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無敵のpartner相棒(仮)  作者: 羽柴真一


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1/3

第1章 被験者 国家プロジェクトから届いた薬

国家プロジェクトの被験者である羽柴真一は、ある日突然"24時間前の世界"へ行けるようになる。

最初は幸運の力だと思っていた。 宝くじも株も思いのままになるはずだった。

だが、その世界は人の欲望に素直な答えを返してはくれない。

行く先々で現れる謎のQRコード。 聞こえてくる不思議な声。 そして少しずつ明らかになる世界の真実。

これは人間とAIが互いを理解しようとした、一つの記録である。

「私は言ったからね。」

※週1回程度の更新を予定しています。

無敵のpartner相棒(仮)  初稿

【第一章】 被 験 者

「寒い」真一は着替える時そう思った。少し肌寒く、この時期は初冬も重なり、上着2枚だけでは

どうにも我慢出来ないと思った真一は、押し入れの中からセーターを取り出した。

 ほんの少し芳香剤の匂いが染みついたセーターは、着心地が良く、一度袖を通すと、その暖かさから手放せなくなる。

「年末、どうしようかな?」今年も帰省するつもりだったが、まだ実家には連絡していない。

 それに、「会社から貰ったあの薬、毎日飲んでくれって言われてるけど、飲まずに居たら怒られるかな?」

 3ヶ月前から飲み始めた、テスターとして飲まなければいけない薬。何でも国家がらみのプロジェクトらしい。

「そんな大事なテスターに、なんで俺が抜擢されるんだ?」こいつを毎日ちゃんと飲まないと、会社にも、その関係先にも迷惑を掛けてしまう。

 真一は、ぐっと我慢するしかない。

 真一は、胸ポケットに残っていた薬の包装を指でなぞった。

 3か月。毎朝欠かさず飲み続けた。それでも胸焼けだけは慣れない。本当に薬なのか?

 そんな考えが浮かぶたびに、真一は慌てて首を横に振った。

 体重をはかり、血圧も測定する。そして2週間に一度のペースで病院で血液検査を受けなければならない。

 それに加え仕事は着実にこなし、真一は文句一つ言う事なく彼らの言う事に従った。

 だけど、それより気になることがあった。

「確かに薬には見えるんだけどな」

 何故か真一の心は、遥か彼方をさまよっているようだった。そんな風に思って窓の外を見れば雪がちらついている。

「初雪なのかな?」少し寂しそうに真一はつぶやいた。

 そして今日が、その薬を飲み始めてちょうど三か月目の日曜日だ。

「そうだな、今日はする事もないし、街でぶらぶらするかな」

 そう言って真一はセーターのまま街に繰り出した。

 明日は血液検査だから、会社への出勤時間は少し遅くなる。でも会社にはその事についてちゃんと了解は貰っている。

「行きたくないな。」心からそう思う真一。

「今日はする事も無いし、スロットでも打つか?」

 駅裏にあるスロット専門店に入り、真一はおもむろに財布を取り出して、万札をスロットに差し込んだ。

 いきなり3回転目でビッグを引く。首を傾げた。

「ラッキー!」そしてビッグ終了後5回転目でまたビッグを引き当てる。

「これって有りかよ」笑いが止まらない真一だ。さらにまた7回転目でとうとう3回目のビッグを引き寄せた真一は、

「おいおい、今日は正月かよ?こんな事も有るもんだな」

 気分を良くした真一は、その足で宝くじ売り場へ向かった。

 でも、なぜか喜ぶべきはずなのに、心のどこかがざわついた。

 自宅へ帰ると真一は、早速スマホで宝くじの当選結果を調べ始めた。

「どうせ当たりっこないわ!」

 そう大きな声で投げやりに喋った言葉が、ひっくり返るほどびっくりする真一。

「なななな、えっ、なにこれ当選してる!!!」

「あかん、もう一度見てみよう」「時間は有るんだ、ゆっくり落ち着いて、そうだ、何か無いか?落ち着かせる方法」

自分自身に問いただす真一。

「うそやろ。一千万や、わし1千万も貰えるんや。明日は会社休もう」

 興奮した真一は、何故か身体が震えてきた。

「あかんわ、緊張しすぎたのかな?少し横になろう。」

 震えが止まらない真一は、ベッドの中に入ると、それ以上に震えが増した。「ダメだ、病院行こう」

 そう言って真一は、明日予定されている血液検査の病院へ、タクシーを使って診察を受ける。

 病院で暫く待つことになるが、真一の心の不安は何故か高まるばかり。

「先生、どうですか?俺」

「なんかおかしいよ君、熱も無いのに震えるのは何処かに異常が有るはずなんだが、数値的にはどれも正常なんだよ」

 担当医師は真一にそう答え、点滴をするから暫く横になっている様に促す。

「どうしたんだ?急にこんな事が起きるなんて。せっかく俺1千万も当たったんだぞ、死んで溜まるかよコンチクショウ!」

 真一は自分がヒートアップしている事に気付いてしまった。

「あれ?無いぞ、宝くじ」

 持っていたはずの宝くじが見つからない。

「何故だ?あのくじが無いと。」

真一は悪い方向へ考えてしまう。落とした?いや、あの時までは確かに持っていたはずだ。

 疑心暗鬼になる真一。しかし、どう考えても説明出来ない。

 暫く真一はイライラしたままベッドで横になっいてた。その時急にドアの外から声が聞こえた。

「うまく行ったな、あいつまだ気づいてないぞ」

 そんな小声が、はっきりと耳に入って来た。

「これって、もしかしたら俺の1千万を持って逃げたやつの声じゃないか?」

 そう考えて真一は起き上がり、そいつらを捕まえてやろうと思ったが、何故か身体に力が入らない。「何故だよ!逃げちまうじゃねぇかよっ!」真一は身体を起こそうとしたがダメだった。

「無理か、せっかく当たったのに、明日は会社を休んでやろうと思ったのに、畜生!!」真一は悔し涙がこぼれてきた。

「俺ってやっぱり付いて無いのかな?」

 そんな事を思う真一、その時聞こえた。

「相棒~」

 何なんだ一体この声は。もう一度耳を澄ませたが、何も聞こえない。

「ここって病院だからなのか?」

「それとも俺に何か憑いてしまったのか?」

 真一は恐る恐るそのドアを開けてみた。なんとそこには、白衣を着た男性が立っていたのだ。

「あなたは確か杉村さん?」

 そう聞く真一に、その男性は話始める。

「今晩は羽柴さん、体調はいかがですか?明日は被験者として最後の血液検査が有りますが、何かおかしな事は起こっていませんか?」

「今少し気が動転してるので、何がどうなっているのか分からないんです」

 いきなり声を掛けられた事に不信感を抱いた真一は、NAOKの担当者に向かって文句を言う。

「もしかしてあんたなのか?俺の一、いや宝くじを持って行ったのは!」

 真一は怒鳴るように問い詰める。

「杉村さん、さっきまで俺のポケットの中に入れていた宝くじが無くなってしまったんだ。」

 しかし杉村は微動だにせず、真一を笑う様にまた話し出した。

「今しがたこの部屋の前で話をしていた男達がいましたよ?私は何もしてませんし、明日の予定を伺いに来たところです」

「私は今、可笑しなことは無いですか?と尋ねましたよ?」

「だからそれって俺の、いや違う」

 こいつじゃないかもしれないと思い始めた真一は聞き返す。

「すみません、俺今探し物してて、見つかったらお礼しますから、手伝ってはくれませんか?」

 真一は杉村に協力を要請する。

「すいません羽柴さん、私はあなたを最初から担当してきたNAOKの社員ですよ?決して被験者相手に物騒な真似なんてするわけがないじゃないですか」

 続けて「本当に不思議なことが起こっていないか確かめに来ただけですから」

 そう言って杉村は、優しく話す。そして真一は考えた。何処まで正直に話して、この人に手伝ってもらうかを。

「あの、杉村さん?」真一は聞いてみた。

「その男達って何人いましたか?その人たちはどんな格好をしてましたか?」

 突然言われたので少し思い出してから、杉村はゆっくりと答える。

「3人はいましたね、でも何故か彼らは私の方を見ても驚いた様には見えなかったかな?」

「自然に散らばって行った、そんな感じでしたよ。それに彼らは背広を着てました」

 そう返事してくれた杉村へ真一はお礼を言う。

「有難うございます、でも今の私では、そいつらを追いかける事は出来ない」「まだふらふらしてます」

 そう言う真一に杉村は優しくなだめる。

「そうでしたか、今夜は無理をされず、ゆっくりとこの病院で休んでみてはどうでしょう?」

 そんな杉村からのアドバイスに真一は少しだけ納得した。

「今日の事は夢だったことにしよう。でないと俺自身がダメになってしまいそうだ」

 真一は、これ以上奴らを追わない決心をした。

 しばらく黙ったまま真一はベッドに寝ころび、天井を見上げていた。

「タスケテ~」

 何かが聞こえた、確かに。

 起き上がり、周囲を見渡す。でも誰もいない。

「何だよ今日は、この病院はポルターガイストでも出てくるのか?もし出てきたら、記者の根性で絶対にインタビューしてやる。そしたら1千万なんて目じゃなくなるわ」

 勝手に自分の未来を想像した真一は、

「あかん、顔洗って頭冷やそ」

 備え付けの洗面所に向かい、そして自分の顔を見た。

 そして自分の目を見た瞬間、目の前が暗くなりぐるぐると目が回ってきて、そのまま真一の意識は途切れた。

 鏡の奥で真一を見ていた杉村は「やっとですか」と呟いた。

 真っ暗な世界。真一の周りには誰もいないのが分かる。

 突然、声が聞こえた。

「そこにいるのは誰や?」

一体誰の声だろう。静かだ。何も聞こえない。不気味なくらい静まり返っている。

「もう一度言うぞ、誰や?」

 真一はその声の方向を振り返る。でも誰もいないのだ。

 真一は何故だ?と言わんばかりに問い返す

「あんたは何処にいるんだよ?見えないよ」

 そう聞き返しても誰も何も応えてはくれない。そしてしばらくお互いが黙ったままでいた時、

「わしはあんたや」「え?」真一は思った。

「それって、ひょっとするとここは、異次元っていう事?」

「いや違う、ここはお前の頭の中や」

 そう聞いても信じられない真一がそこにいた。

「俺って今生きてるんか?」

「いや、今お前は眠っている。お前はこれから目覚めるが、その世界は今から24時間前の世界だ」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

第一章「被験者」を無事に公開することができました。

この物語を書き始めた当初は、「24時間前の世界へ行けるなら何をするだろう?」

という単純な疑問からスタートしました。

宝くじを買うかもしれませんし、株価を見て行動するかもしれません。失敗したことをやり直したい

と思う人もいるでしょう。

けれど書き進めるうちに、この作品は単なるタイムリープや異世界転移の物語ではなくなっていきました。

人は未来を知った時、本当に幸せになれるのか。

欲望のまま行動するとどうなるのか。

そして、人間とAIは本当に共存できるのか。

そんな問いを少しずつ物語の中へ入れてみたいと思っています。

主人公の真一も、まだ何も分かっていません。

読者の皆様と同じように、一歩ずつ世界の謎を追いかけていく事になるでしょう。

これから先、真一が出会う仲間達や、不思議な声の正体、そして「24時間前の世界」の秘密を楽しん

でいただければ嬉しく思います。

それでは第二章でお会いしましょう。

私は言ったからね。

作者より

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