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死にたがりのミランダ  作者: 宝月 蓮
貴族学園編

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23/34

予兆

 ミランダとアレックスの決闘から数日後。

 ミランダ、オリヴィア、ブライアン、ルシアンの四人は偶然空きコマが揃ったので、サロンでのんびりと過ごしていた。

(ああ、オリヴィアお義姉(ねえ)様、紅茶を飲む姿も絵になるわ……! 流石は『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛させる』のヒロイン!)

 ミランダは音を立てずに紅茶を啜るオリヴィアの姿にうっとりと見惚れていた。


 思わず触りたくなるような、艶やかな銀色の長い髪。白磁のようなきめ細やかな肌に、神秘的な紫の目。

 まるで女神のようだとミランダは常に思っている。


「ミランダ、何て顔してるんだよ」

 隣に座るブライアンは相変わらず呆れたような表情だ。しかし、ミランダに焼きたてのマドレーヌを取り分けてくれた。

「……ありがとう、ブライアン」

 オリヴィアを愛でることを邪魔されたせいか、やや不満なミランダ。しかしマドレーヌの柔らかな甘さが口の中に広がり、ミランダの心は少しだけ落ち着くのであった。


「そういえば先程、領地経営科の方々が仰っておりました。最近、イシュケ辺境伯領周辺で瘴気が増幅しているようだと」

 音もなくティーカップを置いたオリヴィアの目は、憂いを帯びていた。

(イシュケ辺境伯領周辺で瘴気……)

 ミランダの表情が変わる。

「ああ、私もその話は先程の授業後に聞いた。瘴気が増幅すると、危険な魔獣が増えるから心配だな。特に、イシュケ辺境伯領付近には、魔獣が生息する森がある」

 オリヴィアと同じように、音もなくティーカップを置き、腕を組み考える素振りをするルシアン。

「騎士科にはイシュケ辺境伯家関係者がいないので、そのような話は今オリヴィア嬢やルシアン様から初めて聞きました。ただ、イシュケ辺境伯家は魔獣討伐でも常に功績をあげていますし、瘴気を浄化する魔石も開発しているから、滅多なことにはならないとは思いますが……」

 滅多なことはないだろうと言うブライアンだが、その黄色い目は少しだけ影が見えた。

 恐らくブライアンも心配なのだろう。


(……『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛される』と全く同じ展開だわ。オリヴィアお義姉様が学園在籍中に、イシュケ辺境伯領で瘴気が発生する。でも今から数年後に分かることだけど、この瘴気は通常とは違ったのよね。数年後、魔獣暴走(スタンピード)が起こって、史上最悪の魔獣……闇のドラゴンがタフマ王国全体を襲う……)

 ミランダは前世で読んだ原作を思い出していた。

(私はよくある転生者みたいに知識やチート能力はない。それに、この先闇のドラゴンがタフマ王国を襲うって言っても、私なんかの言葉を信じる人はいないでしょうね。まだタフマ王国は特に問題が起こっていなくて平和なのだから。言ったところで頭のおかしい奴扱いよ。それに、私には人脈もないわ)

 ミランダはチラリと正面に座るオリヴィアに目を向ける。

(オリヴィアお義姉様なら、信じてくれるかもしれない。だけど、そのせいでオリヴィアお義姉様まで頭のおかしい奴扱いされて傷付いてしまうのは嫌よ。それに、そのせいでルシアン様との婚約が白紙になってはいけないわ。私はオリヴィアお義姉様に、ルシアン様と結婚して幸せになって欲しいから)

 ミランダ再びオリヴィアから視線を外し、膝の上の手に目を向けた。

(私は今、その為に鍛えているのよ。私が闇のドラゴンと戦って、オリヴィアお義姉様の平和な生活と幸せを守る。私はその為だけに存在しているのよ)

 ミランダは口を固く結び、膝の上で拳をギュッと握りしめた。

(もっと強くなりたいわ)






☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨






 空きコマが終わり、騎士科の授業に移ったミランダ。

 魔獣を模した魔道具との模擬戦授業である。

(魔獣十体……イシュケ辺境伯領で瘴気が増幅しているし、このくらいなら普通にありそうね。それならば……!)

 ミランダは全身に炎の魔力をまとわせる。

 ミランダのその様子に、教師や騎士科の生徒達は目を見開き信じられないものを見るかのような表情になる。

 ミランダは火だるまのようになっていた。

 そしてそのまま魔獣を模した魔道具に突っ込んで行ったのだ。

 魔道具は十体全部見事に修復不可能なくらいに破壊された。

(……きっと数年後にタフマ王国に襲いかかる闇のドラゴンは、こんなものじゃないでしょうね。もっと鍛える必要があるわ)

 ミランダは全身にまとっている炎の魔力を消し、ため息をついた。

「えー……騎士科の君達は、学科の名前通り騎士を目指しているだろう。確かに騎士は有事の際に身を挺して王族の方々や民達を守る必要がある。だが……ミランダ・エードラムのような真似はしなくて良い。あれはやり過ぎだ」

 騎士科の教師からはそう言われる始末である。

 騎士科の生徒達も、異様な目でミランダを見ていた。


「ミランダ、お前何かあったのか? さっきの戦い方、いつも以上に異様だったぞ」

 授業が終わると、ブライアンにそう声をかけられた。

 ブライアンの黄色い目は心配に染まっている。

「ブライアン……」

 ミランダは口ごもる。

(『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛される』では、闇のドラゴン襲来の時にミランダ()もブライアンも命を落とす。凄惨な死に方だったから、ざまぁとは思ったわ。だけど……)

 ミランダはブライアンを見つめる。

「ミランダ……? 一体どうしたんだよ?」

 ブライアンはほんのりと頬を赤く染めながら戸惑っている。

(今のブライアンはオリヴィアお義姉様に酷い態度を取っていない。それにオリヴィアお義姉様は原作ヒーローのルシアン様ともう婚約している。今のブライアンはざまぁされる必要はないわ。……ブライアンも死なせない)

 ミランダは軽く深呼吸をし、拳をギュッと握った。

「何でもないわ。ただ、未来に向けて覚悟を決めただけよ」

 ミランダは口角を上げる。

 真紅の目は真っ直ぐ力強かった。

「は? 何だよそれ?」

 ブライアンは戸惑いつつも、表情を和らげていた。

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