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最弱テイマーは癒されたい ~頼れる仲間とコンカフェを作ったらイケメンが集まりました~  作者: 愛庵苦労


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第9話 最弱テイマーの初めての仕事④

「キャーっ!」


――ドタドタドタッ! バンッ! ガシャン!!


ルイーサの鋭い悲鳴と、激しい転落音が店内に響き渡った。階段を転げ落ちる鈍い音、小麦粉の袋が弾けるような破裂音、そして床に叩きつけられる重い音が重なり、店内が一瞬にして凍りついた。


「え!? ルイーサさん!?」


ティアはトレイを放り投げるようにして厨房の奥へ駆け寄った。階段の下に、ルイーサが倒れていた。小麦粉の袋を抱えたまま転落したらしい。白い粉が辺り一面に舞い上がり、ルイーサの体も顔も真っ白に染まっている。


「……う、ううっ……」


「ルイーサさん! 大丈夫ですか!?」


ティアは血の気が引くのを感じながら、ルイーサの傍に膝をついた。老婆は苦悶の表情を浮かべ、右足の膝下を押さえていた。転落の衝撃で足だけでなく、腰や背中も強く打ったようだ。痛みに顔を歪め、息を荒くしている姿に、ティアの胸を強い罪悪感が締め付けた。


(私がもっと早く動いていれば……! ルイーサさんに無理をさせてしまった……私のせいだ……!)


「これは……骨折してるかもしれないな。ルイーサ婆さん、少し待っててくれ! ティアちゃん、治癒魔法が使える仲間をすぐ連れてくる!」


「は、はい! お願いします!」


常連のゲオルグは素早く判断し、店を飛び出していった。


ティアは客たちに慌てて事情を説明し、オーダーを一時停止。飲食を終えた人から順に帰ってもらい、入り口の札を「Closed」に切り替えた。心臓が激しく鳴り、指先が冷たくなるのを感じながらも、必死に動いた。


店内の客が半数以下に減った頃、息を切らしたゲオルグが一人の女性を連れて戻ってきた。


「待たせたなティアちゃん、連れてきたぜ!」


「ちょっとゲオルグ! 走らせないでよ~……もう、本当に! 休日なのに!」


ゲオルグに腕を掴まれて強引に引っ張られてきたらしい、妙齢の女性が不機嫌そうに文句を垂れていた。赤みがかった茶色の髪を無造作にまとめ、杖を持った彼女——セラフィナは、苛立ちを隠そうともしない。


「こっちです! 頭を打っているかもしれないから、動かさない方がいいと思って……」


ティアの細い体格ではルイーサを運べないため、頭の下にクッションを当て、冷たい床で体温が下がらないようタオルをかけたのが精一杯だった。自分の無力さが歯がゆくて、ティアは唇を強く噛んだ。

セラフィナはため息をつきながらも、プロとしてすぐに動き出した。


「はいはい、痛むところは~……足ね。ったく、面倒くさいわね」


彼女はルイーサの足に杖を向け、小声で早口の詠唱を始めた。杖の先端が鈍く光り、やがて力強く魔法名を唱える。


「――――かの者を癒せ、治癒リカバリー!」


光がルイーサの足に吸い込まれ、数秒後、老婆の表情が少し和らいだ。

しかし、ルイーサが立ち上がろうとした瞬間——


「……ッ!?」


再び激痛が走ったように顔を歪めた。セラフィナが首を横に振る。


「あー……私の治癒魔法じゃ治しきれないわね。攻撃魔法は得意だけど、治癒魔法は嗜む程度なのよ。たぶん骨折してる。完全に治すには上級の治癒術師が必要ね」


店内に重い沈黙が落ちた。


「このまま寝かせておくわけにはいかない。ルイーサ婆さん、悪いがベッドまで運ぶぞ?」


「ええ……すまないねぇ、ゲオルグ」


ゲオルグはルイーサを背負い、ティアの案内で二階へ運んだ。階段を上るたびにルイーサが小さく呻くのが聞こえ、ティアの罪悪感はさらに深くなった。


ルイーサをベッドに寝かせ、ティアたちは再び店に戻った。

客はいなくなり、店内は不自然なほど静かだった。食器が片付いていないテーブルが、先ほどまでの慌ただしさを寂しく物語っている。


「ゲオルグさん、セラフィナさん……今日は本当にありがとうございました」


ティアは深く頭を下げた。声が少し震えていた。もしルイーサさんに何かあったらと思うと、今でも胸が締め付けられる。


「いいってことよ、怪我人には慣れてるわ」


「私も大したことはしてないわ。……ただ、休日なのにゲオルグに走らされた方が腹立つんだけどね~」


セラフィナは不満げにため息をつきながらも、口元に小さく笑みを浮かべた。


ティアは二人の労をねぎらうため、急いで紅茶の準備を始めた。手がまだ少し震えていて、お湯を注ぐときにわずかにこぼしてしまった。


「せめて紅茶をご馳走させてください……ゆっくりしていってくださいね。本当に、助かりました」


日は傾き始め、店内に柔らかな橙色の明かりが灯された。さっきまでの慌ただしさが嘘のように、店内は静かだった。食器が片付いていないテーブルが、まるで事件の余韻を残しているようで、ティアの胸はまだざわついていた。


(ルイーサさん……大丈夫かな……)


その時——


カラン……。


不意に店の扉が開かれた。


夕暮れの風が店内に流れ込み、鈴の音が静かな空間に小さく響く。ティアはハッとして入り口に視線を向けた。


扉の向こうに立っていたのは——

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