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異世界 満喫トラベラー ~のんびり旅行するつもりが色々巻き込まれました~  作者: みみたん


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第30話 デビハル病院に戻る

 ライサンさんの尋問に成功して、いろいろわかったのは良かった。

 常闇獣のヨダレもゲットできたし、あとは病院に戻るだけなんだけどさ……。

 ひとつ、どうしても腑に落ちないことがあるんだよね。


「なんでみんな私を疑ったの?」


 これだけは確認しないといけない。


「僕は最初から疑っていなかった」


 ヤクメーさんはそうかもだけど……。

 でもかばってくれなかったよね。


「あたしも疑ってなかったさ」


 マチルダはガチで言ってるの?

 めっちゃ疑ってたじゃん。


「わ、私たちも全く疑ってませんでしたよ」


 職員さんたちまで、そんなはずないじゃん。


「なんのことだ? 急いで帰ろうぜ」


 ビビーは黙ってて。


「それじゃ私が必死に弁解してたのに、何でみんな信じられないものを見る目で見てたの?」


 私はしつこいよ?

 ここは徹底追及しないと気が済まない。


「だって、あたしはずっと一緒にいたじゃないか?」


「だから余計に納得できないんだよ!」


「ハルカが必死になって弁解するのが理解できなかっただけさ」


「えー……それだけ?」


 必死に弁解してたのが馬鹿みたいじゃん……。


「私たちも、お友達のために必死に行動するハルカ様が煽動だなんて有りえないとすぐ見抜きました」


「それじゃ、あの態度は何だったんですか!」


「必死なハルカさまが可愛くてつい……」


 はぁぁぁぁ?


「もう、力が抜けたよ……馬鹿馬鹿しくなってきた」


「な、なあ……さっきから何を言ってるんだ?」


 ビビーは確かにいなかったね。


「魔導水晶投影機でクーデター派が声明を出したのさ」


「……常闇獣のヨダレを取りに行っている間にそんなことがあったのか」


「そうさ、その声明の中でクーデターを起こしたのはハルカだって言ってて……」


「はぁ? そんなの有りえないだろ」


「有りえないね。それなのにハルカが必死に私じゃないって弁解してたのさ」


「な、なるほどな」


 改めて掘り起こされると恥ずかしい……。

 もうこの話題やめたいけど、あと一つだけ。


「ヤクメーさんは何で考え込んでたの?」


「ああ、そのことだけど……今共有しておくべきなんだろうな」


 まだ何かあるの?


「ムーホン・オッコースと名乗っていたこの国の元宰相。顔も声もそっくりな人をモスキー王国内で見たことがあったんだ」


「そんなことがありえるの? ムーホン・オッコースは魔族じゃん」


「ありえるありえないの話じゃない。……いたんだ」


「いたとして……何を言いたいの?」


「僕が魔王の暗殺指令を国王から受けたことは伝えたよね?」


「うん、覚えているよ」


「このクーデターとも、つながっている気がしたんだ」


 なるほど……。

 モスキー王国で褒賞をもらえるから行こうと思ってたけどさ。

 行ったらトラブルの予感しかしなくなった。

 行くのやめようかな……。


「そうなると、悪魔の所業でギルマスを気絶させたのはまずかったね」


 マチルダが人聞きの悪いことを言いだした。

 いやいや聞きたいことは聞けたし、気絶は事故じゃん。


「そ、そうなるな。あれはハルカが悪魔に見えた」


 ビビーまで酷いよ。


「そうだ。もっと聞けたと思うけどデビルハルカがとどめを刺した」


 ヤクメーさん酷すぎる!

 デビルハルカて!

 しかも、とどめ刺してないし!


「そ、そんなデビハル様も素敵でした」


 職員さん、それを略すの……?

 フォローになってないし、それが定着したら嫌だしやめて!


「そ、それより病院に戻ろうよ!」


 秘儀、話題逸らし発動!


「そうだな。デビハルの言う通りだ」


 ビビー……私の復讐リストに載せたからね。


「デビハルがとどめを刺したギルマスはどうする? 連れていくかい?」


 マチルダまで……。

 今でも、友達だと思っているよ。

 でも、それとこれとは別なんだ。

 はい復讐リストに載りました!


「みんな、冗談はそれくらいにして。ギルドマスターも連れていくべきだろうな」


 ヤクメーさん……。

 あなたが最初にデビルハルカって言ったのは一生忘れないよ。

 私は根に持つよ?


「それじゃポポに臭いがつくのはかわいそうだから、ヤクメーさん背負ってよ」


「ぼ、僕に臭いがつくのは構わないのかい!?」


「あとで着替えたら済むでしょ?」


「……本当にデビハ――」


「さて、戻る準備をしよう! みんな行くよ!」


 誰かが何かを言いかけたけど、よく聞こえなかった。

 急いで病院に戻らないとね!


--


 外に出るとすっかり明るくなっていた。

 思っていたよりも街中は綺麗なままだった。

 大規模な戦闘があったところと、なかったところで全然違うのかな?

 物流センター前では、職員さんと警備員さんも出てきている。


「ハルカ様、緊急時ですのでポーションと非常食もお渡しします」


「ここにあった物資でクーデター派の退治に役立ててください」


「常闇獣のヨダレを追加でお渡しします。今後の尋問でも、お役に立てればと……」


 たくさんの追加物資はありがたいけどさ。

 追加のヨダレ、二十本は多くない?


「こんなにたくさんありがとうございます! 尋問は仕方なくやっただけで私の仕事じゃないんですけどね」


 もちろん退治も私の仕事じゃないよ。

 物資をありがたく受け取りながら、無限収納に入れた。


「ふぅ……このギルマス、まだ少しだけ臭くて濡れていて不快だな」


 ヤクメーさんが何か言ってるけど、よく聞こえなかった。


「お世話になりました! それじゃ行ってきます!」


 職員さんと警備員さんが手を振って見送ってくれる。

 そして進みだしてすぐに気がついた。


「クーデターは何も解決していないよね?」


「そうだね」


 マチルダが周囲を警戒しながら答えた。


「明るくなった分、こっちも相手を見つけやすいけど、相手もこっちを見つけやすくなっている。気を抜くんじゃないよ」


「わかった。それと、飛空艇発着場の前は通らない方がいいかな?」


「念のためにそうした方がいいかもね」


 歩きながら話し合って、来たときとは別ルートで戻ることになった。

 移動の途中で気づいたのは、思ったよりも街中は戦闘の余波みたいなものは見えない。

 この綺麗な街並みが無事で、みんなの住んでいる家が壊れていないのは心から安心した。


 そうそう、マチルダの案内で戻っているとき、キメラと遭遇した。

 王都の綺麗な街並みをでっかいキメラが徘徊していて、クーデター派の本気度を知ったよ。

 たださ、みんな勘違いしているけど、私を捕まえても殺しても、何も意味ないからね?

 それだけは声を大にして言いたい。

 大きい声を本当に出しちゃうと見つかるから、言えないけどね。


 それからクーデター派のみなさん、ご愁傷様です。

 キメラはポポが瞬殺していたよ。

 ペチッて叩いて、キメラが泣きながら逃げていってた。

 あんな大きいモンスターが涙を流すんだぁ……って感心したよ。


 街中では誰も歩いていなかった。敵の衛兵も全く見なかった。

 そして私たちは大きなトラブルもなく、病院に戻ってきた。


 ひとつ不安があるとしたら、病院の人たちもムーホン・オッコースの嘘声明を信じていることかな。

 ここは、ライサンさんを起こして証人になってもらうしかないかな。


「ヤクメーさん、ライサンさんを起こそうよ」


「……起こしていいのか?」


「嘘声明を信じて、私を疑う人がいたら厄介じゃない?」


「なるほど、ギルマスに、証人になってもらうんだね?」


「そうそう」


 私たちはみんなでジャンケンをした。

 この世界、なんとジャンケンがあるんだよ。

 ジャンケンをした理由は、誰もライサンさんを起こす役目をやりたくなかったから。


 ……結果、私が負けたよ。


 ライサンさんを地面に降ろしてもらい、触りたくないけどつんつんした。

 ……起きないな。

 ふと、ヨダレを使って起こすか頭をよぎったけどやめた。

 またデビなんとかって言われたくない。

 もったいないけど、ポーションを取り出して飲ませた。


 ヨダレ、頭にもかかったのかな?

 頭を抱えて飲ませるときに臭かったよ。

 飲ませたあと、地面に戻してつんつんしたらやっと起きてくれた。


「……ここはどこだ?」


 寝起きの所作が落ち着いている。


「魔王国国立中央病院の前だよ」


「ひぃぃぃ! ハルカ!!」


 そうでもなかった。


「そうだよ。私の言うことを聞かないと、またヨダレの刑だよ」


「わ、わかった! なんでも言うことを聞く!」


「身の程をわきまえてるねー。これから病院に入る。ここまでオーケー?」


「わかった。続きを言え!」


「病院の中にいる人が嘘の声明で勘違いしているかもだから、そんな人がいたら、ライサンさんが弁明してね?」


「くっ……わかった……」


 これで準備万端だ。

 シャガムトとフンバルト、待っていてね。

 もうすぐ呪熱病を治してあげるからね。

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