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異世界 満喫トラベラー ~のんびり旅行するつもりが色々巻き込まれました~  作者: みみたん


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第31話 敵も味方も

 やっと病院に戻ってきた。

 物流センターに行って戻ってきただけなのに、すごく時間が経った気がする。

 でも実際は、夜から朝にかけて、まだ数時間しか経過していないんだ。


 マチルダが注意深く病院内を覗いている。


「あたしたちはハルカの近くにいたから疑うことはなかったけど……」


「クーデター派の声明を信じている人がいるかもしれない?」


「そうだね。それに、クーデター派が病院を奪還されたことに気づいていたら?」


「既に攻めてきているか、これから攻めてくる可能性がある?」


「そうさ。気を引き締めていくよ」


 マチルダと私のやり取りを横で聞いていたヤクメーさんがビビーに声をかけた。


「そうなると、ギルマスの見張りをビビー君に頼みたいんだが……」


「わ、わかった。勇者様は何かあったときのためにフリーでいた方がいいな」


 ビビーがごねると思ったけど意外だった。

 最善を尽くそうとしてくれているんだね。


「それじゃみんな良いかな? 病院に入ろう!」


 私が合図を出して病院の中へ入った。

 病院の中はなんと……魔王国の兵士が倒れて並べられていた。


「ハルカ様! 戻られたのですね!」


 病院の事務員さんらしい人が私に気づいた。

 私たちは警戒を緩めずに、事務員さんから距離を取る。


「……この兵士の人たちは何ですか?」


「それは私からお話ししましょう」


 奥から、なんと大臣さんが出てきた。


「大臣さん! 無事だったんですね!」


 ここで大臣さんに会うなんて、すごく驚いた。

 もっと遠くに潜伏するんだとばかり思っていたよ。


「……はい、私たちはなんとか」


「クーデター派の声明は見ましたか? 魔王さんはどこにいるんですか?」


「実はそれなのですが……」


 大臣さんは疲れた顔をしている。


「んん? その前に、ヤクメー殿とライサン殿、なぜこちらに?」


「それは、話せば長くなるんですけどね……」


「色々とあったのですね」


「はい、この倒れている兵士の人たちはどうしたんですか?」


「今回のクーデターで負傷した兵士たちです」


「こんなにたくさんの人が傷ついてるんですね……」


「はい、敵味方関係なくここに並べられています」


「怪我をした人は、敵も味方もないってことですね?」


「はい。どちらにしろ我が国の国民ですからね……魔王様を守るためにクーデターに参加したと自分では思っている騙された兵士もたくさんいるのです」


 大臣さんがすごく悲しそうな顔をしている。

 私にも、力になれることがあれば……。

 って、あるかもしれない。


「私なら、この人たちの傷をすぐに治せるかもしれません」


「な、なんですと?」


 近くの倒れている兵士に近づいて、私は兵士に触れた。


【癒しの手】


 私の手が淡く光り輝き、触れた兵士の傷口がみるみる塞がっていく。


「回復魔法とも回復のポーションとも違うようですが……」


「私のスキルなんです」


「そんな奇跡のようなことが……」


 その時、パルが私の耳元でささやいた。


「無制限に使えるわけじゃない。ハルカの魔力が枯渇したら使えなくなるから注意しろよ」


 なるほど、あの時は急いでいたから神様の説明も聞かなかったもんね。

 ちゃんと覚えておこう。


「大臣さん、無限に使えるわけじゃないんですけど、私の体力が持つ限り、ここにいる負傷した人たちを治したいです」


「それは願ってもいないことですが……」


 大臣さんが恐縮している。


「そうだ、負傷した人を治す前に……」


「どうしたのですか?」


「私が負傷兵を治療している間に、ヤクメーさんから事情を訊いておいてもらえますか?」


「承知しました」


 大臣さんは深くお辞儀をした。


「ヤクメーさん、お願いできる?」


 ヤクメーさんが力強く頷いてくれた。


「ああ、僕に任せておけ。君がここまで頑張っているんだ。なんでも役に立とうじゃないか」


 本当にありがたい。

 デビルハルカの件は、少しだけ許してあげるよ。

 全部は許さないけどね。


「あと、ビビーはこれを受け取って。もう割らないでよ?」


 無限収納から常闇獣のヨダレを取り出してビビーに渡した。


「病院の人に渡して、シャガムトたちの薬に使ってもらって」


「ああ、任せとけ! 次は割らないようにするぜ!」


 これで兵士の治療に集中できるかな?

 私は早速、負傷兵のところに行って【癒しの手】を使った。

 最初の一時間くらいは記憶にあるけど、そのあとの記憶が全くない。

 意識がある兵士さんからは涙を流して感謝されたよ。

 できることをやっただけで、そんな大げさなことじゃないけど、正直ちょっと嬉しかった。

 それに、少しだけ別の打算もあったからね。


 ……次に気が付いたときには、ベッドの上にいた。


 起きたときには、ベッドの横にマチルダがうつぶせで寝ていた。

 心配してくれたんだね。

 マチルダの寝顔、かわいいよ。

 めっちゃ気持ちよさそうに寝ている。

 起こしたら悪いかな?

 なんかたくさん汗をかいていたみたいで気持ち悪いし、シャワーを浴びるくらいしたいんだけどな。


 起こさないように、そーっと……。


「…………んぅ……ハルカ?」


 起こしちゃった。


「おはよう。マチルダ」


「おはよう。……頑張りすぎだよ。そこまでハルカがやってやる義理はないんだ」


「できることをやっただけだよ」


「できることって……」


「敵の兵士も治したら、こっちに剣を向けにくくなるでしょ? それでクーデターが早く解決に近づくと思ったんだ」


「さすが救世主様だ……考えていないようで考えているんだね」


「一言余計だよ」


 二人して笑った。

 それからマチルダが真顔になった。


「五時間かけてすべての負傷兵の傷を癒してたんだ。あんなに体力が持つのも、思考も異常だよ」


 日本人的な感覚からすると、やれるときにやれる人が、必要なことをやるのは普通だと思った。


「すべての……それなら良かった」


「何が良かっただよ。体調は悪くないかい? 変なところがあったら言いなよ」


「なんともないよ。心配かけてごめんね」


 マチルダがほっと胸をなでおろしている。

 本当に心配してくれたんだね。


「ふぅ……落ち着いたらシャワーでも浴びたくなってきたよ。もう汗だくさ」


 マチルダが自分の匂いを嗅いでいる。


「私も浴びたいな。気持ちをさっぱりしたいよ」


「ちょうどこの部屋、シャワーがあるらしいんだ。一緒に入るかい? 背中を流してあげるよ」


「それもいいね。早速入ろう」


 マチルダって私より年下なのにお母さんみたい。

 そう思いながら私が立ち上がって、服に手をかけたときだった。

 コンコンと部屋をノックする音が聞こえて。


「薬が完成したぞ! ハルカは起きたか!」


 ビビーとマーチョが勢いよく入ってきた。


「な、なんですとぉぉぉ!?」


 モテない女らしい反応をしてしまった。

 ばっちりと下着姿も見られてしまった。


「あんたたち、女の子の部屋に勝手に入ってくるなんて、絶対に許さないよ!」


 マチルダが怒っている。

 怒りすぎている。

 まあ、私はそんなに気にしてないよ。

 嫌と言えば嫌なんだけど、こんなのって気にする方が恥ずかしいというか……。


「ちゃ、ちゃんとノックをしただりょ!」


 ビビーがめっちゃどもって噛んでるし。

 マーチョはすごく顔を赤くして、ゆでだこマッチョになっていた。


「返事を待たずに入ってきたんだ。あんなもんノックの意味ないだろ!」


「わ、悪かったよ!」


 マーチョが走って逃げてった。

 それに比べてビビーは、まだ私をジロジロ見るのか?

 復讐者リストの項目を増やしたいみたいだね。


「あんたは死にたいのかい? よし、そこで突っ立ってな」


 マチルダがガチだ。

 ああ、ダガーを抜いて構えた……。

 ビビーありがとう、そしてさようなら。


「薬ができたって伝えに来ただけだろうがよぉぉぉぉ!」


 ビビーも逃げ出した。


「ったく、あいつら……」


「まあまあ、私もちょっとムカついたけど、鍵かけるのを忘れてたのも悪いからさ」


「ハルカは甘いよ。あんなのはきっちり教育しなきゃダメなのさ」


 そう言って、マチルダは部屋の鍵をかけていた。


「それにしてもハルカ、せめてキャーって言ってくれないかい?」


 ……それを蒸し返しますか。


「なんですとぉ……だと、まるでおじさんじゃないか」


 キャー……言わないで。


「そ、それよりも余計に汗をかいたし、早くシャワー浴びよ?」


「そうだね。薬もできたって言ってたし、シャワーを浴びたら、あとでお見舞いに行こうかね」


 私はパルをチラっと見たら、信じられないくらいニヤけていた。

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