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二人のSearcher

コツ……


コツ……


コツ……


古びた塔の中。


静かな足音がゆっくりと響く。


Eidenは。


螺旋階段の下で動かなかった。


右手は。


斧の柄を強く握る。


そして。


左手では。


誰にも気づかれないようにUIを開いた。


もし何かあれば。


いつでもSearch Barを使えるように。


数秒後。


階段の上から。


黒いRobeを纏った男が姿を現した。


男は。


ゆっくりとHoodを外す。


現れたのは。


Monsterではない。


老人でもない。


Eidenと。


それほど歳の変わらない青年だった。


短い黒髪。


灰色の瞳。


穏やかな表情。


だが。


その奥には。


言葉では説明できないほどの疲労が刻まれていた。


頭上には。


名前は表示されていない。


あるのは。


たった一つ。


《???》


Eidenは。


すぐにAnalyzeを発動した。


TING!


――――――――


Analyze失敗


TargetはSystem Protectionにより保護されています。


――――――――


「……」


「Analyzeを防いだ?」


青年は。


小さく笑った。


「無理に使わなくていい」


「それは効かない」


Eidenの鼓動が速くなる。


「……俺がAnalyzeを使ったことまで分かるのか?」


青年は頷いた。


「当然だ」


「俺もSearcherだから」


そう言って。


右手を上げる。


空中に。


透明なUIが現れた。


Eidenのものと。


まったく同じSystem。


「じゃあ……」


Eidenは。


青年を真っ直ぐ見つめる。


「本当にPlayerなんだな」


「NPCじゃない」


青年は。


静かに頷いた。


「ああ」


「俺の名前は……」


一瞬。


言葉を止める。


「……Ren」


その名前は。


どこにでもありそうな名前だった。


だが。


Eidenには。


妙な違和感だけが残る。


すぐにSearch Barを開く。


《Ren Holy World》


Enter。


検索結果。


――――――――


該当するDataはありません。


――――――――


「……何?」


Renは。


小さく笑う。


「出てこないよ」


「Systemから俺の痕跡は全部消したからな」


「お前……」


「一体何者なんだ?」


Renは。


ゆっくり歩き出す。


二人の距離は。


三Meterほど。


そこで止まった。


「お前と同じだ」


「この世界に閉じ込められたSearcher」


少しだけ目を伏せる。


「ただ」


「俺の方が」


「少し早く来ただけだ」


「どれくらい前だ?」


Eidenが尋ねる。


Renは。


苦笑した。


「この世界の時間なら」


「もうすぐ十年になる」


「……十年?」


Eidenは。


思わず目を見開く。


「つまり」


「Holy Worldで十年間生きてきたのか?」


「ああ」


Renは頷く。


「できることは全部やった」


「全員を救おうとした」


「魔王も倒した」


「裏切り者も殺した」


そこで。


静かに笑う。


「でも」


「Endingだけは」


「何一つ変わらなかった」


塔の中が。


静まり返る。


Eidenは。


ゲーム時代に読んだSpoilerを思い出していた。


Holy Worldは。


必ずBad Endingになる。


それは知っていた。


だが。


何度もEndingを変えようとした人間がいたとは。


想像もしなかった。


「まさか……」


Eidenは。


Renを見る。


「世界を」


「やり直したのか?」


Renは。


ゆっくり頷く。


「何度も」


その一言だけで。


Eidenは固まった。


「やり直す?」


「ああ」


「世界がEndingへ到達するたび」


「俺は最初へ戻る」


「世界中の人間は」


「記憶を失う」


「覚えているのは」


「Searcherだけだ」


「……」


Eidenは。


何も言えなかった。


もし本当なら。


Renは。


同じ人たちの死を。


何度も。


何度も。


見続けてきたことになる。


「原因は?」


Eidenは尋ねた。


「どうして世界は繰り返される?」


Renは首を振る。


「まだ分からない」


「ただ一つだけ」


「確かなことがある」


「すべては」


「Demon Manaが現れた時から始まる」


Eidenの表情が鋭くなる。


「じゃあ」


「Demon Manaを広めたのはお前か?」


Renは。


真剣な顔になる。


「違う」


「Crystalを持ち去ったのは俺だ」


「でも」


「作ったのは俺じゃない」


「なら」


「どうして隠す?」


Renは。


長く息を吐く。


「もし今」


「あのCrystalを壊したら」


「世界そのものが崩壊する」


「……そんな馬鹿な」


「信じるかどうかは自由だ」


「だが」


「事実だ」


Renは。


遠くを見るように呟く。


「俺は」


「わざと敵になった」


「そうしなければ」


「自由に動けなかったからだ」


「自由に?」


「監視される」


その言葉に。


Eidenは反応する。


「監視?」


「誰に?」


Renは。


初めて表情を曇らせた。


ゆっくりと。


塔の天井を見上げる。


「上を見ろ」


Eidenも。


同じ方向を見る。


だが。


何もない。


「天井しかない」


Renは。


苦く笑う。


「違う」


「俺たちを見ている存在だ」


その瞬間。


Eidenの背筋に寒気が走った。


すぐにSearch Barを開く。


《Holy Worldを監視している存在は?》


Enter。


画面が点滅する。


そして。


表示されたのは。


――――――――


検索結果


AdministratorによってAccessが拒否されました。


――――――――


「……Administrator」


Eidenが呟く。


Renは。


静かに頷いた。


「ようやく見えたか」


「俺たちの敵は」


「魔王じゃない」


「裏切り者でもない」


「Monsterですらない」


Renは。


拳を握る。


「本当の敵は」


「Systemそのものだ」


その瞬間。


TING!


赤いNotificationが。


二人の前へ同時に表示された。


――――――――


WARNING


禁止された会話を検知しました。


Administratorが介入します。


――――――――


ゴゴゴゴゴ……


塔全体が。


激しく揺れ始める。


石造りの床へ。


無数の亀裂が走る。


外から。


数え切れないMonsterたちの咆哮。


Renは。


一瞬で剣を抜いた。


表情から笑みが消える。


「……くそ」


「見つかった」


Eidenが何かを聞くより早く。


黒い光が。


塔の天井を突き破った。


ゆっくりと。


人型を形成していく。


その存在の頭上。


表示されていた文字は。


たった一つだけ。


《ERROR》

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