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第三話「声なき雨と、ひとひらの記憶」

夜、朋広は眠れなかった。

耳の奥で、あの事故の日と同じ音が繰り返し響く。

雨が窓を叩くたび、記憶の中の声が蘇る。

「……まだ、呼んでくれるんやね」


夢の中、見知らぬ少女の影が振り返る。

彼女の顔は霞んで見えない。

だが、雨に濡れた制服の裾と、微かに震える指先だけが鮮明だった。


目を覚ますと、スマホの画面が再び光っていた。

〈桜影装具・反応値:12%〉


朋広は首を傾げる。

電波の届かない時間に、誰かが“アクセス”しているようだった。


窓の外、街灯の下で傘を差す人影が一瞬だけ動いた。

彼は知らない。その影が“桐生さくら”だということを。

桜はまだ咲かない。けれど、魂だけが確かに揺れていた。

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