隠されたゲート
エイデンは、エファス村の集会所の床に現れた魔法陣を見つめたまま、その場に立ち尽くしていた。
木の床一面に刻まれた古代の紋様から、淡い青い光が静かに放たれている。
その中央では、新たに浮かび上がった文字がかすかに輝いていた。
《Administratorの間へと続く門》
「……あり得ない。」
エイデンはしゃがみ込み、その紋様の一つにそっと触れる。
冷たい。
異様なほど冷たい。
しかし、その瞬間――
彼の指先が魔法陣に触れた途端、UIが自動的に展開された。
TING!
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秘匿エリアを検知
Administrator Gateway
状態:ロック中
解放条件
・Authority Key ×1
・Seven Core Fragments ×0/7
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「Seven Core Fragments……?」
エイデンは眉をひそめた。
そのアイテム名は、ゲームの中でも、レンの記録の中でも、一度も見たことがない。
迷うことなくSearch Barを開く。
《Seven Core Fragments》
Enter
数秒後、検索結果が表示された。
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Seven Core Fragments
Holy Worldの世界の安定を維持する中核となる欠片。
全部で七つ存在する。
それぞれの欠片はGuardianと呼ばれる存在によって守られている。
これ以上の情報へのアクセスは制限されています。
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「……これだけか?」
さらに詳細を開こうとする。
しかし、画面はいつものように黒く染まった。
《アクセス権限が不足しています。》
「……厄介だな。」
Search Barですら、すべての情報にはアクセスできない。
レンの言った通りだ。
Administratorは、意図的に情報を隠している。
◇ ◇ ◇
「エイデン?」
突然、背後から声が聞こえた。
反射的にUIを閉じる。
振り返ると、そこに立っていたのはダリウスだった。
「こんな夜更けに何をしている?」
エイデンは苦笑いを浮かべる。
「いや……」
「集会所の方から妙な音が聞こえた気がして。」
ダリウスは建物の中へ視線を向けた。
だが、魔法陣はすでに跡形もなく消えていた。
「ふむ……。」
「何も見当たらないな。」
「気のせいだったのかもしれない。」
ダリウスは小さくうなずく。
「明日の朝、ギルドで会議がある。」
「レナがお前にも来てほしいと言っていた。」
「俺が?」
「ああ。」
「東の森の件について話すらしい。」
「分かった。」
ダリウスはエイデンの肩を軽く叩くと、そのまま集会所を後にした。
周囲に誰もいないことを確認してから、エイデンは再び床へ目を向ける。
だが、そこに魔法陣はもう存在しなかった。
まるで最初から何もなかったかのように。
◇ ◇ ◇
翌朝。
エファス村の集会所には、ギルドの冒険者たちが集まっていた。
レナは大きな地図の前に立ち、説明を始める。
「東の森の地図を作り直しました。」
彼女は白く変化した区域を指差した。
「この場所には……」
「もう入ることができません。」
「足を踏み入れると――」
「必ず元いた場所へ戻されます。」
一人の冒険者が手を挙げる。
「幻覚みたいなものか?」
レナは首を横に振った。
「違います。」
「何度も試しました。」
「まるで空間そのものが、私たちの存在を拒絶しているようでした。」
エイデンはすぐにDeletionのことを思い出した。
おそらく、あの場所は本当に存在しなくなっている。
今見えているのは、完全に消え切る前の空間の残滓なのだろう。
レナは参加者全員を見渡した。
「本日より――」
「東の森は立入禁止区域とします。」
「ギルドは王都へ報告を送り、」
「Rank A冒険者の派遣を要請します。」
全員が同意するようにうなずく。
だがエイデンだけは別のことを考えていた。
(強い冒険者が来れば……)
(むしろバッドエンドへ近づくかもしれない。)
◇ ◇ ◇
会議が終わり、エイデンは一人で家へ向かって歩いていた。
その途中――
Search Barが再び鳴り響く。
TING!
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新規クエスト
第一のGuardian
目的
第一のGuardianを見つける。
報酬
・Core Fragment ×1
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「……Guardian?」
エイデンはすぐにMapを開いた。
初めて、村の外に金色のマーカーが表示される。
場所はエファス村の遥か北。
《ルノス遺跡》
エイデンはSearch Barを開く。
《ルノス遺跡》
Enter
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ルノス遺跡
数百年前に姿を消した古代都市。
伝承によれば、第一のGuardianが眠る場所。
守護モンスター
Stone Titan
推奨レベル:75
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「レベル七十五……。」
エイデンは小さく息をついた。
今の自分では到底敵わない。
だが――
Administrator Gatewayを開くには、
七つの欠片を集める以外に道はない。
考え込んでいた、その時だった。
再び通知音が響く。
TING!
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新着メッセージ
送信者:Unknown
《ルノス遺跡へ行くな。》
《第一のGuardianは、すでに目覚めている。》
《そして今回は……もう人類の味方ではない。》
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エイデンはそのメッセージを何度も読み返した。
さらに考えようとした、その瞬間――
メッセージは、これまでと同じように跡形もなく消え去った。
エイデンは北の空を見つめる。
風が静かに土と木々の香りを運んでくる。
次なる旅が、彼を待っていた。
しかしエイデンはまだ知らない。
ルノス遺跡の最深部で――
黄金色の瞳が、ゆっくりと開かれたことを。
岩が砕ける音が、遺跡中へ響き渡る。
数千年もの眠りについていた巨人が、
ついに目覚めた。
《Stone Titan 起動。》
そして古の英雄たちの時代以来、初めて――
七体のGuardianの一体が、再び世界を歩き始めた。




