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異世界 満喫トラベラー ~のんびり旅行するつもりが色々巻き込まれました~  作者: みみたん


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第2話 異世界の常識って難しい

 そんなこんなで私は、街の巨大な門の前にいた。


「おいハルカ。この世界じゃ、お前の常識が通じないこともあるからな。変なことするなよ」


 肩の上でパルが忠告してくる。


「わかってるって。……あ、でも一つだけ言い忘れてた」


 私は門へ向かって歩きながら、パルに伝えた。


「食べたいもの食べて、見たいもの見て、眠くなったら寝る。そういう感じでいくよ」


「最初はそれでいいが、ずっとそればっかりはやめてくれよ」


「まあまあ、すぐにやりたいことなんて思いつかないよ」


 パルと会話をしながら門をくぐろうとしたときだ。

 門番が、私の姿を見て怪訝そうな顔をしている。


「……あ」


 やっぱりリクルートスーツのままだと変だよね。

 どこかでこの世界の服を手に入れないと浮いちゃう。


「行こ、パル」


 私は気にしない風を装って、そのまま街の中へ進んでいった。


 石畳を歩く靴音が、街のざわめきに混ざっていく。

 門をくぐった先にある街「アルテア」の中は、人の声や馬車の音でいっぱいだ。


「……さて。まずはお金を手に入れたいな」


 私は収納リストに並ぶ『ハチミツペアー×12』を意識する。

 一個につき金貨一枚。全部売れば金貨十二枚だ。

 この世界の相場はわからないけど、これだけあればしばらく優雅な生活ができるかも。


「ハルカ、あの剣と秤が描かれた看板がギルドだぞ」


 パルが羽先で指し示したのは、大きな石造りの建物だった。

 中に入ると、外よりもずっと騒がしくてごたごたしていた。


「……これ、買い取ってほしいんだけど」


 収納からハチミツペアーを取り出してカウンターに置く。

 このカウンターでいいんだよね?


「……っ!? これは、ハチミツペアーか? これは傷一つない極上品だぞ」


 カウンターの中にいた人がハチミツペアーを凝視している。


「これは素晴らしい……一個あたり銀貨八十枚でどうだ?」


 男はニヤリと笑った。

 私は鑑定結果を知ってる。


「一個金貨一枚でしょ。金貨十二枚で交換してよ」


 ここは強気交渉一択だよ。

 舐められたら負けなのさ。

 男の顔から余裕が消えて、無表情で無言のまま金貨を革袋に詰めた。


 ジャラリ。


 私は重みの増した革袋を受け取り、腰のベルトにしっかりと括り付けた。


「おいハルカ、視聴者が増えないぞ!『換金とか見飽きた』だとさ。お前、もっと派手な売り方とかできなかったのか?」


 パルが耳元でうるさいけど無視した。

 換金が終わって、ギルドを出たらちょっとだけ足が震えた。

 意識してなかったけど、こんな体験初めてだもんね。無意識のうちに緊張していたのかも。


 ほっとしたら、だんだん周囲の景色を見る余裕が出てきた。


 露店では見たことのない果物や野菜が並び、少し離れたところでは、香ばしい匂いを漂わせながら肉を焼いている。

 聞こえてくる会話も、そこで生活している人たちも、日本にいた頃とはまるで違う。

 耳の長いエルフらしき人もいれば、頭に獣の耳を生やした人もいる。

 あれは……猫かな? すごくかわいいじゃん。

 こっちは犬? 私は猫も大好きだけど、犬派なんだよね。

 あっちは角がある。異世界って感じでいいね。

 日本では、絶対に見ることのなかった光景だ。


「……本当に、異世界なんだなぁ」


 思わず呟く。

 こんな光景を見たら、もっと興奮するんだと思っていた。

 でも、こうして街の中を歩いていると、不思議と気持ちは落ち着いていた。


 日本に帰れないけど、日々の仕事に追われることもなくなった。

 そう考えると、胸の奥が少しだけ軽くなる。


「ハルカ、さっきからずっと周りを見ているな」


 肩に乗ったパルが声をかけてきた。


「だって、見るもの全部が珍しいんだもん」


「まあ、それはそうだろうな」


「あの屋台、何を焼いてるんだろう?」


「肉じゃないか?」


「それは見れば分かるよ。何肉だろうって思ったの」


「そうか」


 パルは興味なさそうに羽を動かした。

 せっかく異世界に来たんだから、もっとこう……感動してくれてもいいのに。


 私は今後、ここで生きていくのね。

 なんて街並みを見ながら考えているときだった。


「そこの美しいお嬢さん! その輝く髪、まるで朝日に濡れた黄金のようだ!」


 突然、目の前に一人のお兄さんが立った。

 私を見ている。

 ということは……私に話しかけてるんだよね?

 でも、私の髪の毛って黄金じゃなくて銀髪……。


「……ありがとうございます?」


 とりあえず、お礼を言っておく。


「二つの月が照らす夜に、アルテアの庭で僕のサッタンキーを見ておくれ」


「え? ……えーっと」


 アルテアの庭?

 それよりも…………サッタンキー?


「それじゃあ……失礼しますね」


「待ってくれ!?」


 お兄さんが慌てて追いすがってくる。


「君は、僕の誘いを断るというのか!?」


「え?」


 誘い?

 何かの勧誘だったのかな。


「……ハルカ」


「ん?なに?」


「サッタンキーは求愛行動のことだぞ」


「求愛行動?」


「彼らの種族では、魔力を高めたあと、夜空の下で疲れるまでお尻を振って求愛ダンスをする。ダンスに疲れたら意中の相手の悪いところを、これでもかと魔力を込めて言い続け、悪意を全て出しきる。その後、意中の相手がOKなら、相手の差し出した尻を全力で蹴る」


「はぁぁぁぁ???」


 もう全てがわけわからん!


「いきなり全力求愛? それよりサッタンキーも意味不明! 軽くお茶でもしながら話さない?って言ってよ! わかるわけないじゃん!」


 声をかけてきたお兄さんが引いている。


「しょ、初対面の異性とお茶だって……とんだエロ女だな! 僕はこれで失礼する!」


 お兄さんは逃げるように私の目の前から消えてった。

 はい?初対面の私をエロ女扱いして逃げるのかよ!

 お前が非常識だろ!


「ハルカ、あいつはキバーツ族の若者だ。この異世界でもかなり特殊な種族に声をかけられたな」


「パルってそんなこともわかるの?」


「神の使いだからな」


「……ふーん」


「視聴者からのコメントもそこそこ来てるな」


『これ、ハルカは悪くないよね』

『管理神もすごい世界にハルカを放り込んだな』

『ナンパされるハルカたんをもっと見たいよ……(*´Д`)ハァハァ』


 一部、ぶっとんだ神様もいるね。


 気を取り直して歩いていると、ふと自分の服に目が留まった。

 紺色のジャケットにスラックス。靴だってパンプスのままだ。

 日本にいた頃なら、どこにでもある普通の服。

 でも、この世界では明らかに浮いている。

 周囲を見渡してみても、同じような服を着ている人は一人もいなかった。


「……そういえば、私だけ服が変だね」


「今さら気づいたのか?」


「いや、最初から分かってたよ」


「そうなのか?」


「だって、みんな服が違うじゃん」


 パルが少し意外そうな顔をする。


「じゃあ、なんでそのままなんだ?」


「他に着る服がないから」


「なるほど」


 納得したらしい。


 このまま旅をするなら、さすがにこの服では目立つし恥ずかしい。

 動きやすくもないし、早く着替えたいよ。


「服、買おうかな」


「そうした方がいいと思うぞ」


「うん」


 ちょうど通りの先に、服屋が何軒か並んでいた。

 木製の看板には、簡単な絵と文字が描かれている。

 私はその店へ向かった。


「いらっしゃいませー! なにかお探しですかー?」


「はい。できれば動きやすくて、旅に向いているものを……」


「でしたらー、今流行の最先端冒険者スタイルがおすすめですー!」


「流行の最先端?」


「はいー!」


 店員さんが奥から一着の服を持ってきた。


「こちらですー!」


 黒を基調とした服に、いかついモンスターの刺繍が入っている。

 胸元には巨大な牙を剥き出しにした魔物。

 背中には翼を広げたドラゴン。


「……これが流行なんですか?」


「今、冒険者の間では大人気ですよー!」


「私は冒険者じゃないです……」


 それ以前に、この服ださい。


「お客様、もしかしてハイエルフですよねー?」


「はい」


「でしたら、こちらもー!」


 店員さんが取り出したのは、長いローブだった。

 さらに、その上には妙に尖った帽子まで乗せられている。


「ハイエルフ専用の魔導士セットですー!」


「いや、私、魔法使いじゃないんですけど……」


「ご安心くださいー! こちらには自己修復機能がついていますー!」


 この人、話を聞いてくれない。

 けど、自己修復機能かぁ。

 さすが異世界だ。

 買わないけど面白い。


「それは便利ですね」


「さらに風の下級魔法を使うと、自動的に上級魔法へ変換してくれますー!」


「えっ、すごい」


 わけわからないところがすごい。

 買わないけどね。


「でしょー!」


「……じゃあ、欠点は?」


 デメリットもあったりしてー。


「代わりに木の実以外は食べられなくなる呪いがついてますー」


「デメリットあるんかい!」


「だけど……」


「だけど?」


「ハイエルフなら、それも有りですねー!」


「無しです!!」


『いいじゃないか、その服を着るのだ』

『木の実しか食べないハイエルフ……まんなテンプレだな』


 外野が好き勝手言ってくれる……。

 この店はないかな。


「ま、また今度来ますね」


「お客さん、常識ないですねー! 説明されたら買うのが常識でしょー!」


「ええ? そうなの?」


「そうですよー! これだから山奥から出てきたばかりのハイエルフは……」


 その時、パルが小声で教えてくれた。


「これ詐欺だぞ、相手しなくていい」


「そうなんだ……相手しなくていいのね」


 本当に安心したよ。

 誰が山奥から出てきたハイエルフだ!

 私は日本から来たハイエルフだよ!


「ごめんなさい。私行きますね」


「えー……」


 急いで店を出た。


 すぐ隣にも服屋はあるけど、入るのが少し怖いな。

 でもまあ、思ってるのと違ったらすぐ出ればいいか。

 勇気を出して私はお店に飛び込んだ。 


「いらっしゃい」


 店の奥から声がする。

 顔を上げると、丸眼鏡をかけた初老の女性がこちらを見ていた。

 私の姿を見て、少しだけ目を細める。


「……おや」


「あの、旅をするための服を探してるんですけど」


「旅かい?」


「はい。これからいろんなところを見て回ろうと思って」


 女性は私の服装を上から下まで眺めた。


「その格好で?」


「……やっぱり変ですよね」


「変というより、この辺じゃ見ないねぇ」


 やっぱりそうだよね。


「動きやすくて、旅に向いてる服が欲しいです」


「それなら、いくつかあるよ。ちょっと待ってな」


 女性は店の奥へ入っていった。

 しばらくして、何着かの服を抱えて戻ってくる。


「……普通だ」


「何がだ?」


「いえ……なんでもないです」


「この辺りなら使いやすいだろう。チュニックに革のキュロット。寒くなったら上から外套を羽織ればいい」


 渡された服を手に取る。

 柔らかな布地が指先に触れた。


「これ、いいな」


「そうだろ。そのへんに置いてる靴とも合うから、あわせて試着しな」


「ありがとう。そうしますね」


 試着室でスーツを脱ぎ、渡された服に着替える。

 こげ茶色のショートブーツも一緒に合わせて履いた。

 胸元を紐で調整するタイプのチュニックは、思っていたよりずっと着心地がよかった。

 スーツのように肩が凝る感じもしない。気分まで落ち着いてくる気がした。

 腕を動かしてみる。軽い。


「……楽」


 カーテンを開ける。


「どうですか?」


「似合ってるよ」


 店主の女性が満足そうに頷いた。


「綺麗な髪だねぇ。あんた、エルフだろ?」


「はい。ハイエルフです」


「ハイエルフかい。そりゃ珍しい」


「珍しいんですか?」


「この辺じゃ、そうそう見ないね」


 そう言われて、私は少しだけ耳を触った。


「じゃあ、この服をください。同じものを三着もらえますか?」


 いつどこで洗濯できるかわからないからね。

 余分に買っておくんだ。


「わかった。外套も一枚持っておくといい。夜は冷えるからね」


「お願いします」


 服を選んでいると、旅に必要そうなものがいくつか目に入った。

 水筒や毛布なんかの、異世界旅行に役立ちそうな小物類。

 ついでに下着も何着か。


「これもください」


「ずいぶん買うねぇ」


「これから旅するので」


「なるほどね」


 会計を済ませる。

 銀貨二十枚らしいので、金貨一枚を渡すと、お釣りで銀貨八十枚をもらった。


「銀貨は持ってなかったのかい?」


「ははは……今は細かい持ち合わせがなくて……」


 買ったものを収納へ入れていく。

 ――着替え用の服。下着。水筒。毛布。外套。タオル。

 まだ足りないと思うけど、それはこれから追加していこう。

 

「……それにしても便利だなぁ」


 改めて【無限収納】の凄さを実感する。

 普通なら荷物を背負わなきゃいけないところを、全部しまっておける。


「ハルカ、お前、本当に便利な能力を持ってるよな」


「うん。これがなかったら、旅行なんて大変だったと思う」


「旅行じゃなくて異世界探検だろ」


「探検する気はないよ。旅行で合ってるもん」


 店を出る。

 この世界の服を着たことで、現地人になった気分だよ。


「次はどうする?」


 パルが聞いてくる。


「お腹すいた」


「……もう昼か」


「たぶん昼くらいだと思う。朝、ハチミツペアーを食べたっきりだよ」


「ああ、そうだったな」


 今日起きたことを思い出したら、余計にお腹が空いてきた。

 通りを歩いていると、さっきから気になっていた肉の焼ける匂いが強くなってくる。

 匂いに誘われるように進んでいくと、広場にいくつかの屋台が並んでいた。


「これ、ください」


 鉄板の上で焼かれている肉を指差す。


「二つかい?」


「はい」


 焼き上がった肉を挟んだパンを受け取る。

 手の中にずっしりとした重みがある。

 広場のベンチに腰を下ろして、一口かぶりついた。


「……ん!」


 肉汁が口の中に広がった。

 少し濃いめのソースと香辛料が肉によく合っている。


「おいしい……」


 異世界舐めてた。

 ハチミツペアーの時もそうだけど、この世界は食べ物がおいしいかも。


「これ、好き」


 気がつけば夢中になって食べていた。


「ずいぶん気に入ったな」


「うん」


 こんなふうに、食べたいものを自分で選んで食べる。

 それだけのことなのに、なんだか楽しい。

 お腹がいっぱいになるまで食べて、ひと息つけた。


「……満足。パルもちゃんと食べた?」


「ああ、食べたぞ」


 食事を終えた私は、そのまま宿を探すことにした。

 通りを歩いていると、一軒の宿屋が目に入った。


 木製の看板には、『風の寄り道亭』と書かれている。


「ここ、よさそう」


 中へ入ると、一階は食堂になっていた。

 仕事を終えた冒険者らしき人たちや、旅人らしい人たちで賑わっている。


「部屋、空いてますか?」


「もちろんだよ」


 宿の主人に案内され、二階の部屋を見せてもらう。

 大きなベッドと小さな机があるシンプルな部屋だ。

 窓からはアルテアの街並みが見える。


「ここにします」


「毎度あり」


 荷物はほとんど収納の中なので、部屋に置くものもない。

 ベッドに腰を下ろしてみる。思ったよりも柔らかい。

 異世界って、もっとそのへんは進んでないと思ってた。


「……いい宿だなぁ」


「しばらくここで暮らすか?」


「それもいいね。この街を観光しつくそうかな」


「旅するんじゃなかったのか?」


「旅はするよ。でも今すぐじゃなくてよくない?」


 それからしばらくくつろいだあと、一階へ戻り、夕食を取ることにした。

 焼きたてのパンと、野菜がたっぷり入ったスープ。

 どちらも美味しい。

 食事をしながら、ぼんやりと周囲の会話を聞いていると、隣のテーブルから賑やかな声が聞こえてきた。


「いやぁ、今年のフォルティスの収穫祭は、例年以上に盛り上がるらしいぞ!」


「なんでも近隣の領主が破格の賞金を出したおかげで、今年のドラゴンレースは全国から腕利きが集まるらしいぞ」


「やっぱり今年も、あの最強のドラゴンライダーが優勝候補筆頭なのかねぇ?」


「まあな。あいつの操竜技術は本物だ」


「そういや今年も出るのか? ドラタン=クンカクンカ・タマンネーヨ十六世」


「もちろんだろ!」


 思わず食事の手が止まった。

 ……今、なんて言った?


「ドラタン=クンカクンカ・タマンネーヨ十六世……?」


 口に出してみる。

 ダメだ。変な名前すぎる。

 しかも十六世。


「ぷっ……」


 思わず笑ってしまう。


「ハルカ?」


「だって……名前……」


 肩が震える。


「クンカクンカ……タマンネーヨ……」


 笑いを堪えながら呟いていると、隣のテーブルにいた旅人らしき男性がこちらを振り返った。


「お嬢ちゃん、フォルティスを知らないのかい?」


「ふひひひ……ひ? わ、私に話しかけてる? 知らないです」


 笑ってる最中の不意打ちやめてよね!


「ああ。ここから東へ数日行ったところにある街だ。年に一度の収穫祭が始まってる。屋台も見世物も山ほど出るぞ」


「屋台……」


 その言葉に反応してしまう。


「ドラゴンレースもあるんですか?」


「ああ。祭りの目玉の一つだ」


「目玉……」


 気づいたら呟いていた。


「それに、ドラタンの優勝パフォーマンスがまた凄くてな」


「優勝パフォーマンス?」


「ああ。あいつ、毎年優勝すると、とんでもないことをやるんだよ」


「へぇ……」


 少し興味が湧いてきた。


「去年なんか、自分より何十倍もでかいドラゴンを口の中に入れてな」


「……え?」


「そのまま丸呑みしちまったんだよ!」


「ええ!?」


 叫んでしまった。

 周囲の客が何人かこちらを振り返った。


「ちょっと待ってください。それ、人間ですよね?」


「ああ、人間だ」


「人間がドラゴンを?」


「丸呑みした」


「……ドラゴン、生きてるんですか?」


「もちろんだ」


「吐き出したんですか?」


「そうだ。飲み込んだあと、また吐き出した」


 意味が分からない。


「パル……」


「なんだ?」


「この世界って、こういうの普通なの?」


「いや、普通ではないと思うぞ」


「だよね!?」


 旅人の男性は楽しそうに笑っている。


「いやぁ、あれは凄かったぞ! 自分の何十倍もでかいドラゴンを丸呑みするドラゴン愛! たまんねーよな!」


「ドラゴン愛……?」


「そうそう! タマンネーヨ十六世だけにな! うわはははは!」


 愛があればなんでもできるよね……。

 いやできないだろ!


「はは……」


 愛想笑いに失敗した。


「今年は何をやるんだろうなぁ」


「それも祭りの楽しみの一つだよな」


「去年以上のものを期待したいところだ」


 旅人たちは楽しそうに話を続けている。

 私は考え込んでしまった。

 人間が自分の何十倍も大きなドラゴンを丸呑みする。

 ……なんだ、この世界。

 私が想像していた異世界と全然違う!


「……なんか、異世界っていうより」


「なんだ?」


 パルがこちらを見る。


「びっくり人間大集合世界じゃん……」


「言いたいことはわかるが、色んな次元に色んな世界があるんだろうな」


「そ、そうだよね」


 スケールでかすぎ!

 こんな世界はさすがにいくつもないよね?


「……今年は何するんだろう」


「行くのか?」


「行きたい」


 だって気になるじゃん。

 去年はドラゴンを丸呑みした人。

 今年はいったい何をするんだろう。


「フォルティスに行こう」


「さっきまでアルテアを観光すると言ってなかったか?」


「街は逃げないけど、お祭りは今しかやってないもん」


 そう、しかも異世界のお祭りだよ!


「明日の朝、フォルティスに向けて出発しよう!」


 パルは頷いてくれた。


「わかった。まずはハルカが楽しむことが重要だもんな」


「そうそう、私の笑顔をたくさん配信しといて!」


「それだけじゃバズらないだろうけどな」


「まあまあ、楽しそうにしてる人を見ると幸せじゃん?」


「なんかハルカっぽいな」


「そう、これが私! それよりも明日に向けてこれから準備だ!」


 明日はフォルティスに向けて出発しないとね!

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