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死にたがりのミランダ  作者: 宝月 蓮
貴族学園編

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18/34

友達がいないミランダ、凄い相手と知り合う

(わたくし)は、魔法薬学研究クラブでルシアン様と過ごしたり、クラブで友人が出来たけれど、ミランダが(わたくし)やブライアン様、ルシアン様以外の方と一緒にいるところを見たことがないわ。ミランダ、せっかく魔法薬学研究クラブに所属しているのに、(わたくし)達としか話さないのだもの」

「確かに、オリヴィア嬢の言う通りだ。ミランダ、お前友達いないだろう」

 心配そうなオリヴィアと、呆れ気味のブライアンである。

「ブライアン、煩いわね。私に友達は必要ないわ。大切なのは何よりもオリヴィアお義姉様よ」

 ミランダはムッとしてブライアンに言い返す。

「それは嬉しいけれど……」

 オリヴィアは困ったように微笑み、目尻を下げる。

「でもオリヴィア嬢にもオリヴィア嬢の時間がある。お前、いつまでもオリヴィア嬢にベッタリじゃ駄目だろう。他に友達作れよ」

 ブライアンは、はあっとため息をつく。

 まるで保護者のようである。

「友達……ね」

 ミランダは苦笑して前世を思い出した。


 ミランダは前世、父親から産後うつになった母の世話を押し付けられて生活していた。

 父親は母親だけを愛していた。おまけに前世のミランダが生まれたせいで母親が産後うつになり精神を崩したと父親はミランダを責め立てた。

 当然、母親の世話を押し付けられていたミランダは、友達を作ったり学校生活を楽しむ暇がなかったのだ。


(今はクソ親父や精神を崩した母親はいないけれど……)

 ミランダは表情を曇らせる。

(でも『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛される』では、この先タフマ王国に危機が訪れる。オリヴィアお義姉様が貴族学園を卒業した後に。私は、オリヴィアお義姉様を守る為だけでなく、その危機に対応する為に騎士科を選んだわ。騎士団で鍛えているのも、その為なのだし)

 ミランダは原作の展開を思い出していた。

(タフマ王国の危機に私が立ち向かって、私はそこで……)

 ミランダはギュッと拳を握る。

 真紅の目は覚悟が決まっている様子だった。


「ミランダ?」

「おーい、どうした?」

 純粋に心配そうなオリヴィアと、呆れながらも若干の心配を滲ませるブライアン。

「いいえ」

 ミランダは口角を上げ、首を横に振った。

(正直、学園生活の楽しみ方や、友達の作り方は分からない。だけど、オリヴィアお義姉様に心配をかけるわけにはいかないわ。それに、ブライアンから友達がいないって思われることも何だか癪に思えて来た。……私なりに、楽しんでみようかしら。もちろん、備えるべきことには備えつつだけど)

 少し迷いがありつつも、ミランダは自分なりに学園生活を楽しむことにした。






☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨






(学園生活を楽しむ、友達を作ると言っても……どうしたら良いのかしら? オリヴィアお義姉様を心配させたくないし……)

 その日の放課後、ミランダはうーんと悩んでいた。

 前世で友達がいなかったミランダ。おまけにミランダとして転生してからは、基本的にオリヴィアのことばかり考えていたのだ。


 その時、ふととある女子生徒の姿が目に入る。


 小柄で、紫の長い髪をなびかせた後ろ姿。

 大きく重そうな荷物を持つその姿はどこか危なっかしい。


 ミランダは思わず体が動いていた。

「あの、荷物、お持ちするのお手伝いします」

「まあ……」

 振り向いた小柄な女子生徒は、ミランダを見てピンク色の目を丸くした。

 小動物のように可愛らしい顔立ちである。

 大きな荷物の後ろからちらりと見えた制服の紋章は、紳士淑女科のものだった。

「あ……!」

 ミランダは彼女の顔を見てハッとした。

 ミランダにとって見覚えのある顔だったのだ。

 と言っても、ミランダが一方的に知っているだけである。いや、ミランダ以外でも、タフマ王国の国民であるならば絶対に知っておくべき存在だ。

「突然のお声がけをお許しください。ウルスラ・タフマ王女殿下。騎士科のミランダ・エードラムと申します」

 ミランダはカーテシーで礼を()った。

「楽にしてちょうだい」

 王女ウルスラの言葉により、ミランダはゆっくりと体勢を戻す。


 ウルスラ・タフマ。タフマ王国の第二王女だ。年はミランダよりも二つ上。貴族学園での学年は、飛び級したミランダよりも一つ上である。

 タフマ王国の貴族学園は、王族、上級貴族、下級貴族など、成績に関しては身分問わず平等だ。おまけに学園内での王族に対する多少の無礼や無作法は基本的に咎められることはない。度が過ぎた場合は不敬罪が適用されるが。


「殿下、お荷物が重そうです。お手伝いいたしますが」

 ミランダは恐る恐る手を出した。

 エードラム伯爵家で家庭教師から習った通りの所作であるが、王女相手に少し緊張してしまう。

「そうね。じゃあお願いするわ」

 ウルスラはクスッと笑い、ミランダに荷物を半分託す。


 ウルスラは王女で、周囲を見ると護衛らしき存在も確認出来る。しかし、学園内では自立が重んじられるので、王族であっても自分のことは自分でする必要がある。だからウルスラは一人で重い荷物を持っていたようだ。


「王女殿下、私は騎士科で体も鍛えております。もう少しお持ちいたします」

 ミランダはウルスラが持っていた残り半分の荷物のうち、そこから半分をひょいと軽々持った。

「まあ、ミランダって力持ちなのね。格好良いわ」

 ウルスラはピンクの目を輝かせた。その目はまるでルベライトを彷彿とさせるようである。

「それにねミランダ、貴女のことは知っているわ。飛び級で一年早く入学した騎士科の生徒よね」

「はい。王女殿下に覚えていただけて光栄でございます」

 緊張しながらも、ミランダは口角を上げた。

 ウルスラよりも身長か高いミランダは、彼女を見下ろす形になっている。

 仕方がないこととはいえ、不敬ではないだろうかと少しヒヤヒヤするミランダであった。


「ところで王女殿下、こちらの荷物はどこまでお運びいたしましょうか?」

(わたくし)の……王族専用のサロンまでよ」

「承知いたしました」


 タフマ王国の貴族学園には、王族専用のサロンがある。

 ミランダはそこの入り口までウルスラの荷物を運んだ。

 王族専用サロンは、王族からの招待がないと入ることが出来ないのだ。


「ミランダ、ありがとう。助かったわ。スマートに手伝ってくれた貴女、とても格好良かったわ」

 ウルスラはうっとりとした視線をミランダに向けていた。

 上目遣いのその姿は非常に愛らしいものである。

「いえ、王女殿下のお役に立てて光栄です」

 王族と接する機会が初めてのミランダは緊張しながら微笑んだ。

「ウルスラで良いわ」

「え……?」

 ミランダは真紅の目を丸くする。

「ミランダ、王女殿下ではなく名前で呼んでちょうだい」

 ウルスラはふふっと可愛らしい笑みを浮かべている。

「えっと……ウルスラ殿下」

 戸惑いながらもミランダはウルスラの名前を呼ぶ。

 するとウルスラは満足そうにピンクの目を輝かせた。

「ええ、それで良いわ、ミランダ。これからもそう呼んで」

 ウルスラは楽しそうに笑っている。

 凄い相手に知り合ってしまったと思うミランダであった。

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