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異世界 満喫トラベラー ~のんびり旅行するつもりが色々巻き込まれました~  作者: みみたん


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第22話 王都の異変

本当に申し訳ありません。

今日は忙しくて、同じ話を続けてアップしていたことに気づきませんでした。

正しい22話に差し替えました。

 王都に到着した私たちは、すでに真っ暗になった街の中を魔王城へ向かっていた。


「マチルダ、本当にありがとう」


「何がだい?」


「これ、今回の仕事とは違うじゃん」


「ああ、そんなことかい。困ったときはお互い様さ」


「でも一日中御者をしてくれて、疲れてるよね」


「なに言ってんのさ、ハルカだって御者やってくれたじゃないか」


「私は……シャガムトとフンバルトは友達だからね。マチルダは違うじゃん」


「違わないんだよ。あたしが病気だったとしても、ハルカは同じように行動したはずさ」


「そう……かもしれない」


「あたしだって一緒さ。ハルカが気にすることはないんだ」


「本当に本当にありがとう。いつか埋め合わせするね」


「ふふ、楽しみにしとくよ」


 シャガムトとフンバルトは、馬車の中で横になっている。

 癒しの手で症状はかなり軽くなったけど、病気そのものが治ったわけじゃない。

 できるだけ早く治療しないと。


「……それにしても」


 隣で御者をしているマチルダが、周囲を見回した。


「なんだかいつもより巡回の兵士が多いね」


「そうなの?」


「ああ。あちこちにいるだろ?」


 言われてみれば、確かに多い気がする。

 道には、あちこちに兵士が立っている。

 夜の王都は、歩いたことがなかったから気づかなかった。


「いつもより多いの?」


 マチルダは頷いた。


「そう思うよ。こんなに兵士がうろついてるのを見るのはあたしも初めてだね」


 そんな話をしながら、私たちは魔王城へ向かった。

 そして、ようやく魔王城が見えてくる。


「やっとここまで来た……」


「ああ」


 私は少しホッとした。

 ここまで来れば、とりあえず安心だ。

 シャガムトたちを部屋に運んで、今日は休んでもらおう。

 明日になったら急いで病院に連れて行かなきゃ。

 そんなことを考えていたら――。


「止まれ!」


 城門の前で、門番の兵士に声をかけられた。


「え?」


 馬車を止める。

 兵士がこちらへ近づいてきた。


「何者だ!」


「私ハルカです。旅行から戻ってきたので入れてもらえますか?」


 いつもなら、このまま普通に通してくれる。


「ハ、ハルカ様……?」


 兵士が明らかに狼狽えた。


「はい?」


「少々お待ちください! 確認してまいります!」


「確認?」


 兵士は慌てて城門の奥へ走っていった。


「……なんで?」


「さあねぇ」


 マチルダも不思議そうな顔をしている。


「いつもなら顔パスなんだろ?」


「うん」


 私は首を傾げた。

 別に悪いことをした覚えはない。

 しばらく待っていると、先ほどの兵士が戻ってきた。


「お待たせしました! どうぞ、お入りください!」


「ありがとうございます」


 門が開く。

 私たちはそのまま城内へ入った。


「……あれ、こないだまでと雰囲気が違う」


 城の中にも、いつもより兵士が多い。

 廊下のあちこちに兵士が立っている。

 しかも、誰もが周囲を警戒している。


「何か起きてるのかな」


「分からない。あたしはこんなとこに来るの初めてだよ」


 そうだよね。今そんなことを考えても仕方がない。

 私はシャガムトたちを見る。


「まずは二人を休ませなきゃ」


「ああ」


 私たちはシャガムトとフンバルトがあてがわれている部屋へ向かった。

 廊下を歩く。シャガムトはマチルダに支えられながら歩いている。

 私はフンバルトを支えながらゆっくりと歩いていた。


「歩かせてごめんね。もう少しだから頑張って」


「いや、ここまでしてもらってすまねぇ」


 シャガムトが弱々しく笑う。


「本当にごめんね」


「気にすんなって」


 フンバルトも苦笑した。

 そして、ようやく部屋に到着する。

 扉を開けた。


「ただい――」


「おせぇぞお前ら!」


 いきなり怒鳴られた。


「え?」


 部屋の中には、モフモフニャンコミルキーズの団員たちが揃っていた。


「俺らに黙ってハルカと旅行に行っただろ!」


「お土産はあるんだろうな!」


「俺たちを置いていくとはいい度胸じゃねぇか!」


「いや、みんな落ち着いて!」


 私は慌てて手を振った。


「シャガムトたちは病気なの!」


「は?」


「病気?」


「バチが当たったんだ!」


「仮病じゃねぇだろうな!」


 怒りは収まらない。


「本当なの! ほっとくと死ぬって、お医者さんにも言われたんだよ!」


 私は声を張った。

 全員の動きが止まる。


「……死ぬ?」


「ああ」


 シャガムトが力なく答える。


「だから、今は勘弁してくれ……」


「おい!」


「団長!」


「大丈夫なのか!?」


 今度は全員が一斉にシャガムトたちへ駆け寄った。


「まず寝かせろ!」


「おい、そっち持て!」


「フンバルトもだ!」


 さっきまで怒っていたとは思えないほど、みんなが慌て始める。

 やっと二人をベッドへ寝かせることができた。


「病気は治るのか!?」


「団長が死んだらモフモフニャンコミルキーズはどうなるんだよ!」


「死んだらモフモフハルカミルキーズだろ! でもそれは語呂が悪いんだよ!」


「俺たちはどうすればいいんだ!」


「落ち着いてってば!」


 私は両手を上げた。


「今日はもう夜遅いから、明日ちゃんと病院に連れて行くからね」


「病院か……」


「うん、ちゃんと連れて行くよ。約束する」


「明日には治るんだな?」


「まだ分からないよ」


 私は正直に答える。


「でも、ちゃんと治してもらうようお願いするからね?」


「……分かった」


 団員たちはようやく静かになった。

 私はみんなを見回した。


「じゃあ、みんなも明日忙しいから、早く寝るんだよ」


「おう、ハルカありがとうな」


「落ち着いたら事情も話すから、今日は私も部屋に戻るね。おやすみ」


「おう……」


「悪かったな、ハルカ」


「気にしないで」


 私は笑った。

 そして、マチルダと一緒に部屋を出た。


--


 廊下を歩きながら一息ついた。


「……本当にありがとう、マチルダ」


「いやいや、シャガムトたちの仲間、すごかったね」


 マチルダが苦笑する。


「シャガムトが死ぬかもしれないって分かった途端、あの騒ぎだ」


「最初からだったけどね。お土産は!だって」


 私も苦笑した。


「確かにそうか」


 マチルダが少し笑う。


「馬鹿だけど、仲間思いなんだよ」


「うん、男の馬鹿なところが羨ましいね」


 私は頷いた。

 そしてホッとしたよ。

 シャガムトたちには、ちゃんと心配してくれる仲間がいる。

 あとは病気を治せればいい。


「明日は病院だね」


「ああ」


「ちゃんと治せるといいなぁ」


 そのとき後ろから声をかけられた。


「ハルカ」


 振り返る。


「……魔王さん?」


 廊下の向こうから、魔王さんが歩いてきていた。

 いつもの余裕のある表情じゃない。

 少し険しい顔をしている。


「戻ったか」


「うん。さっき帰ってきました」


「うむ、先ほど帰ってきたことを聞いて来たのだ」


 魔王さんの視線が、私の後ろへ向く。


「して、その者は?」


「冒険者のマチルダです。絶望の丘とかの案内人として契約したんですよ」


 マチルダが無言で会釈をし、魔王さんが頷く。


「ふむ、ハルカ。その者を外して話がしたい」


「何かあったんですか?」


「ちとな、ここでは話せぬ内容なのだ」


「それでは魔王さん、マチルダを私の部屋に案内してもいいですか?」


「わかった。吾輩の部屋で待っておるぞ」


「はい、急ぎますね」


 私はマチルダに頷き、マチルダも困惑していたけど従ってくれた。

 急いで自分の部屋にマチルダを案内したあと、ポポも置いて魔王さんの部屋に向かおうとした。


「クルルッ!」


 ポポがついてきた。


「ポポごめんね。部屋で待っててくれる?」


「クルルル!!」


 首を横に振って言うことを聞いてくれない。


「ああもう! ちゃんとおとなしくしててよ!」


 私は仕方なく、ポポを連れて魔王さんの部屋に向かった。

 魔王さんの部屋の前には大臣さんがいた。


「ハルカ様、魔王様が中でお待ちです」


「ありがとう。入りますね」


 大臣さんがドアを開けてくれて、私は中に入った。

 あとから大臣さんも入ってきた。


「ふむ、ポポも一緒か。……まあよかろう」


 ポポも連れてきてしまってごめんなさい。


「それで、何か急いでるみたいですけど、どうしたんですか?」


「……うむ、まずは座りなさい」


「……あ、すみません。そうですよね」


 私が座ったあと、魔王さんはどう切り出すか悩んでいるみたいだ。


「魔王様?」


 大臣さんが声をかける。


「……うむ、そうだな」


 魔王さんが私に向きなおった。


「まだ確定したわけではない」


「はい?」


「王都で今、少し不穏な動きがある」


「巡回する兵士が増えていると思いましたが、そのことですか?」


「そうだな。気づいておったか」


 魔王さんが大臣さんをチラリと見て、また私を見た。


「反魔王派が動いておる」


 魔王さんが声を押さえて言った。


「反魔王派?」


「最近、奴らの動きが活発になっているのだ」


「それって何かよくないことが起きるんですか?」


「今のところ、大きな動きはないが……」


 魔王さんはそう言ってから、少しだけ間を置いた。


「そうだな。簡単に言うと、国内が戦場になるかもしれん」


「そんな……」


 私は続きを言うことができなかった。


「まだ可能性だけの話だ。しかし、最悪を想定しておかねばならん」


 魔王さんの顔が険しくなった。


「ハルカ、お主にもしばらく護衛をつけるかもしれん」


「……そうなんですね」


 そんなことを急に言われても、頭の整理が追い付かないよ。

 こんな人がたくさん住んでいるところが戦場に?

 明日、病院に行けるのかな。……そうだ。病院だ!


「魔王さん、私からもお話があるんですけど。まだ時間は大丈夫ですか?」


 魔王さんが大臣さんを見る。

 大臣さんは渋い顔をしたが頷いてくれた。


「……どうした?」


「ありがとうございます。実は今、シャガムトとフンバルトが呪熱病という病気にかかりました」


「ふむ、あの者たちが……大臣、呪熱病について知っておるか?」


 大臣さんが頷いて答える。


「はっ、聞いたことがございます。呪熱病は呪いなどでかかる病気の一種です。死に至ることもあると聞いております」


「ふむ……それは治る病気なのか?」


「治療薬はございますが……珍しい病気でして、薬がすぐ手に入るかどうかは……」


「城に薬はないのか?」


「我々のような上級魔族は呪い耐性が強いので、かからぬ病気ゆえ……」


 大臣さんが申し訳なさそうにこちらを見る。


「そうなんですね……。明日病院に行きたいんですけど、その護衛の人に迷惑はかかりませんか?」


「ふむ、それは心配せずともよい。事情は護衛の者に話しておこう。大臣よいか?」


「畏まりました。その旨を伝えておきます」


 大臣さんが一礼して、メモをしている。


「ありがとうございます。それともう一ついいですか?」


「なんだ? 遠慮なく申してみよ」


「さっきのマチルダという冒険者なんですけど、夜も遅いので私の部屋に泊めていいですか?」


「そんなことか。よいぞ」


「ありがとうございます」


 大臣さんが時計を見ている。


「魔王様、お時間が……」


「そうか……ハルカ、今日はもう休め」


 魔王さんが言う。


「お主も長旅で疲れているだろう」


「うん。ありがとうございます」


「うむ」


 私は一礼した。


「おやすみなさい、魔王さん」


「おやすみ、ハルカ」


 私は立ち上がり、部屋を出た。

 扉を閉めた瞬間、それまで気を張っていた分だけ、どっと力が抜けた。

 戦場になるかもしれない。

 シャガムトたちが死ぬかもしれない。

 今日の朝まで、すごく楽しかったのに。


「……なんか、実感わかないや」


 呟いてみて、初めて自分の声が震えていることに気づいた。


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