ゴブリンジェネラル
濃い土煙が辺り一面を覆った。
ゴブリンジェネラルの戦斧が地面を叩きつけた衝撃で、エイデンの周囲には小さなクレーターが生まれる。
何本もの木が倒れ、その背後に取り残された商人たちは恐怖の悲鳴を上げた。
「な、なんだ……あの化け物は!?」
「エイデン! 逃げろ!」
だが、エイデンは動かなかった。
ゆっくりとこちらへ歩いてくるゴブリンジェネラルを、ただ真っ直ぐ見据える。
その一歩ごとに大地が震えた。
ドン……
ドン……
ドン……
エイデンは深く息を吸う。
「《Analyze》」
ティン!
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ゴブリンジェネラル
レベル:70
種族:ゴブリン
ランク:エリアボス
HP:18,500 / 18,500
弱点 ・左膝(古傷あり) ・戦斧を振り下ろした直後、右目に0.4秒間の死角が生じる ・ゴブリンシャーマンを非常に重要視している
警告 現在の勝率:18%
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「……十八パーセントか。」
低い。
あまりにも低い。
だが――
ゼロではない。
ゴブリンジェネラルが巨大な戦斧を持ち上げた。
「貴様が……」
「……我が兵を殺した人間か。」
エイデンは斧を握り直す。
「俺は、お前たちに襲われた人たちを守っただけだ。」
ゴブリンジェネラルは鼻を鳴らした。
「人間というものは……」
「……いつも自分が正しいと思い込む。」
次の瞬間――
その巨体が一気に踏み込んだ。
ヒュオッ!!
予想を遥かに超える速度。
巨大な戦斧が空気を切り裂く。
エイデンはとっさに横へ転がった。
ドゴォォン!!
さっきまで立っていた場所が一瞬で砕け散る。
「くっ……速すぎる!」
レベル70。
その数字は、ただの数値ではなかった。
力の差は圧倒的だった。
ゴブリンジェネラルは間髪入れず追撃する。
二撃目。
三撃目。
エイデンは避け続けることしかできない。
反撃する隙など、まるで存在しなかった。
遠くでは商人たちが青ざめた顔で見守っている。
「あの子……死ぬぞ……。」
「勝てるわけがない……。」
後方ではゴブリンシャーマンが嘲笑う。
「グラ……グラ……。」
まるで勝利を確信したかのように。
しかし――
エイデンは小さく笑った。
「引っかかった。」
「何?」
ゴブリンジェネラルが眉をひそめる。
知らぬ間に――
エイデンは回避を続けながら、わざとゴブリンシャーマンから引き離していた。
今や二人の距離は三十メートル近く離れている。
再び《Analyze》が反応した。
《弱点検知:ゴブリンシャーマンを守ろうとする本能》
「なら……!」
エイデンは突然向きを変えた。
ゴブリンジェネラルではなく――
ゴブリンシャーマンへ一直線に駆け出す。
「なっ!?」
ゴブリンジェネラルが目を見開く。
「やめろ!!」
狙われるとは思っていなかったゴブリンシャーマンは慌てて詠唱を始める。
しかし――
エイデンはすでに目の前まで迫っていた。
「《Analyze》」
杖の先端にあるマナストーンへ赤いマーカーが浮かぶ。
「もう遅い。」
バキィィン!!
エイデンの斧が杖を粉砕した。
先端のマナストーンも砕け散る。
「グアアアァァァッ!!」
ゴブリンシャーマンが絶叫する。
周囲に展開されていた魔法陣はすべて消え去った。
残っていたゴブリンウォリアーたちも動揺し始める。
中には後退する者まで現れた。
「よし!」
だが、その笑みは一瞬で消える。
巨大な影がエイデンを覆った。
ゴブリンジェネラルがすぐ背後まで迫っていたのだ。
「貴様……」
「……我らの祭司に手を出したな。」
怒りに満ちた低い声。
エイデンはゆっくり振り返る。
「まずい。」
巨大な戦斧はすでに振り上げられていた。
避ける時間はない。
ドゴォォォン!!
戦斧が大地を砕く。
エイデンは寸前で飛び退いたものの、衝撃波をまともに受けた。
「ぐっ!!」
身体は数メートル吹き飛ばされ、大木へ激突する。
HP -340
Holy Worldへ来て以来――
初めてエイデンのHPバーが減少した。
胸を押さえながら苦しそうに息を吐く。
「痛っ……。」
これまで戦ってきたのは、自分より遥かに弱い相手ばかりだった。
だが今は違う。
圧倒的な実力差を、身をもって思い知らされていた。
ゴブリンジェネラルは再び戦斧を構える。
「貴様は強い。」
「だが……」
「……まだ足りぬ。」
止めの一撃を放とうとした、その時。
ティン!
Search Barが鳴った。
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隠し条件達成
HPが50%以下になりました。
新スキル解放。
《Predict》
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「……Predict?」
説明を開こうとした、その瞬間――
世界がゆっくりと動き始めた。
ゴブリンジェネラルの動きが、まるでスローモーションのように見える。
さらに。
青い光の軌跡が空中へ浮かび上がった。
それは、数秒後に振り下ろされる戦斧の軌道を示している。
「……見える。」
「……未来が。」
エイデンはすぐに理解した。
時間を止める能力ではない。
敵の動きを数秒先まで予測するスキルだ。
その口元に、小さな笑みが浮かぶ。
「なら……」
「十八パーセントだった勝率も――」
「……今、上がった。」
ゴブリンジェネラルが再び戦斧を振り上げる。
しかし今度は違う。
その一撃が放たれる前から――
エイデンには、その軌道がすべて見えていた。
戦いは、新たな局面へ突入する。




