力を合わせて
「ブライアン……どうして?」
弱々しい声のミランダ。
どうしてブライアンがこんな所にいるのだろうかと疑問に思った。
ここは闇のドラゴンの体内である。
普通の人間ならばまず入ろうとは思わない。
「そんなの、お前を助ける為に決まってるだろう!」
ブライアンは力強く、真っ直ぐミランダを見ていた。
その黄色い目に引き込まれてしまいそうだ。
つい先程ブライアンへの想いを自覚したミランダ。
嬉しくはあるけれど巻き込みたくないという気持ちでいっぱいだ。
今までのミランダなら罵倒の言葉でブライアンを遠ざけようとしたりする。しかし、闇のドラゴンの粘液により消耗しているミランダはそれが出来なかった。
「どうして私なんかを助けようとするのよ……?」
代わりに出てくるのは、弱々しい言葉。
すると、ブライアンはミランダを抱きしめた。
ミランダの心臓がトクリと跳ねる。
「そんなの、お前が好きだからに決まってる! 好きな女を守れずにみすみす死なせるなんて、男として、いや、ブライアン・ソイルとして一生の恥になるからな!」
真っ直ぐ伝えられたブライアンからの言葉。
「ブライアン……」
嬉しさと共に、ミランダの弱々しい真紅の目からは涙が零れる。
「ミランダ、とにかく今はこれを飲め。オリヴィア嬢が調合した回復薬だ」
ブライアンから小瓶を渡されたミランダ。
透明な小瓶の中には、柔らかな光を放つ神秘的な液体が入っている。
「オリヴィアお義姉様が……!」
ミランダの表情は少しだけ明るくなった。
「ああ。オリヴィア嬢はお前が闇のドラゴンの体内に入ったと聞いてかなり取り乱していたぞ。全く、オリヴィア嬢が大切なら、彼女に心配かけるなよ」
呆れたようにため息をつくブライアン。
「……そうね。元々私はオリヴィアお義姉様の為に動いていたのだから」
ミランダはフッと口角を上げ、オリヴィアが調合した回復薬を飲み干した。
癖のない味で飲みやすかった。
オリヴィアが光の魔力を込めたのであろう。体の内側がじんわり温まり、力がみなぎってくる。闇のドラゴンの粘液でダメージを受けていた体がみるみるうちに回復した。
流石はオリヴィアが調合した薬だと感じるミランダである。
「それから、これも」
ブライアンはミランダの首にネックレスのようなものを着ける。
淡い光を放つ石は、神々しく神秘的である。
「オリヴィア嬢が作ったお守りだ。オリヴィア嬢の光の魔力が込められている。俺も作ってもらった。このお陰で闇のドラゴンの体内でもダメージを受けずに済んでいる」
ブライアンの首元には、ミランダが着けてもらったものと同じ石のネックレスが着けてあった。
「オリヴィアお義姉様からは……もらってばかりね。でも、ありがとう。力が出て来たわ」
ミランダの真紅の目に、力強さが戻る。
「おう、それなら良かった」
ブライアンは安心したようにフッと笑った。
その時、ミランダはハッとする。
今のミランダは自身の炎の魔力を最大限にしている。
ブライアンは燃えているミランダの体を抱きしめているのだ。
普通なら炎がブライアンに移ってもおかしくはない。
「ちょっとブライアン、離れて! 燃えてしまうよ!」
慌ててブライアンを離そうとするが、消耗した体力により引き離すことが出来ない。
「大丈夫だ。ルシアン様に炎の加護を授けてもらった。だからお前の炎の魔力で俺はダメージを負わない。ついでに念の為ルシアン様には水の加護も授けてもらっている」
ルシアンは炎と水、二種類の魔力を持つ。
だから土の魔力しか持たないブライアンに炎と水の加護を付与することが出来るのだ。
各魔力の加護を受けた者は、一時的にその魔力の攻撃などを受けてもダメージを負わないのである。
「それに、オリヴィア嬢からも光の加護を授けてもらった。光の加護って凄いよな。どんな攻撃も弾いてくれる」
ブライアンはハハッと歯を見せて笑った。
通りで強い光のオーラをまとっているのかとミランダは納得していた。
その時、闇のドラゴンの苦しそうな呻き声が響く。
「ところでブライアン、外の様子はどうなっているの?」
「ああ、闇のドラゴンによる負傷者が大勢いて大変だ。でも俺が来た時は、闇のドラゴンはかなり弱ってた。希望は見えそうだ」
「そう、良かったわ」
ミランダはホッと表情を綻ばせた。
「ミランダ、これ、ルシアン様とオリヴィア嬢が共同で開発した魔法爆弾だ。これを闇のドラゴンの体内に置いて脱出するぞ。良いな?」
「ええ、分かったわ」
ミランダは頷いた。
ミランダとブライアンは、オリヴィアとルシアンが共同で開発した小型の魔法爆弾を闇のドラゴンの体内の奥の方へ投げ込んだ。
小型でも威力はかなり高いらしい。
ミランダとブライアンは爆発に巻き込まれないように急いで闇のドラゴンの体の外へと向かう。
その際、かなり体力を消耗していたミランダはブライアンに横抱きにされていたのが少し気恥ずかしかった。
二人が闇のドラゴンの体から脱出したのと同時に、闇のドラゴンの腹部が大きく爆発した。
闇のドラゴンは苦しそうに呻き声を上げながら、ついには動かなくなり命を落とすのであった。
「良かった……。闇のドラゴンを……倒したのね……」
ずっとミランダが果たそうとしていたことが、今果たされた。
そして今までのダメージの蓄積により、ミランダが意識を手放すのであった。
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