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異世界 満喫トラベラー ~のんびり旅行するつもりが色々巻き込まれました~  作者: みみたん


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第25話 魔王国国立中央病院

せっかくの連休が雨で台無しの地域にいるのでアップします。

明日もアップします。みなさまにも被害がないことを祈りながら……。

 ようやく、目的地の魔王国国立中央病院が見えてきた。

 深夜ということもあって、建物の中から漏れてくる明かりは少ない。

 必要最低限の照明だけがついている気がする。


「ちょっとストップ」


 マチルダがみんなを止める。


「どうしたの?」


 もう病院はすぐそこなのに。


「この病院の中にクーデター派が潜んでいないとは限らないだろ?」


「……それは考えてなかったよ」


「これだけの病院だよ? 重要な施設として狙われてもおかしくないさ」


「……なるほど」


 私は病院の中を覗いた。

 暗いし、物音はしていない。


「どうしたらいいかな?」


「俺が見に行こう」


 シンパが手をあげた。


「それじゃ俺も行くぜ」


 キーチョも前に出てきた。


「安全かどうかを確認したらすぐ戻る。みんなは物陰に隠れていてくれ」


 二人は病院の入口へ向かった。

 私たちは少し離れた物陰で、二人の様子を見守っている。

 そのまま、しばらく待っていると、病院の明かりが一斉についた。

 少しすると、シンパとキーチョの声が響いた。


「来るな!ここは危険だー!」


「て、敵がここに潜んでい――」


 そこまで聞こえたところで、二人の声が途切れた。

 辺りが静かになる。


「どうしよう……」


 私が呟くと、みんなも考え込んだ。

 しばらくして、マチルダが口を開いた。


「ここは一旦、二手に分かれないかい?」


「どういうこと?」


「シンパとキーチョを助ける組、シャガムトたちを他の病院に連れていく組さ」


「で、でもそれだと……」


 可愛いもの恐怖症の人が言いよどむ。

 そして、ちらちらとポポを見る。


「何か問題でもあるのかい?」


 マチルダが尋ねる。

 可愛いもの恐怖症の人は、少し迷ったあと、口を開いた。


「ポポ様と同じ組の方が安全じゃねぇか」


 私はため息をついた。

 マチルダも同じようにため息をつく。


「そんなこと言ってる場合?」


「ここにきて自分の安全を心配するのかい」


 可愛いもの恐怖症の人は、気まずそうに視線を逸らした。

 そんな中、シャガムトが声を上げる。


「お、俺たちのことはここで置いて、あいつらを助けてやってくれ」


「団長は黙っててくれ! 俺が助けに行く組に入るぞ!」


 マーチョがすぐさま声を上げる。

 すると、私がまだ名前を知らない人が声をあげた。


「お前は馬鹿だから仕切るな!」


 その言葉に、マーチョがたじろぐ。

 ハラーがマーチョに声をかけた。


「遠隔魔法があるだろ! それで捕まった二人と連絡をとれよ!」


「そ、そうか。なんて聞いたらいい?」


 マーチョの発言に、他の団員たちが怒り出した。


「お前なぁ……そんなことも考えられねぇのかよ!」


「まあまあ。二人が無事なのかと、わかる範囲でどんな状況かを聞いたら?」


 このままだと喧嘩になりそうだし、私がアドバイスをした。


「わ、わかった」


 マーチョが目を閉じる。

 遠隔魔法を使って、二人へ呼びかけているらしい。

 しばらくすると、マーチョが話し始めた。


「おい、無事なのか? 今どんな状況だ?」


 マーチョは黙ったまま頷いている。

 向こうから返事が返ってきているみたい。


「ふむふむ、縄で縛られて目隠しされて何もわからない?」


 それを聞いて、マチルダが首を横にふった。


「結局何もわからないのかい。でも二人は無事なんだね」


 詳しいことはわからなかったけど、二人が生きていることだけは確認できた。

 なら助けに行く方法を考えないとと思っていたら、ポポが鳴いた。


「クルル?」


 可愛いもの恐怖症の人が、恐る恐るポポを見る。


「ポ、ポポ様がまた助けてくれるのか?」


 私はポポを真剣に見つめた。

 ポポはのほほんとしている。

 それからポポが頷いた。

 ポポはそのまま、とことこと病院の中へ歩いて行く。

 私はその背中を見送るしかなかった。

 ポポが中に入って割とすぐに病院の中から叫び声が響いてきた。


「う、うわわああああぁぁぁ!」


「なんだこの可愛いドラゴンは!」


「このドラゴン可愛いのに怖いぞ!」


 ドサッ……バタバタ……と音だけが聞こえて、また叫び声があがる。

 私たちは病院の入口を見つめたまま、その様子を見守る。

 そして少しずつ騒がしい音が減っていった。

 最後に大きな物音が響いて、何も聞こえなくなった。

 病院の入口からポポが姿を現す。

 その後ろには、目隠しをされ、手も縛られているシンパとキーチョがいた。


「つ、次はどこに連れて行く気だ?」


「お、俺たちは本当に何も知らないんだ」


 二人は、自分が助けられたことにまだ気づいていない。

 シンパとキーチョの顔を見た瞬間、膝から力が抜けそうになった。


「よかった……」


 私はポポのところへ近づく。


「無理はしてない?こんなことさせてごめんね」


「クルルゥ♪」


 ポポは嬉しそうに鳴いた。

 マチルダはそんなポポを見て、頬をひくつかせている。


「ほ、本当にすごい子なんだね」


 私たちはシンパとキーチョの目隠しと縄を解いた。

 二人は自由になった自分の手を見て、不思議そうな顔をする。


「……あれ? 俺たち助けられたのか?」


 可愛いもの恐怖症の人が、ポポを見ながら答えた。


「ポポ様が、お前らのことをほうっておけないって……」


「ポポがそんなこと言った?」


 そもそも、ポポは「クルル」としか言っていない。

 私を差し置いて、ポポと会話をできることに納得がいかないんだけど?


「ポポ様ぁ!」


「あんたは俺たちの英雄だぁ!」


「一生ついてくぜ!」


 モフモフ団がポポを取り囲んでいく。

 ポポはみんなにあがめられている。

 そんな状況の中でもポポはポポだった。


「クワーフゥ」


 ポポはあくびをした。

 全然興味ないみたいだね。


「と、とにかく病院に入っても大丈夫そうだ。ぐずぐずしてないで行くよ!」


 マチルダが我に返り、みんなに声をかけた。

 そうだよ。こんなところで立ち止まっていても仕方ない。


「そうだよ!シャガムトとフンバルトも……よく頑張ったね」


「ああ、すまねぇな。あとで礼はたっぷりする」


 こうして、私たちは病院の中へ入っていった。

 病院の中は、外から見たときよりもずっと明るかった。

 そして、廊下に入ったところで、私たちはすごいものを見た。


 廊下には、大勢の兵士が倒れていたんだ。

 武器を持った集団が綺麗に一列に並んで、五十人ほどが伸びている。

 その兵士たちを、医師や看護師たちが縄で縛っていた。

 私は近くにいた医師へ声をかけた。


「みなさん無事ですか? この人たちはクーデターの連中ですか?」


「クーデター? それはわかりませんが、魔王軍の兵士が突然やってきて、病院を占拠されていたんです」


 医師が声を潜める。


「逆らったら何をされるかわからなくて。仕方なく、言われるままに動いてました」


 そこへ、私の後ろにいる可愛いドラゴンがやってきた。

 ポポは病院を占拠していたクーデター派を倒して回ったらしい。

 その結果が、目の前に並んでいる五十人ほどの兵士たちだった。

 医師や看護師たちは、話し終えるとポポにお礼を言っていた。


 そんなことよりもシャガムトとフンバルトを……。

 私が声をかけようとしたとき――。


「ハ、ハルカ様?」


 看護師が私を見つめる。

 周囲にもざわめきが広がっていく。


「こんなときにアレですけど、後でサインをもらえませんか?」


 病院の中で、ちょっとした騒ぎが起こる。

 看護師だけじゃなくて、医師の一部もサイン!サイン!って言っている。

 こんな非常事態で、ここの人たちは何を言ってるの!


「そ、それよりも病人がいるんです! 診てもらえませんか!」


 それを聞き、医師たちが看護師に注意をしている。

 医師も一部の人はサインって言ってたよね?

 一番サインサインって言っていた医師が私に真面目な顔を作って返事をしてきた。


「そうでしたか、症状は?」


 医師も看護師も真剣な顔になった。

 この人たち、みんな俳優か何かかな?

 私はシャガムトとフンバルトを指す。


「この二人が呪熱病なんです」


「それは大変だ!」


 医師が声を上げる。

 看護師が慌てて動き出した。


「オ、オペの準備をします!」


 医師たちが一斉にずっこけた。


「落ち着きなさい! 呪熱病なら薬で治るじゃないかね!」


「何年看護師をやっているんだ」


「まったく我が病院の看護師は、ぶつぶつ……」


 呪熱病は手術をするような病気ではないらしい。

 医師が気を取り直して、私たちを見る。


「とにかくだ、病人はこちらに任せてください」


 看護師たちが移動するベッドを持ってくる。

 シャガムトとフンバルトをベッドに寝かせると、そのまま病室へ運んでいった。

 ようやく、ちゃんと診てもらえる。

 本当にホッとしたよ。


「薬で治るんですね?」


 医師が言いにくそうな顔をした。


「実はそれなんだが……」


 別の医師が続ける。


「呪熱病の薬は……」


 さらに別の医師が続ける。


「材料が切れていて……」


 また別の医師が発言を取る。


「病院に……」


 最初の医師が締めた。


「ないんですよね……」


 こいつらうざい!

 普通に一人が話してよ!

 今の私たちに余裕はないんだよ!


「こっちも焦っているので、代表者の方が話してくれませんか?」


「す、すまない。次からはそうします」


 医師が申し訳なさそうに頭を下げる。

 私は一度深呼吸した。


「……で、その材料ってどうやったら手に入りますか?」


 医師が周囲を見回す。


「……誰かわかるかね?」


 その問いかけに、少し離れたところにいた病院の事務員が、おずおずと手を挙げた。


「た、たしか……魔王国中央物流センターに在庫があったかと……」


 医師たちは顔を見合わせる。


「ふーむ……」


 難しい顔をしている。


「どうしたんですか?」


「いや実はね、今クーデターってハルカ様が言ったでしょう?」


「そうですね」


「もしそれが本当なら、そういう要所は確実にクーデター派が押さえてるだろうなと思いまして……」


「な、なるほど」


 魔王国中央物流センター。

 そこへ行けば薬の材料が手に入る。

 でも、今はクーデターの真っ最中。

 重要な物流拠点なら、クーデター派が押さえている可能性は高い。

 どうするべきか。

 私は腕を組んで考えた。

 そして、みんなに声をかけた。


「みんな集まって」


 私の声に、マチルダとモフモフ団たちが集まってくる。

 みんなで円陣を組んで、私は一人一人の顔を見た。


 今から話すことは、とても重要なことだ。

 私は真剣な表情をしていた。

 モフモフ団たちも緊張した様子で私を見る。

 そして、私は口を開いた。


「実は私……」


 みんなが息を呑む。

 何か重大なことを言われると思っているようだ。

 私は少し間を置いてから、遠い目をした。


「方向音痴なんだ」


 全員がずっこけた。

 モフモフ団たちが一斉に声を上げる。


「フォルティスの森で俺たちのことを馬鹿にしてたよな?」


「そうそう、方向音痴って!」


「おめーも人のこと言えねぇじゃねぇか!」


 あちゃー……やっぱり覚えていたよね。

 今こそ発動だ!私のスルースキル!


「落ち着いて、今はそんなことを言っている場合じゃないわ!」


 モフモフ団たちは納得がいっていない顔をしている。


「そ、そうだけどよ……」


「なんか腑に落ちない」


「悔しいがそうだな……いや、そうなのか?」


 そうそう、今は言い争っている場合じゃないよ。


「そこで……誰か案内役としてついてきて」


 マチルダが手を挙げた。


「あたしが行くよ」


 可愛いもの恐怖症の人もおずおずと手を挙げる。


「お、俺も行くよ……俺、俊足とスタミナ倍増のスキルあるから……」


 まさか、このビビりの人が来るとは思わなかったよ。


「ありがと、これで決まりかな?」


「ああ、そうだね。残りの連中はどうするんだい?」


 キーチョが倒れている兵士たちを見る。


「俺たちはこの伸びてる兵士どもを縛りあげたあと、団長たちに付き添っておく」


「わかった。それじゃ急ぎましょ」


「そうだね。物流センターならあたしが知ってる。ついてきてくれ」


 こうして、私はポポ、マチルダ、可愛いもの恐怖症の人と一緒に、魔王国中央物流センターへ向かうことになった。


 そして、少し離れたところで、パルが私たちを見て感心していた。


「配信の撮れ高がすごい」

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