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死にたがりのミランダ  作者: 宝月 蓮
貴族学園編

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16/34

貴族学園入学

 いよいよ貴族学園入学の日。

 ミランダは学園の制服に身を包み、鏡の前に立つ。


 ふわふわとしたピンクの髪に、真紅の目。気が強そうな顔立ち。


(やっぱり『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛される』のミランダの見た目だわ)

 鏡に映る自分にため息をついた。

 中身は違うけれど、目の前にいるのは『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛される』に登場する悪役。前世のミランダが嫌いで仕方なかったキャラ。

(毎日オリヴィアお義姉(ねえ)様の姿を拝めるのは幸せだけど、朝起きた時真っ先にこの姿を見ないといけないからテンションが下がる……)

 ミランダはため息をついた。


 その時、ミランダの部屋の扉がノックされる。

 オリヴィアだ。

「ミランダも貴族学園の制服に着替えたのね」

 ふふっと朗らかなオリヴィア。

 制服姿も良く似合っていた。


 ちなみに、ミランダの左胸元には騎士科の紋章が付いているが、オリヴィアの左胸元に付いているのは領地経営科の紋章だ。

 学科ごとに紋章が違うのである。


(ああ、オリヴィアお義姉様の制服姿! しかも『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛される』の展開とは違って誰からも虐げられていないから見窄らしくボロボロなんかじゃない! ああ、素晴らしい!)

 ミランダは先程のため息など忘れ、うっとりとしていた。

「あら、ミランダ、制服のリボンが解けているわよ。結び直してあげる」

 オリヴィアはクスッと鈴の音が鳴るように笑い、ミランダの制服のリボンを結び始める。

 ミランダは制服に着替える途中だったのだ。

(オリヴィアお義姉様……いい香り……)

 ニマニマと緩みっぱなしの頬。密かにオリヴィアの香りを嗅ぐミランダは若干変態っぽかった。






☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨ ☨






 エードラム伯爵家の馬車で貴族学園まで向かったミランダとオリヴィア。

「オリヴィア、ミランダ嬢」

 学園前にルシアンがいた。


 漆黒の髪に緋色の目。その顔立ちはまるで精巧な彫刻のよう。制服の左胸元にはオリヴィアと同じ領地経営科の紋章が付いている。

 ルシアンの姿を見てうっとりする令嬢達は多くいた。


 どうやらルシアンは今日入学するオリヴィアを待ってくれていたようだ。

 自分はオリヴィアのおまけだろうとミランダは思ったが、それで良い。

 ミランダはルシアンに挨拶をした後、オリヴィアとルシアンの後ろへ移る。

 ミランダは制服姿のオリヴィアとルシアンが並ぶところを楽しむことにした。

「お迎えありがとうございます、ルシアン様」

「ああ。いよいよオリヴィアも入学か。オリヴィアがいる学園生活、楽しみだ」

 ルシアンはオリヴィアに優しげな目を向けている。

(良いわ……! 良い……! 学園入学初日から推しカプ成分豊富……!)

 ミランダはニマニマと頬が緩みっぱなしの状態だ。

「おーいミランダ、また顔が気持ち悪いことになってるぞ」

 そこへやって来たのはブライアン。

「何だ、ブライアンじゃない」

 ミランダはブライアンを一瞥した。

「何だ、とは何だよ」

 ブライアンは苦笑する。

「それにしても、まさかお前が俺と同じ学年で入学するとはな」

 ミランダは飛び級試験を受けたことで、オリヴィア、ブライアンと同じ学年になったのだ。

(まさかブライアンとも気心知れた中になるなんて、転生当初は思いもしなかったわ。あの時の私はブライアンのことを『捨てられた光の乙女、冷酷公爵に溺愛させる』に登場するクズキャラとしか思っていなかったけど、今のブライアンは全然違う。怠惰で努力嫌いで楽な方に流されるグズなブライアンはどこにもいないわ。それに……)

 ミランダはブライアンを凝視する。


 ブロンドの髪に黄色の目。騎士団で鍛えられたがっしりとした体。顔立ちも中々整っている。

 制服姿も割と様になっていた。

 もちろん、ブライアンの左胸元にはミランダと同じ騎士科の紋章が付いている。


(……ルシアン様程ではないけれど、ブライアンも結構顔が良いのよね。何かムカつく)

 ミランダはムッと口を結んだ。

「さっきから一体何なんだよ?」

「別に」

 ミランダはフイッとブライアンから視線を逸らした。

 前を歩くオリヴィアとルシアンは何やら楽しそうに談笑している。

 二人からはどことなく幸せオーラが漂っていた。

(ああ、オリヴィアお義姉様とルシアン様の制服イチャイチャタイム……! 壁になって一生見ていたい……!)

 再びニマニマと口角を緩めるミランダ。


 しかし、ふと周囲の様子に気付く。

 貴族学園に通う令嬢達の中にはオリヴィアにチクチクとした視線を送っている者達がいる。

(あれは……紳士淑女科の女子生徒達だわ……)

 ミランダは彼女達の制服の左胸元を確認した。

(まあ、ルシアン様はタフマ王国でも力のあるプラーミア公爵家の後継ぎ。令嬢達にとっては憧れの存在よね。オリヴィアお義姉様と婚約していても、何とかしてルシアン様の妻になりたいと思う方々は少なくないはず……)

 ミランダの真紅の目は真っ直ぐオリヴィアに向く。

(私は令嬢達の嫉妬からオリヴィアお義姉様を守るわ! オリヴィアお義姉様には何一つ憂うことなくルシアン様と幸せな学園生活を送って欲しいのだから!)

 ミランダは立ち止まり、ギュッと拳を握りしめた。

「おいミランダ、何止まってるんだよ? 入学式始まるぞ。入学初日から遅刻とか笑えないからな」

「もう、分かっているわよ」

 ミランダはブライアンの声で我に返る。

 何だか癪に触ったので、ミランダは軽くブライアンの肩を叩いた。

「痛っ。本当に何だよ?」

 ブライアンは苦笑しながらため息をつく。

「何でもないわよ。とにかく、入学式が始まってしまうわ。行きましょう」

 ミランダはブライアンと共に入学式会場へ向かうのであった。

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