死音
遠くに鳴っている。
ラッパだろうか、トランペット。
多分そんな類のものだ、学校の吹奏楽部だろう、夕方の練習のその音が風に流されただろう風向きで微妙に強弱が付いて、まだらな音が流れてきている。曲名は分からないがよく聞く音だ。
薄暗い部屋の中で、目覚めと、眠りの間でうとうとしていた中そんなことを考えつつ、時計を確認すると。
夕食の時間にはまだ早かった。
気のせいだろうか、音量が大きくなったような気がする。
音量が大きくなったことで思い出したこの曲は憶えがある。
夕日に向かって、彼はトランペットを吹いていた、側で聞いていた自分。
思い出した、彼。
校舎の屋上。
普段は鍵が閉まっている。
夕日に映える彼の横顔を見ているだけで良かった。
それだけで良かった。
多くを望まなければ、それがいい思い出になるはずだった。
音がさっきより大きくなってきたよう。
気のせい?
体を起こした。
休日最後の夕日を見ていると、やはり夕日に映えるトランペットが思い起こされた。
最後の告白に、彼は誠実に答えてくれた。
誠実ゆえに残酷だった。
屋上のさらに上にある給水塔で答えを聞いた。
そこからあまり覚えていない。
自分が自分でなくなった瞬間の様な気がする。
憶えていない。
音がすぐそこで演奏している位の音量となった。
ああ、彼だ。
ごめんね、迎えに来てくれたのね。
「この学校お母さんが通っていた学校じゃないの?物騒ね、廃校のため解体工事に入っていた作業員が、校舎屋上の給水塔の隙間から男子学生の白骨死体を発見したんですって。
怖いわね。
ねえお母さん。
お母さん聞いてる?
お母さん、お母さん!しっかりして!だれか看護師さん呼んできて!早くナースコールを!」
拙作に目を通していただき、誠に有難うございます。




