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第三話 事実と自己紹介

随分遅くなりました。

すみません。

あの後、俺は暫くおっさんの声が聞こえなかった。


何度も何度も話しかけられている事に気付いたのは、あのおっさんに“いい加減にしろ”と殴られたからだ。


「確かにこの状況は絶望するしかないだろうな。だけど、この状況を打破する方法がある」

「本当……ですか……?」


さっきあんな話を聞いたばかりだからか、俺の口からは掠れた小さな声が出てしまった。我ながら恥ずかしい。

だが、今はその“方法”を聞かなければならないので、とりあえず何事も無かったような振りをする。


「いいか、よく聞けよ…」

「ああ…」


結論から言うと、この世界は何者かに機械を改変されたらしい。

そいつが、俺が最初に思った“謎の球体”は、どうやらそいつがこっそり入れ替えたもので、それの内側には特殊な電波をキャッチし、溜め込む性質があり、その溜め込んだ電波をゲーム機に流し込むのが、あのカラフルなコードだったらしい。ゲーム機の方から出ていたコードは、本来、送られてくるはずだったものに取り付けるものだった。


俺達がこの世界で死ぬと、体内に死なない程度の強力な電波が流れるようになってしまったのだ。

しかも、死なない程度でもずっとではさすがに命が危ういため、時折、電波を弱くするという鬼畜ぶり。


そして、俺達(プレイヤー)が全員死ぬ(ゲームオーバーになる)と俺達(プレイヤー)全員に、謎の球体から強力な電波が一斉に放出され、死んでしまうらしい。

それに無理矢理、本体のゲーム機との繋がりを断ち切ろうとすれば、その時にも強力な電波が流れて、断ち切られた者も断ち切った者も死ぬ。


まさに八方塞がりだ。


だが、それを打破するのが、“この世界のモンスターをすべて見つけて倒すこと”らしい。

そのハッキングした奴に改悪された部分は、主にモンスターに現れてるそうだ。

改悪されたところは、一つの種族につき全く同じらしい。

だから、一匹でもその種族と交戦してくれればその改悪された部分を直せるらしい。

それに、元々このゲームには“モンスター事典”という機能がある。これは読んで字の如く、そのまま一度でもそのモンスターと戦っていればある程度の情報が載るものだ。

この機能があればどんな敵と戦ったのか一目瞭然、と言うわけだ。


そして、成功して無事に全種族のモンスターのデータを集め、その改悪された部分を直してもらえば、消えた筈のセーブボタンも戻ってくるらしい。


だが、この方法には欠点がある。


すべてのモンスター……つまり、中ボスもラスボスもすべて倒さなければならないってことだ。

普通のゲームだったら何とかなるかもしれない……だが、如何せんこのゲームの中にいるのはたったの366人だけだ。

それに、これは小説に出てくるものとは違い、“全員死ななければ現実での死にならない”のだ。

つまり他とは違うところは、『少数』の奴だけが強くても『全員』が強くなければ意味が無いのだ。


此処では『少数』の奴だけが強くても、そいつらが死んだ時のために『他の全員』が強くなければ、何時まで()ってもこの世界に閉じ込められる事になる。

だから、この世界では全体の『協力関係』を築かなければならず、一人でも『PK(プレイヤーキル)』なんてものが存在してしまえば、俺達が辿る運命は間違いなく“死”だろう。

何ていったって俺達には特殊スキルがある。情報とか防御関係で無い限り、たった一人を相手するだけでも骨が折れるだろう。


だから、この方法は元の世界に戻れる唯一の方法であり、常に“PK”という存在のせいで“死”と隣り合わせだという事だ。


この方法を聞いたときは、またショックで呆然となりかけた。

が、さっきみたいな恥ずかしい思いをしたくないので、なんとか意識を呼び戻す。


この方法じゃ本当に“死”と隣り合わせじゃないか。

こんなの冗談じゃない。きっとよく考えれば何かいい方法がある筈だ。

そう思っていても一向に思い浮かばず、それが益々この状況を意識させ、俺も焦る一方だった。


「おいおい。お前、何でそんなに焦ってんだよ」

「……別に……焦ってなんか無い」


俺が考えてると、不意にあの人が話しかけてきた。

この状況でその飄々とした態度にイラッとしてしまい、おもわず少し子供っぽく、素っ気無い態度をとってしまった。

今年で高校生になる筈だというのに、あの態度は流石に無いだろうと自分でも思ってしまった。

そう一人で悶々と考えてると、あの人がクックッと笑いながら話しかけてきた。

おもわず条件反射で睨む。


「お前、あんまり喋らねぇくせして、顔には出るから少し面白くてな」


……俺って、顔に出てたんだ。だから俺が爽耶に照れ隠しで(いつもより)きつくに接すると、時折あの無駄にムカつくくらい慈愛に満ちた顔を向けてくるのか。なんか納得。

でも、何で言ってくれなかったんだよ。お前のせいで滅茶苦茶(かなり)恥ずかしい思いをしちまったじゃねえか。くそっ……。


「別にそんなんじゃねぇよ」

「おーおー、今時のツンデレは怖いねぇ」


そう、おどけた様に言う姿にまたもや苛立ってくる。

こいつ、なんでこんな態度なんだよ糞爺。


「……で、何か俺に用か?」

「ん?別に大した事じゃねぇよ。ただ、自己紹介でもしようと思っていてなー。……んで、お前はなんて言うんだよ?」

「………名乗るときは自分から、だろ?」

「おっ、そうか(わり)ぃな」


そう簡単に教えたくなかったので、相手から名乗るように施す。

すると案外なにも文句を言わずに、余裕の表情でかえしてきた。だからか、やはり大人と子供の違いが分かり悔しい。


「名前は……PN(プレイヤーネーム)でいいよな?」

「ああ」

「俺は『武蔵』。名前の由来は宮本武蔵。この世界では、みんなで協力しあう事ができるようにしたいなーと思っている。」


そういうと、今度はお前とでも言うような視線を寄越してきた。


「俺は『神楽』。名前の由来は愛猫の名前。この世界では……」



「元の世界に戻れるように、全力を尽くしたいと思っている」


そういうと、あの人……『武蔵』はニヤッと笑った。


「これからよろしくな、神楽」

「ああ、よろしく頼む」



そういって、奇妙な出会いをした。

前より少なくてすみませんでした。

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