ゴブリンシャーマン
「おい!」
エイデンの声が森中に響き渡る。
すべてのゴブリンが一斉に彼の方を振り向いた。
杖を掲げていたゴブリンシャーマンも詠唱を中断し、赤い瞳で憎しみに満ちた視線をエイデンへ向ける。
モンスターたちの背後では、六人の商人たちが震えながら叫んでいた。
「助けてくれ……!」
「誰かが来てくれた!」
エイデンはすぐには攻撃しなかった。
代わりに《Analyze》を発動する。
《Analyze:ゴブリンシャーマン》
ティン!
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ゴブリンシャーマン
レベル:58
ジョブ:シャーマン
HP:2,850 / 2,850
弱点 ・直接攻撃を受けると詠唱を継続できない。 ・近接戦闘に非常に弱い。 ・杖の先端にあるマナストーンが力の源。
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「なら――」
最初に狙うべき相手は決まった。
ゴブリンシャーマンは杖を高く掲げる。
「ブラアァァッ!!」
十数体のゴブリンウォリアーが一斉にエイデンへ襲い掛かった。
「来い!」
エイデンは斧を強く握り締める。
最初の一体が石斧を振り上げながら跳びかかる。
ガキィン!
その一撃を受け止めると、すぐさま鋭い一閃を返した。
ザシュッ!
ゴブリンは吹き飛び、光の粒となって消えていく。
《EXP +120》
二体目と三体目が同時に飛び込んできた。
《Searcher》の高まった反射神経を活かし、背後から突き出された槍をかわす。
そのまま斧の柄をゴブリンの胸へ叩き込んだ。
ドンッ!
体勢を崩したところへ――
もう一撃。
ザシュッ!
《EXP +120》
《EXP +120》
わずか数秒で三体が倒れたことで、残ったゴブリンたちの動きが鈍る。
しかし、ゴブリンシャーマンは再び杖を掲げた。
赤い魔法陣がエイデンの足元に浮かび上がる。
《Analyze》
スキル:Fire Burst
詠唱時間:3秒
エイデンは即座に駆け出した。
「遅い!」
魔法が完成する前に、ダリウスから譲り受けた短剣を投げ放つ。
ヒュンッ!
一直線に飛んだ短剣は――
パキッ!
杖の先端にあるマナストーンへ命中した。
杖に亀裂が走る。
「グアアァァッ!!」
未完成だった魔法が暴走し、シャーマン自身を巻き込んで炸裂した。
ドォォン!!
濃い煙が周囲を包み込む。
煙が晴れると、ゴブリンシャーマンは全身に傷を負い、膝をついていた。
「今だ!」
エイデンは一気に距離を詰める。
だが、斧が首へ届こうとしたその瞬間――
ゴブリンシャーマンが不気味に笑った。
「……?」
次の瞬間、地面から黒い根が飛び出し、エイデンの両足へ絡みつく。
「なっ!?」
体勢を崩した隙に、ゴブリンシャーマンは後方へ飛び退いた。
その直後――
背後の地面が震え始める。
ドン……
ドン……
ドン……
重々しい足音が森中へ響く。
ゴブリンたちは一斉に跪いた。
ゴブリンシャーマンでさえ頭を垂れる。
エイデンの背筋を悪寒が走る。
やがて正面の木々が次々となぎ倒され――
森の奥から、一体の巨大なゴブリンが姿を現した。
身長は四メートル近い。
全身には無数の古傷が刻まれ、その手には巨大な鋼鉄の戦斧が握られている。
頭上には文字が浮かんでいた。
《ゴブリンジェネラル Lv.70》
「……ボス?」
エイデンは目を見開く。
Search Barの情報では、ゴブリンジェネラルは《ゴブリン要塞》にいるはずだった。
「どうしてここに……?」
その瞬間、Search Barがひとりでに点滅する。
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《警告》
シナリオの変化を検知。
メインストーリーが本来のデータから逸脱しています。
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エイデンは歯を食いしばった。
まただ――
この世界は、彼の知るゲームとは少しずつ違う道を進み始めている。
ゴブリンジェネラルは巨大な戦斧を持ち上げる。
そして、その切っ先をまっすぐエイデンへ向けた。
「人間よ……」
低く重い声が森全体へ響き渡る。
「貴様は――」
「……忌まわしい匂いを纏っている。」
エイデンは息を呑む。
この魔物は――
今、言葉を話した。
そして、答える間もなく。
ゴブリンジェネラルは戦斧を地面へ叩きつけた。
ドゴォォォン!!
衝撃波が周囲の木々を次々となぎ倒す。
本当の戦いは――
今、始まった。




