第1話 不名誉な死のビジョンと新しい生き方
意識が、ふわりと浮き上がるような感覚がした。
つい先ほどまで、地獄のような仕事を忘れて私は片思い相手のリク君と食事をしていた。
少しお酒も入って、いい雰囲気で、駅前の電柱の影。彼が顔を近づけてきて、私の心臓はうるさいほど跳ねていて――。
「……えっ、ここ、どこ?」
目を開けると、そこは果てしなく広がる純白の空間だった。
足元には雲のような柔らかな靄が立ち込め、境界はどこにも見当たらない。
「ここは次元の境界。現世と来世、そして異界とが交わる狭間の地じゃよ」
穏やかな声が響いた。
振り返ると、そこには豪華な装飾が施された椅子に座る、白い髭を蓄えた老人がいた。
後光が差している。着ているのはやけにカジュアルな法衣だ。
「ここはなんですか? あなただれ? リク君は!?」
「慌てるでない。わしは八百万の神の一柱。平たく言えば、お主たちの世界の管理運営を任されておる神じゃな。リク君ならまだあちらの電柱の影におるよ」
神様、と自称する老人は気の毒そうな顔で私を見つめた。
「お主にとっては、受け入れがたい話かもしれぬが……落ち着いて聞くのじゃ。遥香よ。お主は今、このままでは命を落とす運命にある」
「神様? てか死ぬ? ……なんで死ぬと言い切れるんですか? 病気でもないし、こんな元気なのに、そんなの信じられると思います?」
「……非常に言いにくいのじゃが」
詰め寄る私に、神様は哀れみの目を向ける。
「ならば、聞くよりも実際の未来視を見せてやるのじゃ」
と、手元の水晶を指先で弾いた。
その瞬間、私の脳内に強烈な映像が流れ込んできた。
映像の中の私は、目を閉じてリク君のキスを待っている。……が。
彼の顔が至近距離まで迫った瞬間――とんでもない臭いが私の鼻を直撃した。
ドブ川と生ゴミを煮詰めたような、破壊的な口臭。
映像の中の私が耐えきれず「オエッ」とえずき声を上げる。
反射的に体を大きく仰け反らせた。
ガツッ! 後頭部が、横にあった電柱へ直撃。
「いったぁっ!」
その衝撃で身体が前方へ跳ね返り、足がもつれる。
「えっ、ちょ……」
次の瞬間、私は盛大によろけた。
そして、驚いてひょっとこみたいになってるリク君の顔が近づいてきた。
おかわりの破壊的な口臭。
「くっさぁ!!!」
またまた体を大きく仰け反らせ、今度は綺麗に後ろへひっくり返った。
ゴンッ!
後頭部をアスファルトへ強打し、そこで映像は途切れた。
真っ白な空間に、沈黙が流れた。
顔が熱くなる。この死に方、誰にも言えない。
神様にだって言いたくない。バレてるけど。
「……そ、その死にかた、キャンセルできませんか?」
「運命とは非情なものよ。決められた因果を変えることは神にもできぬ……」
残念そうな表情をしていた神様が、少しの間をあけて真っ直ぐに私を見て明るい声を出した。
「しかし、救いがないわけではない。今、神界ではある試みが流行っておってな。その年で『最も不幸な死』を迎える者を、死の直前にこうして召喚し、異世界へ転移させるというムーブメントがあるのじゃ」
神様は少し身を乗り出し、ニヤリとした。
「どうじゃ? 不名誉な死を迎え、神界の歴史に名を刻むか。それとも、全ての未練を捨てて、新たな世界で生き直すか。選ぶ権利はお主に与えよう」
迷う必要なんてない。
「……行きます。今すぐ行かせてください」
リク君の口臭に殺されるなんて、未来永劫語り継がれる恥晒しはいやだ。
「話が早くて助かるわい。いやぁ、実を言うと、わしもこの召喚枠を勝ち取るのに苦労してな」
先ほどまでの神々しさはどこへやら、神様はタブレットみたいな板を取り出し、何かのグラフを確認し始めた。
「今の神界は空前の『異世界転生・転移ブーム』なのじゃ。他の神々もこぞって人間を送り出しておる。『異世界恋愛系』で甘酸っぱいドラマを流す女神や、『追放ザマァ系』や『無双系』でスカッとさせたい男神もおる。コンテンツは飽和状態よ」
神様が言っているのは、日本そっくりの動画配信サイトの事情だった。
「わしも一発、大きなバズりを生み出したくてな。そこで白羽の矢が立ったのが、お主というわけじゃ。さて、ハルカよ。お主は新たな世界で、どんな冒険がしたい? どんな英雄になりたいのじゃ? 望むままを申してみよ」
神様は期待に満ちた目で私を見つめる。
きっと、魔王を倒したいとか、聖女として崇められたいとか、そんな答えを待っていそう。
けれど、私はもう疲れていた。
毎日納期に追われ、人間関係に気を使い、最終的には好きな人の口臭で死ぬなんて。
「神様……私は、もういろんな意味で戦いたくないんです」
「ほう? 魔王を倒して勇者になる、という王道は嫌か?」
「嫌です。疲れるのも、誰かのために義務を負うのも、もうお腹いっぱい。恋愛運だってないし……。私は、ただ仕事もせず、世界の綺麗なものを見て、いろんな文化を愛でて、美味しいものを食べて、のんびりと過ごしたいんです」
神様は意外そうに目を丸くした。
「……ただ、生きるだけか? それでは配信としての『引き』が弱い気がするが……」
「殺伐とした世界で、ただ優雅に、わがままに生きる旅路……。逆に新しくないですか?」
私は神様の「トレンドに乗りたい」という欲求を、逆手に取ることにした。
「……うーむ。確かに、毎日血生臭い無双シーンや、ドロドロの復讐劇ばかり見せられている視聴者からすれば、ただただ心地よさそうに歩き回る映像は、一種の清涼剤になるかもしれぬな。寝落ち用動画としての需要もありそうじゃ」
神様は勝手に納得している。ちょろいよこの人。
「……よし、癒やし系旅番組にするかのう! その方向でいこう! ではハルカよ、お主に相応しい最高のジョブを授けてやろう」
神様はノリノリで指を鳴らし、目の前に淡く輝くリストを浮かび上がらせた。
「ほれ、ジョブ一覧じゃ。好きなものを選ぶがよいぞ」
私がそのリストを見て首を横を振ると、神様は手元のリストを何度も見直した。
「ううむ、わしが提示した『勇者』や『聖女』では不足か? これらはわしが丹精込めて準備した、最高峰のスペックを持つSSランクジョブなのじゃぞ。これを選んでおけば間違いはないというのに……」
「古いです。神様なのに、既存のテンプレートしか用意できないんですか? そんなの、他の配信に埋もれちゃいますよ」
私の煽りに、神様は「ぐぬぬ……」と唸る。
「……よかろう! そこまで言うなら、お主が望むジョブをわしが形にしてやろう。どんな能力が欲しいのじゃ?」
「ジョブ名は神様にお任せします。スキルは三つ。何でもわかる『鑑定』、何でも入る『無限収納』、それと……何キロ歩いても身体が辛くならない『無限体力』。これだけあれば私は満足です」
神様は呆れ半分、感心半分といった様子で指を鳴らした。
「ならば、【風来坊】なんてどうじゃ? ナイスネーミングじゃろ?」
「名前にこだわりはないのでわかりました」
それならと、自分の姿についても注文をつけた。
「あと、せっかく動ける身体になるなら、歳も取りたくないです。ゆっくりだらだらとしたい日もあるし、せっかくなら世界の全てを見たいですよ」
「……うーむ、老化せぬ体、つまりハイエルフに転生か? それは予定外じゃ……。わしのマナ、足りるかな……。設定の書き換えにかなりのリソースを食いそうじゃが……」
神様は急に弱気な声を出し、何やら空中に複雑な数式を浮かべて計算し始めたが、やがて溜め息をついて肩を落とした。
「……はいはい、承知した。全く、お主のような注文の多い召喚者は初めてじゃよ」
神様は苦笑しながら、私の肩に一羽の太った小鳥を乗せた。
「これはパル。お主の長い旅の話し相手兼、神界への『配信デバイス』じゃ。注意事項を伝えておくぞ。パルが見ている景色は、神界でライブ配信される。お主は自由に生きて良いが、わしらの視線はそこにあると思え」
パルを指でつつきながら、大事なことを確認した。
「ずっと見られてるのは嫌です。特にお風呂とかおトイレとか、見るつもりですか?」
「そんな破廉恥な真似、神の権威にかけて致さぬわ! 生理現象や入浴時は、わしらの側でも自動的に『プライバシー保護モード』で暗転・遮断される仕組みになっておる。そこは安心するがよい」
神様は少し寂しげに手を振った。
「では、さらばじゃ。お主の『癒やし系旅番組』、期待しておるぞ。……あ、それと、日本に戻っても死ぬだけじゃから! 達者でな!」
「えっ? まだ聞きたいこととお願いしたいことが……」
その言葉を最後に、視界が眩い光に包み込まれた。
次に目を開けたとき、私は、人間だった時とは比べ物にならないほど軽い体で、異世界の草原に立っていた。
—
どこまでも続く緑の絨毯。
空は吸い込まれそうなほど高く、元の世界では決して見ることのできなかった、透き通ったコバルトブルーが広がっている。
「本当に、来ちゃったんだ」
自分の手を見つめた。
指先まで白く滑らかだ。爪は淡い桜色をしていて、キーボードを叩きすぎてささくれていたのも消えている。
ふわりと風が吹くと、耳の横を長い銀髪が撫でていく。
……でも、服はリクルートスーツとパンプスのままだ。
神様はそのへん、サービスしてくれなかったらしい。
てか、それよりもさ……。
「まだいろいろあったのに!」
突然の声に、パルがビクッと震えた。
「な、なんだ急に」
「色々聞きたいことがあったんだよ! この世界は安全なのかとか、他にもね……」
「ああ、そんなことか。俺に聞けばいい。大抵のことは答えられるぞ」
「じゃあ聞くけど……願い事とかも、叶えてくれたりする?」
「それは無理だ。神様にそのへんの能力は授けられていない」
「あ、そうなんだ。まあ、しょうがないか」
これは引き下がるしかない。
もともとダメ元だったし。
「じゃあ本題。この世界、安全なの?」
「残念だが、普通に魔物もいるし、魔王もいる世界だぞ。気は抜くなよ」
「さすがにそうかぁ。まあ、異世界だもんね」
これは予想通りだった。
予想なんて当たらなくていいのに。
「もう一個いい? 楽して大金を稼ぐ方法とかない?」
図々しい質問だけどさ。
教えてくれたら嬉しいなぁ。
パルはジト目で見てきた。
「……それは言えん」
「なんで?」
「今ここで教えたら、この先の配信が味気なくなるだろうが。お前が四苦八苦する様子も込みでコンテンツなんだよ」
「ケチ」
「なんとでも言え。下手に教えて視聴率が上がらなければ、俺が神様に大目玉を食らう」
「あ! それじゃん! 大目玉を食らうパルで視聴率が伸びるかもよ?」
「むちゃ言うな。ハルカがこの配信の主役だぞ」
パルは澄まし顔で羽繕いを始めた。
これ以上は何を言っても無駄そう。
「……わかったよ。じゃあ最後に一個教えて」
「最後じゃなくてもいいが、なんだ?」
「ここから一番近い、安全そうな街か村ってどこ?」
パルは片方の翼をすっと伸ばした。
「北に向かえ。しばらく歩けば、そこそこ大きな街に着くはずだ」
「北……ね。ありがと」
ん? 北ってどっち?
「方角わかんないよ」
「俺が羽を指したほうだろ!」
なるほどね。
北に向かって進み出したとき、全身が軽く感じた。
重力はちゃんとある。でも、自分の体重をほとんど感じない。
「わ……体が軽い。これが無限体力?」
スキルって便利すぎない?
こんなにすごいものをくれた神様めっちゃすごい。
「と、行く前に俺からも二ついいか?」
「なになに?」
「なんで考えるそぶりもなく、悩まずに欲しいスキルを頼めたんだ?」
「あー! そのこと?」
そんなの簡単だよ。
「異世界転生の漫画とかアニメをたくさん見てたからね」
「ふーむ。ある程度イメージをできていたということか?」
「そゆこと! 前から良いなと思ってたのを言っただけ!」
しかも、三つ言ったら全部もらえるなんて思ってなかった。
それは多すぎる!とか言われて二つもらえたらラッキーくらいに考えてたよ。
私、めっちゃ冷静じゃん?
「それでは、もう一つの質問だ。いやお願いかもな」
パルはすぐに続けて言わない。難しい質問だったりして。
「……配信についてだ。俺は配信がバズるのを目的に作られた」
「……で、それが?」
「ハルカは目的を何も持たないと言ったな」
「そうねー。義務感は嫌だよ。のんびり好きに生きたいよ」
「それなんだが、それだと配信的に引きが弱すぎる」
「そうかもねぇ」
でもなぁ……配信とかどうでもいいし。
「異世界でしかできない、ハルカらしいことを見つけて達成してくれ」
「何それ! 漠然としすぎ!」
「そうだな」
パルはあっさり認めた。
「そんなのすぐ思いつかないよ?」
「別に今決めろとは言ってない。旅はこれからだろ」
「そもそもやるとも言ってないよ?」
「わかっている。ハルカの意思は尊重するぞ」
「……それならまあ」
「一緒に考えていけばいい。何か思いついたら相談してくれてもいいぞ」
「うん、その気になったらね」
「もちろん、突然思いついたのなら相談なしで実行してくれても構わない」
「えー……。まあ、何か思いついたらね」
「それでいい。心の隅にでも留めておいてくれ」
「わかった。できなくても知らないよ?」
できない約束はできない。
やれたらやるくらいの、軽い気持ちで考えとこ。
とにかくだ。まだ異世界に来て一歩も移動してない!
私は北を目指して、目の前に広がる森へと足を踏み入れた。
—
森に入ってみたら思ったより薄暗くて、木の隙間から光がまだらに地面を照らしていた。
「北、北っと……」
これが異世界の森かぁ。
って、あんま日本と変わらん。
ガサッ。
「……ん?」
茂みが揺れた! なになに、さっそくモンスターきた!?
できるだけこっそりと、でも早足で茂みとは逆方向に行くぞっと……。
「おいハルカ、今の完全に見なかったことにしたな?」
「見なかったじゃないよ、関わらないことにしたの」
やばい生き物だと、ここで配信終了だよ。
パルもそんなの望まないでしょ?
――ドスッ。
「なにっ!?」
何かにつま先を引っかけて、私は前のめりに転びかけた。
体勢を立て直しながら振り返ると、足元に魔物らしい生き物がひっくり返って伸びていた。
「……これ何?」
「お前、今、蹴っ飛ばしたんだよ。さっきの茂みの奴だ」
「え!? まったく見えてなかったよ!」
「お前の進行方向へと急に出てきて、お前にぶつかったんだ。それで勝手に倒れた」
こわっ!
てか、この世界のモンスターって弱い?
「……よくわかんないけど、今のうちに逃げよ?」
パルは倒れている魔物を見つめた。
「……そ、そうだな。何にしても運がいいなお前」
『確かに運がいい。この世界でもかなり硬いモンスターじゃない?』
『だよな。普通の人間がひと蹴りで倒せるようなのじゃなかったと思う』
コメント欄に急に文字が流れ出したけど見ている暇なんてない。
急いでその場を離れた。
もう安全かなと思えるくらい離れてから、疑問が起きた。
「ねえねえ、さっきのってモンスターを倒したことになるよね?」
「そうだな」
「経験値みたいなのは入る?」
「この世界にそんなものないぞ」
「そっかー、倒したらお金が手に入るとかは?」
「それもない。素材なら売れたかもな」
「……そんなもんか」
この異世界、甘くないようです。
「あとさ、配信コメントって私にも見えるんだね。ちょっと邪魔だから切ることできない?」
「それはコメントをオフにする意識をしたら切れるぞ」
そうなの? オフにな~れ!
あ、本当に消えた。さっきは突然コメントが出てきたからびっくりしたよ。
これでよし。またモンスターに遭遇するの嫌だし、私は駆け足になっていた。
視界がそんなに良くない森でそんなことをすると……。
ストン…ゴロゴロゴロゴロ……。
見事に穴にハマって落ちてしまった。
「イタタ……」
なんなのよもう!
お尻をさすって辺りを見回すと。
ちょっと先に見えている木に、果物が実っているのに気がついた。
オレンジ色で見た目は美味しそうな果物。
「……あ」
「なんだ、あれ」
「なんか美味しそうだね。梨に似てる?」
「そんなときの鑑定じゃないのか?」
「それじゃん!」
私は鑑定を意識して目を凝らしてみた。
【鑑定】
『ハチミツペアー
月の光を浴びて熟す果実
無毒
非常に糖度が高く、一口食べれば天国が見えるほどの絶品
現地のギルドでは金貨一枚で取引される希少品』
わぁ!食べられるじゃん!
もぎ取って、その場でかぶりつく。
日本にいたときだったらできないワイルドさ!
これが自由の味なんだなぁ。
「……おいしい!」
完熟した桃とマンゴーを掛け合わせて、さらにハチミツを足したような濃厚な甘み。後味は爽やか。
「おい、一人で食うな」
「はいはい」
パルにも分け与えながら、木になっている分をありったけ収納にしまい込んだ。
頭の中の収納リストに『ハチミツペアー×12』の文字が刻まれた。
「……よし、これで多少は路銀になりそう」
金貨の価値がわからないけど安いなんてことはないよね。
新しい人生、幸先よすぎじゃない?
何もせずに大金ゲットなんじゃない!
この異世界、やっぱり甘いかもです。
—
森を抜けるのは、思ったより早かった。
しばらく歩いていると、だんだん木が少なくなってきた。
「あれ? もしかして、もうすぐ森を出るのかな」
最後の木を抜けた瞬間、目の前がぱっと明るくなった。
「わぁ……」
そこは崖の上だった。
崖の下にはどこまでも続いていそうな広い平原が広がっていて、その真ん中には大きな石造りの街が見える。
「……すご。あれが、この世界の街なんだ」
赤い屋根が並び、高い外壁に囲まれている。
「ハルカ、視聴者が1人だけだな……。『こんな景色は散々見てるからなー』って言われておる。まあ仕方がないか」
パルの実況は無視して、私は収納にあるハチミツペアーを思い浮かべた。
これが売れたら、当面の生活費には困らないはず。
「パル。神様によろしく伝えといて」
「何をだ?」
私は崖の下へ続く道に目を向けた。
「異世界満喫するぞー! 仕事はしないからなー!」
—
――その頃、神界では。
ハルカを召喚した神が巨大なモニターを眺めていた。
「……仕事はしない、か」
画面の中では、ハルカが元気よく拳を突き上げている。
「いやぁ……見事に言い切ったのう」
神様はしばらく黙って画面を眺め、ニヤッと笑った。
「この娘、計算高いと思ったら天然じゃな」
画面には、崖をどうやって降りようかと悩むハルカの姿が映っていた。
「さて、どこまでバズるかのう」
画面を見ている神がそんな皮算用をしている頃。
モニターの中では、ハルカがパルの足を両手で掴み、思い切り跳び上がっていた。
「……それで飛べると思っているのか、あの娘」
このあと、ハルカは普通に脇に坂道があるのを見つけて降ります。
パル「気づいてなかったのかよ」




