若干のモヤモヤ
学園ではいつの間にかミランダのファンクラブが出来ていた。
「あの、ミランダ様、これを受け取ってください」
紳士淑女科の女子生徒はほんのりと頬を赤ながら、ミランダに手紙を渡す。
「ありがとうございます……」
ミランダは若干表情を引きつらせながら手紙を受け取った。
(これ……明らかにラブレターよね……。同性からラブレターをもらうとは……)
ミランダは内心複雑だった。
「ミランダ、モテモテね」
隣にいたオリヴィアはクスクスと楽しそうに微笑んでいる。
「オリヴィアお義姉様の方が素敵ですのに」
ミランダは苦笑した。
(いや、本当にどう見ても私なんかよりオリヴィアお義姉様の方が素晴らしいわ。オリヴィアお義姉様にこそ、女性ファンがいてもおかしくないはずなのに。それに、可憐で女神のようなオリヴィアお義姉様は男性人気も凄いはず。まあ、ルシアン様と婚約して相思相愛だから、オリヴィアお義姉様にアプローチする男性はいないとは思うけれど)
「ありがとう。ミランダにそう言ってもらえると、嬉しいわ」
オリヴィアは心地の良い春風のような笑みである。
そんなオリヴィアの笑みを見て、ミランダは表情を綻ばせた。
「それにねミランダ、貴女は私の自慢の義妹よ。頑張り屋で、強くて格好良いわ」
「オリヴィアお義姉様……!」
オリヴィアに褒められてミランダは真紅の目をキラキラと輝かせた。口元はニンマリと緩んでいる。
「見て、ミランダ様のオリヴィア様大好きモードよ」
「剣術などでのキリッとした面とはまた違って可愛らしいですわ」
「格好良さと可愛らしさのギャップが堪らないのよね」
ミランダの様子を見た学園の女子生徒達はキャッキャッとテンションが上がっていた。
ミランダは彼女達の反応に気付いていない。
「あら、ミランダ、あそこにいるの、ブライアン様よね?」
「え?」
オリヴィアの言葉に、ミランダは怪訝そうな表情になる。
オリヴィアが示した方向には、確かにブライアンがいた。
ブライアンは複数人の女子生徒に囲まれていた。ブライアン本人は後退りしながら、少し困惑気味の表情である。
「ブライアン様、令嬢達から結構人気なのね」
オリヴィアは意外そうに紫の目を丸くしていた。
「ブライアンが……ねえ」
ミランダにとっても確かに意外な状況だった。
ブライアンとは一緒にいることが多かったが、彼が今まで異性に囲まれているところを全くと言って良い程見たことがなかったのである。
(何というか……別に私には全然関係ないんだけど……何かしら? このモヤモヤは……。別にブライアンがどうしようと、私には全然関係ないのに)
ミランダは異性に囲まれているブライアンがどこか面白くなかった。
☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨
「ブライアン、さっきご令嬢方に囲まれていたわね」
騎士科の授業が終わり、ミランダはブライアンにそう声をかけた。
「ああ、さっきの休み時間のことか。あの令嬢達の目当てはお前だよ、ミランダ」
ブライアンは辟易とした表情でため息をついた。
「え?」
予想外の言葉に、ミランダは素っ頓狂な声を出して真紅の目を丸くする。
「さっきのは全員ミランダファンクラブの令嬢達だ。俺とミランダがよく一緒にいるところを知ってるから、『ミランダ様のことを教えてください』って来られたんだよ。ミランダ、お前、どれだけ令嬢達にモテたら気が済むんだ?」
先程のことを思い出したようで、ブライアンはげっそりと疲れたような表情を浮かべていた。
「何だ、そうだったのね……」
ミランダはどこかホッとしていた。
(いや、私何でホッとしているのよ?)
ミランダは自身がホッとした理由が分からず戸惑ってしまう。
「それに、俺だけじゃない。オリヴィア嬢はミランダの義姉だし、ルシアン様もミランダといることが比較的多い。だからあの二人にもミランダのことを聞きに来る令嬢達がいるみたいだぞ」
「まあ……。オリヴィアお義姉様達にも。きっとそれはご迷惑よね……」
ミランダは申し訳なくなった。
(オリヴィアお義姉様、ご自身の趣味やルシアン様とのイチャイチャタイムが奪われているということよね。でも、どうしたら良いのかしら?)
ミランダはうーん、と考える。
「俺には迷惑じゃないのかよ」
ブライアンは呆れ気味にため息をついた。
「まあ、オリヴィア嬢は嬉々としてミランダの良いところを令嬢達に話しているみたいだ。ルシアン様はミランダ本人に聞くよう言っているみたいだがな」
「オリヴィアお義姉様が……!」
ミランダは真紅の目を輝かせた。
(オリヴィアお義姉様が私の良いところを……!)
しかし、ミランダの真紅の目は曇る。
「私に良いところってあるのかしら?」
ミランダが浮かべた笑みは、弱々しかった。
思い出すのは前世のこと。
母親の世話を押し付けられ、父親からは怒鳴られてばかりの日々。
とても自分に良いところがあるとは思えなかった。
「お前なあ」
ブライアンは盛大にはあっと超大息をつく。
「あるだろ、色々……」
小さくそう呟いたブライアンの表情は複雑そうだった。
ミランダはそれに全く気付いていない。
「ミランダ・エードラム嬢!」
そこへ、ミランダを呼び止める者が現れた。
男子生徒である。
胸元の紋章は、領地経営科のものだった。
男子生徒は何やら覚悟を決めたような表情である。
「……何でしょうか?」
ミランダは立ち止まり、きょとんとした表情になる。
何となく面倒臭そうな予感がした。
「私は領地経営科のアレックス・マイムだ」
(……マイム公爵家の方ね。公爵家の方が私に何の用かしら?)
ミランダは怪訝そうな表情になる。
一応国内の有力貴族の家名は頭に入れているミランダである。
「貴女に……決闘を申し込む!」
ミランダはアレックスから高らかにそう宣言されたのであった。
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