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旅立ち

朝日がエファス村を優しく照らしていた。


村の雰囲気は一見いつも通りに戻ったように見えたが、住民たちは今なお東の森の一部が消失した出来事について語り合っていた。


彼らにとって、それは説明のつかない自然災害だった。


しかし、エイデンにとっては違う。


あれは――


すべての始まりに過ぎなかった。


もっと大きな何かが動き始める、その幕開けだった。



---


自室で、エイデンは再びUIを開く。


昨夜受け取ったばかりのクエストを見つめた。



---


メインクエスト


第一のガーディアン


目的 ・第一のガーディアンを見つける。 ・コア・フラグメントを入手する。


場所 ・ルノス遺跡



---


エイデンは静かに息を吐いた。


「推奨レベル七十五か……」


今の自分はまだレベル五十。


隠し職業《Searcher》を持っているとはいえ、ガーディアンと正面から戦えるほど強くはない。


「もっと強くならないと。」


そう呟くと、Search Barを開いた。


《エファス村周辺で最も早くレベルを上げる方法》


検索。


すぐに複数の結果が表示される。


その中で、一つの情報が目に留まった。



---


隠しクエスト


ゴブリン要塞


場所 ・ラヴィア山脈


推奨レベル ・50~60


報酬 ・大量のEXP ・Bランク武器



---


「隠しクエスト……」


エイデンは小さく笑う。


この場所は、彼が知るゲーム版には存在しなかった。


おそらく、《Searcher》になったことで初めて解放された情報なのだろう。



---


「エイデン。」


部屋の外からイヴの声が聞こえた。


「入って、母さん。」


イヴは小さな革袋を抱えて部屋へ入ってくる。


「ギルドのみんなと旅に出るって聞いたわ。」


エイデンは少し驚いた。


「誰から?」


「ダリウスよ。」


「次の遠征に参加するかもしれないって。」


エイデンは苦笑する。


「ずいぶん話が早いな。」


イヴは革袋を差し出した。


「お弁当よ。」


「パンと燻製肉、それから少しのお薬。」


「あなたのお父さんも旅に出る時は、いつもこれを持って行っていたわ。」


「父さん」という言葉を聞き、エイデンは黙り込む。


アーデンは本当の父親ではない。


それでも、イヴの優しさに胸が温かくなった。


「ありがとう、母さん。」


イヴは穏やかに微笑む。


「それに……」


「最近のあなた、お父さんにますます似てきたわ。」


その一言に、エイデンは照れたように笑うしかなかった。


心の中で静かに誓う。


(アーデンと同じ運命には、絶対にさせない。)



---


しばらくして、エイデンは村の門でダリウスと合流した。


「本当に行くんだな?」


ダリウスが尋ねる。


エイデンは頷いた。


「もっと強くなる方法を探したいんだ。」


ダリウスは満足そうに笑った。


「いい答えだ。」


そう言って、一振りの短剣を差し出す。


「昔使ってたやつだ。」


「今はもう使わない。」


エイデンは受け取った。


ティン!


《アイアンダガー》 ランク:C


「ありがとうございます。」


「まだ礼を言うのは早い。」


ダリウスは笑う。


「もっと良い武器を手に入れたら返してくれ。」


「約束します。」



---


出発前、エイデンは密かに《Analyze》を発動した。



---


アイアンダガー


ランク:C


耐久度:64%


効果 ・攻撃速度+5%


推奨 ・アイアンクリスタルを使用することでBランクへ鍛え直し可能。



---


「……。」


「武器も進化するのか。」


《Analyze》は再び新しい情報を示した。


進化できるのはモンスターだけではない。


武器もまた、成長できるのだ。



---


イヴとダリウスに別れを告げた後――


エイデンはついにエファス村を後にした。


目の前には、ラヴィア山脈へ続く長い街道が伸びている。


旅は穏やかだった。


木々の間では鳥がさえずり、ときおり行商人や村へ戻る冒険者とすれ違う。


しかし――


夕方が近づいた頃。


エイデンの足が止まる。


街道の真ん中に、一台の商人の荷馬車が壊れたまま放置されていた。


車輪は折れ、荷箱があたり一面に散らばっている。


だが、不思議なことに――


誰もいない。


エイデンは眉をひそめた。


「みんなどこへ行った?」


《Scan》を起動する。


ティン!



---


スキャン


生命反応 ・6


位置 ・左側の森の中


状態 ・負傷



---


「負傷……?」


その瞬間だった。


森の奥から悲鳴が響く。


「助けてくれ!」


「モンスターだ!」


エイデンは迷わず森へ駆け出した。


開けた場所へ飛び出すと、六人の商人が十数体のゴブリンに囲まれていた。


しかし、本当に目を引いたのは――


ゴブリンたちの後方に立つ、一体の黒いローブをまとったゴブリンだった。


杖を握り、その頭上には文字が浮かぶ。


《ゴブリンシャーマン Lv.58》


シャーマンは杖を掲げる。


赤い魔法陣が商人たちの足元に広がった。


「魔法……!」


エイデンはすぐに斧を抜く。


あの詠唱が完成すれば――


誰一人助からない。


大きく息を吸い込み、


そのまま茂みから勢いよく飛び出した。


「おい!」


すべてのゴブリンが一斉に振り向く。


エイデンは斧を肩に担ぎ、薄く笑った。


「戦いたいなら――」


「俺が相手だ。」

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