第28話 クーデター派の声明
今日と明日もアップすることにしました。
今後、11:00~12:00の時間帯で、来週からは月、水、金、土の週4アップとさせていただきます。
たくさんの方に読んでいただきたいのですが、まだそこまで魅力的な小説を書けていないと自分を戒めて頑張ります。
常闇獣のヨダレを一緒に取りに行くか、お任せしていいか悩む。
マチルダに、私の判断でいいって言われるとは……。
悩みながら周囲を見ると、あるものが目に留まった。
そうだ、もう一つやりたいことがあった。
「……職員さん、取りに行くのをお願いしてもいいですか?」
「もちろんです! ハルカ様!」
「ありがとうございます! 私たちの方からは、ビビーを行かせますね」
「な、なんで俺が?」
「ビビーは今のところ何もしてないじゃん? 職員さんの護衛くらいやりなよ」
ビビーがポポを指さした。
「お、俺がいないとポポ様の通訳を誰がやるんだよ!」
私より気持ちが通じてるとでも言いたいわけ?
これは私を舐めすぎだわ。
「ポポの気持ちは私がわかるから大丈夫! 時間がないから行ってきて」
ビビーはポポをジッと見ている。
ポポがビビーを見て頷く。
くっ……かなりジェラシー!
「まったく……わかったよ。ポポ様も行けって言ってるしな……」
ほ、ほんとに意思疎通できてる!?
嘘だと言ってよポポ!
ビビーはぶつぶつ言いながら女性職員さんと部屋を出て行った。
さて、私は私でこの時間を有意義に使おう。
私はポポに縛られているライサンさんを見た。
「ライサンさん、いろいろ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何も答えんぞ。小娘」
ギルドの時と同一人物とは思えない。
拷問とかしたくないし、そもそも拷問のやり方なんて知らないし。
どうしたら話してもらえるかな。
「みなさーん。こっちに集合! ポポもライサンさんを降ろしてから来て!」
みんなと部屋の反対側に行く。
「どうしたんだハルカ?」
ヤクメーさんが移動しながら聞いてきた。
「あの人の口を割りたいんだけど、誰かいい案ない?」
「なるほどね。痛めつけるのは有りなのかい?」
マチルダの顔が少し怖い。
「わ、私は平和的にやりたい……かな。だからそんなのは無しで」
「ふーむ、そうなのかい」
暴力的なのとか、血を見るのとか嫌なんだよね。
職員さんが口を挟む。
「えっと……ハルカ様は、あの縛られているご老人から何かを聞き出したいんですね?」
「そうそう。何かいい案を思いついたら、よろしくお願いします」
みんな腕を組んで考え込んだり、小声で話し合ったりしている。
そこでポポがおずおずと前足をあげた。
「クルルゥ」
「はい、ポポ。案があるならどうぞ」
ポポがジェスチャーを始めた。
ふむふむ。顔のところに、靄を出して、脅したらどうか……?
ポポめっちゃジェスチャー上手だね!
でもね……。
「うーん、それ最終手段にしよ? それやると気を失う可能性ない?」
ポポがハッとした顔をしてガックリと肩を落とした。
多分、今日見せてくれた魔法のことだと思うけどね。
強烈すぎて気絶させたら意味ないんだ。
あと、やっぱビビーの通訳いらないじゃん!
私とポポの絆を舐めんなよ!
「ポ、ポポ君が何て言ったのかわかったのかい?」
ヤクメーさんが驚いて聞いてきた。
「わかるに決まってるじゃないですか! ポポは私の親友ですよ!」
ドヤァ!
「……すごいなハルカは」
それからはみんな無言になった。
何も思いつかないのかなぁ。
私? 私は何も思いつかないよ。
そこで職員さんの一人が真剣な表情で手をあげた。
「はい、そこの職員さん。どうぞ」
「ハルカ様……人は褒められると心が緩むと聞いたことがあります」
ふむふむ、そうかもしれない。
「なので、あのご老人を全力で褒めてみるのはどうでしょう!」
全員、キョトンとしている。
私はやる価値ないと思うけど……。
「この状況で褒めるのかい?」
マチルダの質問に職員さんは頷く。
顔を見ると本気っぽいんだけど?
「はい! 褒められたら嬉しくて、つい喋っちゃうかもしれません!」
「……他に案も思いつかないし、試してみるかい?」
マチルダが消極的に賛成みたい。
賛成というか、マチルダも思いつかないだけというか。
「……まあ、やるだけやってみよっか」
全員でライサンを囲む。
ライサンさんの表情からは何も読み取れない。
「ライサンさん、今日の黒い炎……すごく迫力ありましたよ! それに本当は近眼じゃなくて良かったです!」
これが私の全力だ。
「そうだね。あたし、ちょっと感動したよ」
マチルダは乗っかるタイプね。
「杖の振り方も見事だった。さすがギルドマスターだ」
ヤクメーさん、戦った本人だから真実味があるよ!
「クルルゥ♪」
ポポもお手伝いありがと!
「どこのどなたか存じませんが、ダンディで素敵です!」
職員さん、それはちょっとマイナス入ってるんじゃない?
ギルマスってそこそこ有名なんじゃないの?
さて、どうかな……。
そこからはしばらく沈黙が続いた。
「……馬鹿か貴様ら」
ライサンさんが発した言葉に同意できてしまう。
そうですよねぇぇぇぇぇ!
「えっ!? 褒められて嬉しくないんですか!? そんな……!」
なんで職員さんが驚愕してんの?
冷静に考えたら普通に無理でしょこれ!
「職員さん、さすがこれは……」
乗っかっておいてこんなこと言うのはごめんだけどさ!
「うぅ……すみません……」
完全失敗。完全敗北。
こっちが恥ずかしくなってきたよ!
「お前ら、今は何時だ?」
ん?ライサンさんから聞いてきた。
「予定では七時に声明を出すはずだ」
声明?なんのこと?
「この部屋に魔導水晶投影機はないのか?」
ライサンさんの言っている意味がわからない。
「もうすぐ七時です。魔導水晶投影機ならこの隣の部屋の倉庫に確か……」
職員さんが答えてくれた。
「それを今すぐ持ってこい。おもしろいものを見せてやる」
ライサンさんが勝ち誇った顔をしている。
なんだろう、すごく嫌な予感がする。
職員さん数人で倉庫から魔導水晶投影機を持ってきた。
コンセント?にさしてスイッチを入れている。
これテレビじゃん。
画面の先には悪人顔の人が映っている。
――おほん! 我は魔王国元宰相、ムーホン・オッコースである。
――本日は、魔王国の安寧を守るため、国民諸君に重大な通達を行う。
――まず第一に、本日未明、我らは救国軍事評議会を結成した。
――魔王様は急病により床に伏しておられ、国政を執ることが叶わぬ状況である。
――よって、混乱を避けるため、やむなく我が国政へ復帰し、暫定的に統治を代行する。
――第二に、国民諸君に警告せねばならぬ。
――現在、我が国の国賓を騙り潜入したハイエルフのスパイ、ハルカが一部の愚かな者どもを煽動し、逆賊として王都を襲撃しておる。
――この反乱は魔王国の秩序を揺るがす重大な犯罪であり、救国軍事評議会はすでに衛兵隊を動員し、まもなくハルカを拘束する運びとなっておる。
――ついては、国民諸君は決して外に出てはならぬ。
――王都の治安が回復するまで、各自の住居にて待機せよ。
――我らが事態を収束させ次第、改めて通達を行う。
――以上だ。
――魔王国の未来は、諸君の冷静な行動にかかっておる。
――救国軍事評議会は、必ずやこの国を守り抜く。
画面がプツンと切れた。
ムーホン・オッコース……まんまじゃん!
それよりもさ!
「……ちょ、ちょっと! 私こんなの知らない! なにこれ!!!!」
本当にひどすぎる!!
私をこんなデタラメに巻き込む理由はなんなのよ!!
みんなこんなの信じないよね!
「わーーーっはっはっは! お前、スパイだったのか!」
ライサンが勝ち誇った顔で私を見ている。
この人が七時に魔導水晶投影機を見ろって言ったよね。
怪しいのはこの人じゃん!!!
「こんな嘘をついて何になるの! みんなも信じないよね!?」
私は周囲を見た。
みんなは……。
「ハ、ハルカ……」
そんな信じられないものを見るような目で見ないでよマチルダ!
「え……嘘でしょ! マチルダ、私を信じてよ!!!」
「ハ、ハルカ様……」
職員の人たちも後ずさってる……。
本当にやめて! なんで信じてくれないの!
「ハルカ……お前……」
いやいや、パルは楽しんでるね……。
ずっと一緒なんだから悪ノリしないでほしい。
みんな騙されないでよ!
パル、冗談言わないで早く誤解をといて!!
「どうした小娘! お前がクーデターの首謀者だからそんなに焦っているんだな!」
そんな酷い話ないよ!
誰か助けてよ!




