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無敵のpartner相棒(仮)  作者: 羽柴真一


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第3章 望み 誰かのために

第2章で真一達は、この不思議な世界の検証を続けました。宝くじ。 株価。 未来の出来事。

けれど、目先の利益を追うほど、世界は思い通りには動いてくれません。

それどころか、新しい疑問ばかりが増えていきます。

もしこの世界が、単なる未来予知の場所ではないとしたら。

もし本当に試されているものが別にあるとしたら。

第3章のテーマは「望み」です。

それでは第3章『望み 誰かのために』をお楽しみください。

 小林静江は香苗の墓前にいた。隣には羽柴和彦が黙ったままたたずんでいる。

 その静江の頬には光るものが流れていた。

「かなちゃん、お父さん連れて来たよ。黙ったままでいいから、聞いてあげてね?」

 そう言うと静江は和彦の後ろに下がる。

 和彦は初めて訪れた自分の娘の墓の前でどんな言葉を言えば良いのか、悩んでいた。

 無理矢理に近い状態で、彼岸の墓参りに連れて来られた和彦は、一言だけ喋った。

「香苗、今まで認知出来なかった。すまん」

 そう言うと和彦もまた泣いた。行方不明になった和彦を探し出し、自分の娘の墓前で話したい事を、和彦の口から聞きたかった。

「何故あなたはいなくなってしまったの?」

「香苗と私を残したまま、ずっと帰りを待ってたのに、あなたの事を」

 和彦の口からは言えない事。

「すまん、今は話せない、真一が気づいたら話させてくれ」

 そう言うと和彦は香苗の墓に一礼をしてその場から離れる。

「随分勝手なのね?」

 恨み節とも取れるセリフを吐き出し、静江は香苗に話しかける。

「かなちゃん、お父さんまだ本当の事話してくれないみたい、香苗にならと思ったんだ、もう少し待ってあげて」

 そう言うと静江もまた娘の墓を後にする。しばらく並んで歩いていたが静江は和彦にお願いする。

「全部を話してとは言ってないよ、せめていなくなった理由だけでも教えてよ」

 和彦は頷き「わかった、話すよ、でもこの話は覚悟がいる話なんだ、そこはわかってほしい」

 二人は墓苑の近くにあるカフェに入った。飲み物を注文し、黙ったままの和彦に静江はそっとささやく。

「和ちゃん、何が有ったの?」心配そうに見つめる静江に

「ごめんな静っち、さっきも言ったけど全部は無理だ」

「最初、香苗が死んだ事を知った時、僕は日本にいなかったんだよ。ある人から頼まれて海外に出国してた」

「プログラムについての話さ、今も真一が関わっている検証実験についてなんだ」

 静江は分かっていた。今まで一緒に仕事をしてきたのだから、相手が何を考え、何を望んでいることを。

「うすうす私もそうじゃないかって思ってたわ」

 静江は和彦の顔をみつめ、和彦が嘘をついていないか確認した。

「本当にそうなのね」

「約束させてはくれないか?僕は静っちや真一の敵じゃないから」

 そう言って和彦は口を噤んだ。

 同じ頃。

 私達はまだ知らなかった。この世界が、望みそのものを問いかける場所だということを。

 瞳と合流した真一は、瞳へある提案をしてみた。

「木島さん、聞いて欲しい、もしかしたら俺達、この世界のルールをよく分かって無いのかも知れない。俺はこの世界が、欲望という望みを実現できる場所では無いかと思っていたが、違った」

 真一は正直に瞳へ伝える。

「そうね、私も同じなの。あなたと同じ様に、同じ事をしていたみたいね」そして二人とも俯いてしまった。

「違う目で見てみないか?もしかするとこれって逆なんじゃないかな?」

 真一はそう言って瞳の目を見る。

「欲を出さずに、その反対をしてみてはどうかな?」

「それもそうね、この世界って何か一筋縄じゃ行かない感じがするわ」

 本当にそう思う真一だった。

「よし、それじゃぁどんな事をしてみようか?」

「そうね、知らない人に良い事をしてあげるとか?」

 真一は考えてみた。「色んなパターンを試してみよう」

 そう言って具体的に何をするかを話し合う。

「まず一旦元の世界に戻ってみないか?そこで出会った人に、何かをしてあげるとかはどうだろう?」

「そうね、それをしてみましょうか」

 真一は瞳を連れてコンビニに入る。

「俺が先に行くから、木島さんも後からついてきて」

 そう言って鏡の前に立ち、元の世界に戻って行く。

「一人ずつなのね、これって」瞳は聞いていたことと違う転移の仕方に驚くが、自分にも出来るかもしれないと、その方法を試してみた。

 二人は、連れ立って駅前にやってきた、人込みは閑散としていて、ほとんど人はいなかった。

「羽柴さんあの人よく見て、何か困ってるみたいよ」そう言って瞳は真一に伝える。

「本当だ、あのお婆さん荷物が重そうで、階段を上がるの困ってるな」

「行ってくる」瞳にそう伝え、真一はその老人に話しかける

「お婆さん、手伝いましょうか?」

「有難い、手伝ってくれるんかい?」

 そう言うと真一に持っている荷物を預ける

「これは今夜の材料さ、家は人数が多いから大変なんだよ」

 快く引き受ける真一。

「これ位なら平気さ」

 真一はお婆さんにさよならの挨拶をして瞳の元へ帰る。

「これで一つ目だな」「そうね、他にはあるの?してみたい事」

 瞳は尋ねるが真一はなかなか返事をしない。

「どうしようか迷ってるんだ、このまま色んなパターンを試すのか、一度あの世界へ転移するのかを」

 そう言って瞳を見つめる。

「そうね、一つづつ確かめるのも良いかもしれないわね」

 同意する瞳を連れて、またコンビニへ入る真一達、そして次に転移した時、二人は確信した。

「やっぱりいたね、あのお婆さん」「ごめん木島さん、ちょっと声かけてくる」そう言って真一はお婆さんに挨拶する。

「大丈夫ですか?お婆さん僕の事覚えてますか?」

「誰だいあんた?」真一は顔が引きつっていた。


第3章『望み 誰かのために』を読んでいただきありがとうございました。

真一と瞳は、欲を叶える方法ではなく、人のために何かをするという選択を始めました。

一方で、香苗の墓前では、残された者達がそれぞれの想いと向き合っています。

誰かに会いたい。

気持ちを伝えたい。

許してほしい。

人の望みは決して一つではありません。

そして、どうやらこの世界は、その望みそのものを見つめ直させる場所なのかもしれません。

次回、第4章。

少しずつ、この世界の本当の姿が見え始めます。

それではまた次回。

私は言いましたからね。

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