卿の発案した作戦について、先にお伝えしようと思いまして」
多分これ、話が長くなるやつだ。
「すぐ戻りますので、ちょっと待ってもらえますか?」
「いやいや、お手間は取らせません。すぐ済みますよ」
「……わかりました。すぐ終わらせてくださいね?」
そこでマチルダが横切った。
「あたしはお手洗い行ってくるよ」
「そ、それじゃ私も行――」
「お手柄だぞ、ハルカ!」
ヤクメーさんが話しかけてきた。
このタイミングはやめてくれー。
「早速、嘘を見破る能力を使ったな。この調子で頼むよ。僕はお手洗いに行ってくるよ」
「それは良かった。私も行こ――」
「ハルカ様、ギール卿はいかがなさいますか?」
兵士たちよ。
私じゃなくて大臣に聞いてくれ。
「ハルカ様に聞いても困るだけですよ。ライサン殿とは別の鍵がかかる部屋に、手足を縛って入れておくように」
大臣さんの気が逸れた!
このタイミングしかない……こそっと行こう。
そーっと、そーっと……。
「ああ、ハルカ様。話の途中でしたな」
無理だったー!
「そうですね……。急いでもらってもいいですか? お手洗いに行きたいので……」
「それは申し訳ありません。急ぎますね」
先に行けって言ってくれないんかい!
「は、はい」
「ギール卿の作戦ですが、魔王城に通じる地下ルートを使って行くというものでした。この地下ルート、魔王城の調理場に繋がっておりまして……敵の裏をかくには良い案だと思っていたのです。元軍務卿ということで、一部の者しか知りえない魔王城の秘密でしたから、余計に良い案だと思っておりました」
「な、なるほど」
「この地下ルートは、魔王様がご在城の頃にもほとんど使われておらず、古い文献にしか記録がないのです。魔王城の東側城壁横にある倉庫の床下から入る構造でして……当時の城の建築担当者がいざという時の避難路として作ったらしいのですが、誰も使わなかったために存在自体が忘れられておりました」
「へ、へぇ……」
「しかし、ギール卿がこのルートを知っていたのは、さすが元軍務卿と言わざるを得ません。魔王城の構造図は厳重に管理されておりましたから、閲覧できる者は限られておりました。つまり、ギール卿は魔王城の内部構造を熟知していたわけです」
「そ、そうなんですね……」
やばい。
説明が長い。
「さらに、この地下ルートは途中で三つに分岐しておりまして、どれもよく考えられております。一つは物資搬入口、一つは厨房の裏口、そして最後の一つは……」
「だ、大臣さん、あの……」
「魔王様の私室の近くに出るのです」
「へぇ……」
もうこの情報必要なくない?
「この三つの分岐は、魔王城の防衛時に敵を撹乱するための構造でして、侵入者に露見しても迷うように設計されております。つまり、ギール卿がこのルートを提示したということは、我々を迷わせる意図があった可能性も否定できません」
「そ、そうですね……」
こんな時に限って限界が……。
「そして、もし罠が仕掛けられているとしたら、この分岐点が最も危険です。待ち伏せするならここが最適でしょう。もしくは裏をかいて、出口付近で待ち構えている。あるいは脱出路を塞ぐなども考えられます。救国軍事評議会は魔王城を占領しているわけですから、地下ルートの存在を把握している可能性は高い。つまり……」
「つまり?」
早く言ってよ!
「このルートを使えば確実に挟み撃ちにされます」
「で、ですよね」
「ですので、残念ながら魔王様救出の作戦は別のものを考える必要が出てきたわけです」
やばいよ。
ただでさえ長いのに、トイレに行きたいせいで半分以上話が入ってこない。
そこにヤクメーさんとマチルダが戻ってきた。
「作戦の話かな? 僕も混ぜてくれないか」
「ハルカ、あたしだって役に立ちたいんだ。仲間外れはずるいじゃないか」
「……お二人とも、ハルカ様はトイレに行きたいそうです。引き留めるのは酷かと」
誰が引き留めたんじゃー!!!
「そ、それじゃお手洗いに行ってくるね……」
「ああ、ハルカ様!」
えぇ……まだ何かあるの?
「このお二人には、空気を読むようにしっかり注意しておきますのでご安心ください」
「もう……私は行きますね!」
スタスタ歩いて私は部屋を出るとき、後ろから大臣さんの注意が聞こえてきた。
「お二人とも、ハルカ様はトイレを我慢していたのですよ。もう少し気をお使いください。おかげで、ハルカ様が不機嫌になられてしまいました」
大臣さん……。
「それは悪いことをしちゃったね」
「僕もだ、今後は注意をしよう」
「わかればよいのですよ。次回から気を付けてくださいね」
二人は何も悪くないのに!
大臣さんも復讐リストに載せたくなってきた。
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すっきりしたあと、みんなに内緒で軽くおやつを食べてから、会議室に戻ってきたらモフモフ団がいた。
「なんであんたたちがここに?」
「ああ、俺たちはハルカとずっと行動してただろ? それで参考人として呼ばれたんだよ」
キーチョが答えてくれた。
モフモフ団って、比較的まともなのがキーチョとシンパで、それ以外は微妙なんだよね。
「ふーん、ちゃんと参考になることを言ってよ?」
「任せとけ! ガハハハハ」
その微妙なマーチョが返事をしてくれた。
あんたが一番不安なんだよ。
「時間はまだ早いのですが、全員揃ったようですので会議を再開します」
大臣さんが手を叩いてみんなの注目を集めていた。
みんな席について、会議が再開する。
「それでは、魔王様救出作戦ですが、どなたかいい案はありますか?」
大臣さんが皆を見て発言を促す。
ヤクメーさんが手をあげた。
「では……あくまで案の一つとして。正面門から僕が使者として出向き、評議会の指揮官と交渉はどうかな?戦闘を避けられるなら、魔王殿の安全を守れる可能性がある」
大臣さんが考え込む。
そして首を振った。
「ヤクメー殿が出向けば、民間人を盾にして捕縛される可能性もございましょう。評議会はその手で魔王様も捕縛しておりますので、同じ手段を取られるかと。さらにそれだけではありません。その案で成功したとしましょう。その場合、自国のことを他国に力を借りないとできないという、我が国のイメージも損なわれる問題となるのですよ」
ヤクメーさんは「そうか……」と言って黙り込んだ。
次にマチルダが手をあげた。
「なら、あたしが単独で城内に潜り込むよ。魔王様の位置を突き止めれば、あとは正面からの突破を目指す。こちらには勇者様もいるんだ。危険でも、あたしだって役に立ちたい」
大臣さんはまた首を振った。
「マチルダさん、勇気と無謀は違いますよ? 魔王城の警備用魔道具はそんなに甘いものではありません」
マチルダはがっくりと肩を落とした。
次にシンパが手をあげた。
おお?モフモフ団やる気あるじゃん!
「俺からは情報戦の案を出しますぜ。評議会もずっと籠城をできるはずがない。当然、お抱えの商人なんかを使って物資を搬入しているはずだ。その商人をとっつかまえて、かわりにスパイとして潜入するのはどうだ?」
大臣さんは「むむ……」と言ったけど、やっぱり首を横に振った。
「商人を捕らえて、かわりのスパイを潜入させる案は、確かに効果はあります。しかし、それを行えば、作戦が露見したときに商人は評議会から裏切り者として処刑される可能性がありましょう。民間人を危険に晒す作戦は採用できません」
うーん、簡単にいい案はないんだね。
大臣さんが手を組んだ。
「どれも価値ある案でしたが、ご自分や民間人の安全を考慮に入れておりません。もう少し別の角度から考えましょう」
発言をした三人とも、大臣さんの発言後に考え込んでしまった。
私も案を思いついてるんだけど、言いたくないんだよなぁ……。
多分採用されるからさ。




