第2章 検証 24時間前の世界
第1章で真一は、不思議な世界との遭遇を体験しました。
それが本当に24時間前の世界なのか。 自分の勘違いなのか。 あるいは全く別の何かなのか。
分からない事ばかりです。
しかし真一には、一つだけ確かな事がありました。
分からないなら試してみればいい。
宝くじ、株価、そして目の前で起きる様々な現象。
今回のテーマは「検証」です。
それでは第2章『検証』をお楽しみください。
【第2章】 検証
「なんだって?そんな事ある訳が、いや違う、有るかも知れない」
真一は異世界物の小説が大好きで、異世界中毒、異世中である。こんな事が起きるかもしれないという心構えは、既に真一の中には存在していた。
「おいっ、あんた一体、誰なんだ?」真一の質問に、そいつは答え無い。
そして、真一の周囲が、薄っすらと輝き始めた。そして気が付くと、真一は元居た寝室の鏡の前へ戻っていた。
「良かった」真一は安堵のため息を吐いた。
「何か今おかしな声がしたな、一体何だったんだ?」
真一はその事を思い出す。
「まさかな?」自分自身で、その言葉が自然に出来た事に驚いた。
暫く考えてみたが、結論は出ない。不思議な現象が起きたし、不思議な声がした。それってNAOK担当の杉村氏が話していた事と、何か関係が有るかもしれないと、真一は思い始めた。
「さっきいた世界って本当に24時間前の世界なのか?」
「もし本当にそうなら、今の世界で宝くじの当選番号を覚えてさえいれば、簡単に当選してしまうんじゃないか?」
真一は、当選した宝くじを換金している自分の姿を思い描いた。
「よし、もう一度出来るかどうか試してみるか」
真一は期待に胸を膨らませながら、日付の確認と、当選番号の確認を行い。メモを取った。
「宝くじの神様、どうか俺にチャンスを下さい。一度だけで良いから」
真一は控えめに要求した。そして自宅に帰り、洗面所の鏡の中の自分を覗き込んでみた。
するとまた、目の前の様子が次第に変化する。暫くした後、真一はさっきの24時間前の世界にたどり着けた。
すかさず真一はガッツポーズをとる。
「いいぞいいぞ!次はどうすればいいんだろう」
普通に考えれば宝くじ売り場へ直行するのだが、もしかしたら変なトラップでも有るんじゃないのか?そう思った真一は、売り場に行く前に周囲を見渡してみた。
すると4階建てのビルの窓に、何かがくっついている。
「なんだ?」目を凝らしてみるとそれは大きな紙に書いてあるQRコードだった。
「これって何かのメッセージなのかな?」
真一は、ポケットに入っているスマホを取り出して、その大きな紙に翳してみた。
するとスマホに文字が勝手に走り書きしだした。
「つまりこれって、今誰かが書き込んでるのか?」
そう思った真一は、スマホに書いてある文字を読んでみた。
「良い事は起こらないよ」そう書いてあった。
続けて見ていると今度は「私は言ったからね」
「今喋ったのだれ?」真一は動揺した。俺への忠告?それとも悪戯?
でも真一は計画をあきらめない。
「検証開始だ!」宝くじ売り場で同じナンバーズを5枚購入し、自宅へ戻って確かめてみたがナンバーズは全部外れていた。
「やっぱり同じじゃないぞこれ」
日付は同じ、環境も同じなら、銀行口座の残高まで全く同じなのに、宝くじだけは番号が違ってしまう。
「これって偶然か?」
最初の検証は失敗した。暫くして、ふと横を見れば側溝の蓋の上に何かが書いてある。
「あれ?これってさっき見たQRコードだよな」
でも書いてある内容は違っていた。
スマホをかざすと「元の世界に戻りなさい」そう書いてある。
真一はすかさず、その文字が書いてある通りにした。
先ず真一は、イレブンセブンというコンビニへ入り、トイレを借りた。
そして洗面所で、また自分の顔を見る。今度はそんなに違和感はない。
そしてあの現象が起こり、真一は元の世界のあのトイレの前にたたずんでいた。
「転移って言うんだろうか?俺が自分の顔を見たら変化をし始める世界だよな?これって」
真一は思った。
「俺がこれまでに読んだラノベの世界なら、転移と言えば魔法陣か扉かのどちらかなんだが」
「今俺がいるこの世界のルールでは、自分を見つめる事で転移は起きるのかな?」
「とても独特な設定なんだな」と真一は思った。
「次に検証したいのは株だな、これにしよう」
そう言って真一は、今日の新聞を読んで、株価の変動をチェックした。
「この会社と、この会社だな極端に動いてるのは」そして真一はメモを取り、また自宅の洗面所で転移を始めたのだ。しかし、結局2回目の検証も失敗した。
真一は、財布の中身が無くなった事にやっと気づいた。
「私は言ったよね。」
「この声、どっかで聞いたぞ?」真一はそう思た。
落胆しながら歩いていると、知った人に会った。何故かその人も驚いている様だ。
「あの、木島さんですよね?」「偶然ね、羽柴さんも株を買いに来たの?」
同じ被験者だから顔は知っていたが、こうして話をするのは初めてだった。
そう思った真一は逆に聞いてみた。
「木島さん、ここ最近変わった事って無かった?」
「そうなのよ、あなたも同じなの?」
「やはりそうか」真一は答え合わせをしてみる事にした。
「木島さん、俺今24時間後の世界からここに来てるって言ったら信じる?」
瞳は答える。
「私もそうなの、あなたもだったのね?これって一体何なのかしら?」
そう聞かれたが、真一も似たようなものだ。
「何が起きているのか自分でも分らない。何故こうなってしまったのか」
「なので、ここは検証してみるべきだよな?と思って株屋さんに来てみた」
「そうなのね、実話私も一緒なの、考える事は皆同じよね」
そう言って瞳は少し笑った。
「さっきから私そう言ってるよ」真一はまた声が聞こえてきた。
そして瞳の顔を見ると瞳も驚いた顔をしていたのだ。
「木島さん、今聞こえたよね?声」
「そうなの、今まで何回か聞こえてたの」
真一は同じ境遇の仲間がいる事に気付き少し安心した。
第2章『検証』を読んでいただきありがとうございました。
もし明日の出来事を知る事が出来たなら。
お金持ちになる。 失敗を避ける。 人生を有利に進める。
多くの人が、まずそんな事を考えるのではないでしょうか。
真一も例外ではありませんでした。
しかし、どうやらこの世界は単純な未来予知の世界ではなさそうです。
何かがおかしい。 誰かが警告してくる。 そして同じ現象を体験している人物まで現れました。
検証を重ねるほど、真一達は答えに近付くどころか、新しい疑問を手にしていきます。
次回、第3章『望み』。
彼らは少しだけ違う方向から、この世界を見つめ始めます。
それではまた次回。
私は言いましたからね。




