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異世界 満喫トラベラー ~のんびり旅行するつもりが色々巻き込まれました~  作者: みみたん


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第29話 ハルカは悪魔

 テレビで私がクーデター派みたいに言われて、みんなに疑いの目で見られている。

 みんな騙されないでよ!


「小娘よ。お前の嘘など誰も信じぬ」


 勝ち誇った顔が憎たらしい。

 ライサンさんぶっ殺すよとか思っちゃうよ?

 あんたの顔なんて、さっきのムーホンと同じ悪人顔じゃん!


「あんたが七時とか言う方が怪しいじゃん! なんで国政のことを冒険者ギルドが把握してんの!」


 ヤクメーさんならわかるよね!


「ヤクメーさん! こんなの嘘だよ! 信じてくれるよね!」


 ヤクメーさんは考えごとをしていた。


「……ん? ああ、そうだね」


 あんまりこっちの話が入ってないみたい……。

 誰か目を覚ましてよ!!


 ガチャッ!


 このタイミング扉が開いて、ビビーたちが戻ってきた。


「おーい! 例のブツを手に入れたぞ!」


 それは朗報だけど、こっちはこっちで大変なんだ。


「いやぁ……ラベルが貼ってあってよかったぜ」


 なんか液体が入った瓶を持っている。

 そこ真っ直ぐ行くとつまずくよ?


「あっ!」


 やっぱりライサンさんにつまづいた。

 ポトッ……パリーン。

 瓶が割れて液体がライサンさんにかかった。


「なんだこれはぁ! くっさぁぁぁぁーー!!!」


 この距離でもわかる。

 リク君の口臭よりやばい!


「服に臭いがついた! 縄をほどいてくれぇ!」


 あまりの臭さに、みんなさらに離れた。


「縄をほどいてほしかったら真実を話してよ!」


 私は遠くからライサンさんに言った。


「言うから助けてくれー!」


「ああ!? 割れたのが薬の素材じゃないのかい!」


 あー!マチルダの言う通りじゃん!

 ビビー何してくれてんの!

 でも私の誤解も解きたい!

 もーやばい! 混乱してきた……。


 ライサンさんは地面を転げ回りながら叫んでいるし。


「た、助けてくれぇ!! もう死んでしまう!!」


 みんな距離を取ったまま、誰も近づこうとしない。

 ビビーたちが鼻を押さえながらこっちに来た。


「素材どうすんのよ!」


「す、すまねぇ。でもほらよ」


「同じの!! 本当に良かったぁ……」


 ビビーは同じ瓶をあと二本持っていた。

 慎重に、慎重に受け取って……。

 無限収納に入れた!

 これだ安心だよ……。


 どうなることかと思ったけど、一つは解決した……。

 次は私の誤解を解かないと!


「縄をほどけぇぇ!! 鼻が腐る!!」


「じゃあ話して。知っていることを! 何もかも!」


「ぐっ……! 話す! 話すから早く助けてくれぇ!!」


 ライサンさんは涙目で叫んだ。

 これもう私の勝ち筋しか見えないやつ。

 ビビーありがとね。

 全部解決したら、ご飯奢ってあげるよ。


 でも、この臭いのままじゃ話を聞くのも大変。


「この臭い、私たちまで辛いね。何か方法ないかな?」


「み、水でもぶっかけりゃ薄まるんじゃないか?」


 ビビーそれいいね!


「水なら倉庫に、非常用の飲料水があります」


 いいねいいね。


「じゃあ、それをライサンさんにかけよ!」


「た、たしかにいいですね」


 職員さんもコクコク頷いている。


「このままだと臭すぎるから、少し薄めよう!」


 急いで職員さんが倉庫から飲料水を持ってきてくれた。

 そのままライサンさんに遠慮なく水をぶっかけている。

 相当臭いもんね。気持ちはわかるよ。


「まだかなり臭いけど、マシになったね」


「お前らはそうかもしれんが、俺は幾分マシになった程度だぞ! もっと水を!」


 ライサンさんがびしょ濡れになり、臭いが薄くなった。

 良かった……。

 実は私がリバースしそうだったよ。


「おお……これなら近づける」


 みんなも少しずつ距離を縮める。


「もっと水で薄めたいなら、質問に答えてからね」


「そんなことを言わずに、もっと水をたのむ!」


 ライサンさんは直接ヨダレがかかったから辛そうだけど……。

 ここで手を緩めるわけにはいかないよ。


「質問に答えてからだよ。もし嘘をついたらまた常闇獣のヨダレをかけるからね」


「なっ!?」


 ライサンさんが口をぱくぱくさせている。

 確かにこの臭さはとんでもないね。


「わ、わかった! 何でも話す!」


「じゃあ、まずあたしから聞かせてもらおうか」


 マチルダ……私を疑ってたのに質問は冷静にするんだね。


「まって! マチルダは、私が鑑定を使えるのは知ってるよね?」


「ああ……人にまで使える変な鑑定だろ? まさか……」


「うん、嘘をついてないか鑑定で確認しながら尋問したい」


「……意外と冷静なんだね」


「もう私の勝ちは確定だからね。落ち着いてきたよ」


 マチルダは頷いて、ライサンさんに向き直った。


「さっき、あんたは呪熱病のことを知っていたね。なんで知ってるんだい?」


 そうだ。

 私がパニックになって質問を忘れてたけど、それ知りたい。


「わしが小娘に呪熱病をかけようとしたからだ」


「でも、ハルカにはかかってないじゃないか?」


「そ、そうだ。小娘には呪いがかからなかった。なぜかはわからんのだ!」


 ライサンさんが私を睨みつけてきた。


「その代わり、小娘の部下にかかったようだがな」


「私に部下なんていないよ?」


「お前と一緒にいた男たちだ」


「ああ……」


 シャガムトとフンバルトのことね。


「待って、ここで鑑定するね」


【鑑定】


『オーエ・ライサン 百二十歳

 嘘はついていない』


 良かった。

 鑑定で嘘がわかる。


「じゃあ、次は僕から聞いてもいいかな?」


 次はヤクメーさんね。


「なぜギルドマスターが、この場所にいたんだ?」


 確かに!

 それも聞きたい!


「小娘が呪熱病にかかれば、魔王が薬の素材を取りにここへ来ると予想していたのだ」


「魔王様をここへ誘い出すつもりだったのかい?」


 マチルダが呆れている。


「そうだ。小娘のために、魔王がここに来ると思っていたが予想が外れた!」


 魔王さんがそんなことするかな?

 うーん、するかも。


「しかし、勇者と小娘が来るとは思わなかったのだ!」


「……僕が来ることも想定外だったのか」


「勇者が魔王国にいるなんて誰が予想できる!」


 ライサンさんはジタバタしている。

 相当悔しかったんだね。


「わしが勇者や魔王に勝てるわけないだろう!」


「……その割に、戦う前は強気だったじゃん」


「……魔王が来た場合は、自爆して道連れにする予定だった」


「自爆!?」


 今自爆されたらやばくない?

 マチルダが慌てて質問した。


「勇者に負けて、なんで自爆しなかったんだい?」


「自爆のための魔道具が、なぜか発動しなかったのだ!」


「じゃあ、今もその魔道具を使って自爆する可能性はあるのかい?」


 マチルダがライサンさんをじっと見る。


「ない!」


「本当かい?」


「勇者には勝てんと思っていたが、やはり勝てなかった。せめて魔道具を発動させようとしたが、結果このザマだ」


 ライサンさんは苦々しい顔をしている。


「今も発動しない。俺は嘘をついていない」


「……そうかい」


【鑑定】


『オーエ・ライサン 百二十歳

 まだ嘘はついていない』


 みんなホッとしている。

 私も心からホッとしたよ。


「じゃあ、次は私から聞いていい?」


 今度は私が質問する番だ。


「なんでクーデターをしようとしたの?」


「そんなもの決まっておるわ!」


 ライサンさんの表情が変わった。


「現魔王は軟弱者だ!」


「……どういうこと?」


「魔族とは本来、強くあるべきなのだ。戦争で人間の国を滅ぼし、魔族がこの世界の頂点に立たねばならん。それと貴族性を廃止したのが現魔王だからだ!」


 ライサンさんが必死に言葉を続ける。


「強い魔族の復活には貴族が必要なのだ! それを和平だなんだと……。魔王だけは、どうしても許せん!」


「……そんなくだらない理由で」


 魔王さんはまともじゃん

 逆にこの人たちは自分たちの利権欲しさと戦争をしたいからクーデターって……。


「なんで私をクーデターの首謀者にしようとしたの?」


「ちょうど魔王と勇者の戦いがあったからだ! 小娘がいても、いなくても、クーデターは起こす予定だった」


「じゃあ、あの声明はぎりぎりになって私を追加したの?」


「そうだ」


「私がいなくて勇者さんが勝った場合は?」


「勇者を始末する予定だった!」


「逆に魔王さんが勝っていたら?」


「魔王を始末するだけだった!」


「えぇ……」


 どっちが勝っても殺すの?


「だが、お前が現れたことでシナリオが狂ったんだ!」


「私のせい!?」


「お前の登場で、予定通りにはいかなくなったのだ!」


 ライサンさんは私を睨む。


「そこで、お前をクーデターの首謀者に仕立て上げる案が出た」


「それで私をスパイってことにしたの?」


「そういうことだ! もう何もかも話したぞ!」


 なるほど……。

 私が何もしてないのに、勝手に話を作られていたわけね。


「一応鑑定するね」


【鑑定】


『オーエ・ライサン 百二十歳

 まだ嘘はついていない』


 まだ聞きたいことはあるけど、そろそろ水をかけないとかわいそうかな。


「嘘はついていないだろう! 水をかけるか縄をほどいてくれ!」


「ダ、ダメだ!」


 ビビーが割って入った。


「俺の質問にも答えろ!」


「まだあるのか!」


 ライサンさんが怒鳴る。


「もう全部答えたはずだ!」


 ビビーが少しびびっているけど、睨み返している。


「フォルティスの遺跡でやってた、キメラの研究みたいなのにも、あんたらが関係しているのか?」


 ビビーにしてはいい質問じゃん!


「……その件は……知らん!!」


 ん?

 ライサンさんが焦っているように見える。


「本当に知らないの? 嘘ついたら鼻のとこにヨダレ塗るよ?」


「ハルカ……あんた鬼だよ……」


 マチルダが驚愕として、私から一歩離れた。

 確かに鬼と言われても仕方ないのかも。


「勘弁してくれ……その件は知らんのだ」


 ライサンさん必死すぎる。

 怪しい。


【鑑定】


『オーエ・ライサン 百二十歳

 嘘をついている』


「ライサンさん……嘘をついたね」


「本当だ! 信じてくれ!!」


 収納から取り出した常闇獣のヨダレをライサンさんに突きつける。

 私だってやりたくなかったよ。


「私、スキルで嘘をついているかわかるんだよね」


「そんなスキルがあってたまるか!!」


 ライサンさんがジタバタしている。

 一歩、一歩と常闇獣のヨダレが入った瓶を見せながらライサンさんに近づいた。


「や、やめろ……もう殺してくれぇぇぇ!!!」


「殺さない。これを鼻に塗るだけだよ……」


 ライサンさんがとうとう涙をぽろぽろと流し始めちゃったよ。


「言う! 本当のことを言うからひっこめてくれ!!!」


「それじゃ早く言ってくれる?」


 やりたくないけど、必死にニヤニヤとしたよ。

 喜んでないからね?

 顔を作ってるだけだからね?


「ひぃぃぃぃ! フォ、フォルティスの件も我々が関与している!!」


 無言でまた一歩近づいた。


「た、対勇者、対魔王の兵器として、さらには戦争用の兵器としてもキメラを開発していたぁ!!!!」


 ビビーが言い当てたよ。

 二回ご飯をご馳走しなきゃかも。


「も、もういいだろう!」


 ライサンさんが叫んだ。

 すごく暴れているし、本当に嫌なんだね。


「嘘をついたのは謝る! それだけはやめてくれぇ!!」


 私がライサンさんの鼻に瓶を近づけたら……。

 そのままライサンさんは、ぐったりと力を失った。


「ええ?」


 ライサンさんが動かない。


「……気絶した?」


 誰も返事をしてくれない。

 冗談だよ?

 みんな本気にしないでね?


「…………あんたが悪魔に見えてきたよ」


 マチルダが声を振り絞った。

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