出会い~まぁ出会わなくても僕にはどうでもいいんですが~
「さてどうしたものか」
最上階の屋上は僕のすみかである。ここ半世紀は誰も来なかったというのに今近場で有名な殺人鬼いや殺幽鬼の彼女はまさに屋上から落ちようとしている。
幽霊たちと戦って勝ったのはいいが、そのまま屋上の外に吹き飛ばされてしまったようである。
彼女の細い腕で自分を支えるというのにも限度があるようで、もう間もなく落ちようとしている。
僕は手をあごに当ててこれを傍観すべきか死んだ他の幽霊たちのためにここは自分が仇を討つべきかはたまた助けてあげようかなぁと酔狂な行動に出るべきか
「まぁ助けますか」
僕は長年幽霊をしてきたので実体化が得意である。
「大丈夫かい?僕は幽霊だけど君を助けてあげるよ」
彼女は驚いた顔をしたが抗おうとはしなかった。
「貴方はいい人ですね」
しかし助けた彼女の僕を見つめる視線はいただけない。これは恋する乙女ではないだろうか?
半世紀ぶりに見る乙女である。感慨深いところがある。
「幽霊なのにいい人」
そうぼそりと呟くや否か彼女はセーラー服をひるがえして僕の前から走り去った。
「いやぁ、本当に乙女だね」
まぁいかんせん僕が彼女を助けたのは別に彼女に恩を売りたかったとか一目ぼれをしたからという理由ではない。ただ人が目の前で死ぬというのは幽霊であっても少しいただけない。
もちろん僕も元人間である道徳の勉強くらいは小学校でやっている。
だが、その日のうちにこの廃ビルでは彼女によって恋のライバルになる可能性の幽霊(性別・女またはメス)の大量虐殺が始まった。
始めはまず独身女から消えていった。




