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最弱テイマーは癒されたい ~頼れる仲間とコンカフェを作ったらイケメンが集まりました~  作者: 愛庵苦労


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第2話 最弱テイマーの始まり②

【名前:】

【年齢:15】

【職業:なし】

【固有スキル:テイマー(スライム系)・絆魂約】


雫は再びステータス画面を呼び出した。


「うん……やっぱり名前欄は空白のままね。若返った影響かしら。……不便だから、自分で付けるしかないわよね」


彼女は小さく息を吐き、考え込んだ。


「水瀬雫のままじゃ、異世界人丸出しで目立つし……。雫の形はティアドロップっていうし……ティア、でどうかしら」


決めた瞬間、なんだか肩の力が抜けた気がした。

ティアは改めて、目の前の巨大な白いスライムを見つめた。


「あなたも、名前がないと呼びにくいわよね。白くて、ふわふわで、大きな……マル? シロ? おもち? ……どれもしっくりこない」


スライムはじっと彼女の言葉を待つように、ぷよん、と小さく沈んだり浮いたりしている。


(お気に召さないようね……)


ティアはしばらく悩んだ末、ぱっと顔を明るくした。


「そうだ! マシュマロから取って、『マーロ』にしましょう。『ゆっくり』って意味もあるし……私が『落ち着いた空間で、ゆっくりしたい』って思っていたときに、あなたが助けてくれたんだもの。なんだか、運命的な絆を感じる名前よね」


その言葉が終わらないうちに——


ぷるるるんっ!!


白いスライムが全身を大きく波打たせ、喜びを全身で表現した。


『……マーロ……うれしい……』


ティアの頭の中に、かすかで途切れ途切れの、けれど確かに優しい声が響いた。


「え……これ、念話? マーロの声……?」


『ティア……マーロ……はなせる……ようになった……』


「すごい……! 本当に繋がったのね!」


ティアは思わず童心に返ったようにマーロに抱きつき、頰をその柔らかい体に押し付けた。しかしすぐに我に返り、苦笑を浮かべる。


(……15歳の体になると、こういう無邪気な行動が自然に出ちゃうのね。困ったものだわ)


マーロも嬉しそうに全身を震わせ、ティアの体を優しく包み込むように形を変えた。その振動が、まるで温かいマッサージのように心地よかった。その温かさと柔らかさに、思わずため息が零れた。


(……最高。癒される……本当に、落ち着いた空間ってこういうことかもしれない)


ステータス画面に表示されていた固有スキルが、ふと頭をよぎる。


【固有スキル:テイマー(スライム系)・絆魂約】


「テイマー(スライム系)は理解できたけど……『絆魂約』って何かしら。ばんこんやく……? なんか晩婚臭がして微妙に引っかかるんだけど」


ティアは指を顎に当てて首を傾げた。


「絆と魂……魂の伴侶、みたいな? 約は契約とか約束の意味よね。……ま、実際に繋がったんだから、後でゆっくり調べればいいか」


――キュ~……


その時、ティアのお腹が可愛らしい音を立てた。


「…………あ」


急に現実的な空腹感が襲ってきた。転生してから何も食べていないことに、今更ながら気づいた。

マーロが心配そうに、ぷよん、と彼女のほうへ近づいてくる。

ティアは苦笑しながら、その白い体を優しく撫でた。


「大丈夫よ、マーロ。とりあえず……何か食べられるもの、探さないとね」


『……ティアも……ごはん……たべる?』


マーロの念話が、優しく頭の中に響いた。


「えっ? 食べ物あるの!?」


ティアの顔がぱっと明るくなったが、周囲を見回しても木々が広がる森の中。倒木がいくつか転がる小さな広場で、食べられそうな実やキノコすら見当たらない。


『……ここ……ここ』


マーロが縦に長く伸びるように震えながら、少し先へ移動した。

ティアが近づいて足元を見下ろした瞬間、目を丸くした。


「えっ……なに、これ……?」


そこには、マーロを遥かに超える巨大な生き物の残骸が、まるで分厚い絨毯のように広がっていた。大きな口と長い尻尾の形が残り、全体に手のひらサイズの硬い鱗がびっしりと並んでいる。所々が不自然に膨らんでいるのが気になった。


「巨大な……ワニ? それともトカゲみたいな……?」


鱗は厚く堅牢そうで、とても食べられるとは思えない。


『……まりょく……たくさん……お肉……おいしい……』


「魔力がいっぱい入ってるお肉、かぁ。やっぱりここは魔法のある世界なんだね。でも、人間はこんな硬い鱗がついた皮は食べられないよ? 歯が折れちゃう……」


せっかくのマーロの気遣いが嬉しかったが、ティアは苦笑しながら首を振った。


『……にんげん……これ好き……? おかね?』


マーロが触手のように体の一部を伸ばし、鱗を一枚丁寧に剥ぎ取って差し出してきた。


「これがお金になるの? へえ……」


ティアが受け取ると、ズッシリとした重量感があった。手のひらより一回り大きく、金属ほどではないが、レンガ一つ分くらいの重さがある。


「ちょっと重い……荷物を入れる鞄もないし、たくさんは持てないね。もったいないけど、持てるだけ持っていこうかな」


『……それなら……マーロが……はこぶ……』


次の瞬間——


しゅるんっ!


巨大なワニ皮が、一瞬でマーロの体内に吸い込まれるように消えた。


「えええっ!? なくなった!? どうなってるの、マーロ!?」


『……しゅうのう……した』


マーロが得意げにぷるるんと全身を震わせた。


巨大な残骸があった場所には、もう何も残っていない。


代わりに、数匹の小さなスライムたちが「何すんだよ!」と怒りを露わにするように、ぴょこんぴょこんと激しく跳ねていた。


「あ……あのスライムさんたち、食事中だったんじゃない……?」


さっきの膨らみは、皮の内側で肉を食べていた彼らの姿だったのかもしれない。


『…………しゅん……はんせい……』


マーロが小さく縮こまるように震えた直後、ティアの目の前に、ネギトロのように柔らかく刻まれた綺麗なお肉の山が、するりと現れた。


「すご……解体までできるんだ。収納機能、めちゃくちゃ便利じゃん!」


ティアは感心しながら、マーロの体を優しく撫でた。マーロは照れたように小さく波打つ。


怒りを露わにしていた小さなスライムたちが、ぽよんぽよんと跳ねながらお肉の山に群がってきた。


彼らはマーロとぷるぷる震え合いながら、ボディランゲージで意思疎通をしているようだった。マーロがお肉を返して謝ったのか、スライムたちはすぐに機嫌を直し、嬉しそうに食事を再開した。


「それにしても、マーロと全然大きさが違うね……」


ティアは食事中のスライムたちを眺めながら、感心したように目を細めた。

マーロは彼女の背丈ほどもあり、横幅もたっぷりある。一方、他のスライムたちはメロンからスイカ程度のサイズで、こちらが標準的な姿なのだろう。

すると、マーロから少し照れたような念話が届いた。


『……マーロは……ティアの……そんざい……感じて……おおきく……なった……』


要約すると、森で死んでいたドラゴンの死骸を見つけ、魔力たっぷりの肉を食べていたところにティアの存在を感じたらしい。「会いたい、繋がりたい、助けたい!」と思った瞬間、体が急激に大きくなったという。


「……ドラゴンだったの、あれ!? この森、平和そうに見えてヤバい生き物住んでるじゃん……」


ティアは軽く頭を抱えた。


ティアは改めて驚きつつも納得した。名付けをしたことで収納機能が使えるようになったのも、そのタイミングからだったようだ。


『……この……スライム……たちも……ティアの……なかまに……なりたい……って』


「えっ、本当に?」


四匹のスライムが、期待に満ちた目——というか、全身の震え——でこちらを見つめていた。


先ほど森のヤバさを知ったばかり。自身の安全のために仲間を増やすのは理にかなっている。ティアは少し迷った末に頷いた。


「いいわ。テイムするよ。どうすればいいの?」


『……あたまを……つけて……なまえを……つける』


「頭をくっつけて、名前を付ける……だけ?」


マーロにそんなことした覚えはなかったが、落下を受け止めた時に私の身体全体を受け止めた。きっとその時に頭にも触れたのだろう、と手順を踏んでいたのだと納得する。


スイカサイズのスライムを両手で持ち上げ、おでこをそっと合わせる。なんだか不思議な儀式めいているが、異世界ではこれが普通なのだろう。


最初は赤く炎のような揺らめきを持つスライム。


「あなたはグレン! 紅蓮の炎から取ったの。カッコよくて呼びやすいでしょ?」


ぷるるんっ!!


グレンが全身を激しく震わせ、喜びを爆発させた。触れると不思議と優しい熱が伝わってくる。


次に、透き通った蒼いスライム。


「あなたはヒョウカ。氷の華のように綺麗で、癒されそうな名前よ」


ヒョウカはゆら~んと柔らかく波打ち、ひんやりとした感触でティアの手に軽く触れてきた。


続いて、風と稲妻を思わせる緑のスライム。


「あなたはジンライ! 疾風迅雷って感じでしょ。格好いいわよ」


ジンライはふわりと浮かび上がり、一回転して風を巻き起こした。


最後に、どっしりとした茶色のスライム。


「あなたはホウジョ。豊穣の大地をイメージしたの。安心する名前よね」


ホウジョは「ごんっ」と地面を軽く震わせ、大きく体を波打たせて肯定した。

四体を眺めたティアは、ふっと柔らかい笑みをこぼした。


「グレン、ヒョウカ、ジンライ、ホウジョ……これからよろしくね。私の相棒になってくれると嬉しいな」


すると四体のスライムが同時にぷるぷると震え合い、まるで歓迎の合唱のように全身を波打たせた。


その瞬間——


スイカサイズだった彼らの体が、みるみるうちにマーロと同じ大きさへと成長した。


「うわっ……! 本当に大きくなった……」


ティアは苦笑しつつも、頼もしく育った仲間たちを見て胸が温かくなった。

落ち着いたところでステータス画面を開くと、名前欄に「ティア」と表示されていた。名無しじゃなくなってティアはホッと胸をなでおろした。


【名前:ティア】

【年齢:15】

【職業:なし】

【固有スキル:テイマー(スライム系)・絆魂約】

【テイム:マーロ(聖神守護)】

【テイム:グレン(炎帝紅蓮)】

【テイム:ヒョウカ(蒼帝氷海)】

【テイム:ジンライ(風帝迅雷)】

【テイム:ホウジョ(岩帝豊穣)】


テイムされたスライムたちが、新たに追加されていた。


「……はぁ」


ティアは額に手を当て、深々とため息をついた。


「聖神守護? 炎帝紅蓮? 蒼帝氷海? ……また大げさな称号がついているのよ。なんで私のスライム軍団は……いきなりファンタジー最強クラスの肩書きなの? 強いに越したことはないけど……ねぇ」


彼女は苦笑しながらも、嬉しそうに周囲を見回した。


マーロをはじめ、五体の巨大スライムたちが嬉しそうに彼女の周りを囲む。スイカサイズだった彼らが、名付けと同時にマーロと同じくらいの大きさに成長した姿は圧巻だった。


「まあ、いいか。派手なのは派手で……守ってくれるなら文句は言わないわ。

ただ、目立たないように気をつけないとね……元管理職として、目立つのは苦手なんだから」


ティアは軽く頭を抱えつつも、口元には柔らかい笑みが浮かんでいた。

青い空の下、ティアの異世界生活は、予想以上に賑やかで、予想以上に温かいものになりつつあった。

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