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桜魂×影縫 第1章第2話 夜桜の縫い手

その夜、福田朋広は夢を見た。

雨の中、誰かの手が自分の胸に触れる。温かいのに、痛い。

目を覚ますと、団地の一室に夜明け前の光が差していた。胸の奥の違和感が、まだ残っている。


「……昨日の兄ちゃん、なんやったんやろな」

黒いコートの男——クロトと名乗った。

妙に落ち着いた声で“心を縫う”とか言うてた。

オカルトでも宗教でも興味あらへんけど、彼の目だけは忘れられん。


原付は廃車、仕事もまだ探せてへん。

けど、今はなぜか「誰かに会いに行かんなら」と思う。

胸ポケットのスマホが微かに光り、画面に“桜型の影”が浮かんだ。


「また、や……。これ、なんやねん」

触れた瞬間、空気が裂けた。桜の花弁が逆光に浮かび、そこに“糸”が走る。

まるで夜空を縫うように、黒い影と光の桜が絡み合っていた。


その糸の向こうに、彼は見た。

あの黒いコートの男——そして、知らない少女たちの影。

現実と夢の境界で、朋広は再び“世界の縫い目”を覗いていた。

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