Analyze
Eidenの身体を包んでいた光が、ゆっくりと消えていった。
エファス村の集会所にいる誰一人として――
彼がたった今Hidden Jobを手に入れたことには気づいていない。
彼らから見れば。
EidenはGarethのCrystalを握ったまま、ほんの少し黙り込んでいただけだった。
GarethがCrystalを受け取る。
「ふむ……」
「少し妙な反応だったな」
Dariusが眉をひそめる。
「妙って?」
「普通、このCrystalはTalentを測るためだけに使う」
「だが今……」
「今まで見たことのないResonanceが起きた」
Garethはゆっくり首を振った。
「まあ……」
「Manaの干渉かもしれん」
Eidenは心の中で安堵の息を吐いた。
よかった。
彼らには――
System通知が見えていない。
もし見えていたら。
Hidden Jobの存在は。
一瞬で注目の的になっていただろう。
「もう用がないなら、俺は戻ります」
Eidenが言う。
Garethは頷いた。
「ああ」
「Trainingは続けろ」
「このまま成長すれば――」
「いつかGuildへ加入することもできるだろう」
「ありがとうございます」
Eidenは集会所を出た。
そして。
人のいない場所まで来ると。
すぐにUIを開く。
――――――――
【Hidden Job:Searcher】
New Skill:
・Analyze Lv.1
・History Lv.1
・Bookmark Lv.1
・Scan Lv.1
――――――――
「やっと……」
Eidenは《Analyze》を選択した。
説明が表示される。
――――――――
【Analyze】
Targetを詳細に分析する。
Skill Levelが高いほど――
より多くの情報を取得できる。
――――――――
「試してみるか」
道端にある石を見る。
《Analyze》
TING!
――――――――
【Rock】
種類:Granite
Quality:Common
売却価格:2 Copper
――――――――
「……」
Eidenは小さく笑った。
「本当に物まで分析できるのか」
次に。
近くの木を見る。
《Analyze》
――――――――
【Oak Tree】
樹齢:28年
状態:Healthy
中品質の木材を14本採取可能。
――――――――
「便利すぎるな……」
想像していた以上に。
使い道の多いSkillだ。
Eidenはその後も。
近くにある様々な物へAnalyzeを試していく。
石。
草。
木。
道具。
一つずつ。
表示される情報を確認していた。
その時。
「Eiden」
突然。
名前を呼ばれた。
振り向く。
Dariusが歩いてくる。
「何か見てたのか?」
「え?」
EidenはすぐにUIを閉じる。
「あ……いや」
Dariusが小さく笑った。
「お前、本当によくぼーっとしてるな」
「……」
「ついて来い」
「見せたいものがある」
――――――――
二人は。
エファス村の外れにある小さなTraining Groundへ向かった。
そこでは。
Guildの冒険者たちがCombat Trainingを行っている。
剣と剣がぶつかる音。
掛け声。
足音。
様々な音が飛び交っていた。
Dariusは。
置かれていた木剣を一本手に取った。
そして。
Eidenへ向ける。
「俺と戦え」
「……は?」
「Trainingだ」
「お前がどれくらい戦えるのか見たい」
Eidenは少し迷った。
もし。
本気を出したら――
秘密がバレる。
だが。
逆に弱すぎるふりをすれば。
Dariusに何もできないと思われるかもしれない。
「……分かった」
Eidenも。
木剣を一本取った。
二人が向かい合う。
周囲の冒険者たちも――
徐々にこちらへ注目し始めた。
「Dariusさんが村の子供をTrainingするのか?」
「可哀想にな」
誰かが笑う。
Dariusが木剣を構えた。
「始めるぞ」
「うん」
次の瞬間。
TAK!
Dariusの木剣が高速で振るわれた。
Eidenは。
ほんの一歩。
横へ動く。
空振り。
「……ほう?」
Dariusはすぐに二撃目。
今度は横薙ぎ。
SWOOSH!
Eidenは。
また避ける。
「……」
Dariusの目が少し細くなる。
「反射神経がいいな」
今度は。
攻撃速度を上げる。
一撃。
二撃。
三撃。
連続攻撃。
だが――
一度も。
Eidenへ当たらない。
周囲で見ていた冒険者たちも。
徐々に表情を変え始める。
「……あの子」
「普通じゃないぞ」
Eidenは。
その間。
こっそりとSkillを使った。
《Analyze:Darius》
TING!
――――――――
【Darius】
Level:41
Job:Swordsman
Guild Rank:D
状態:Slightly Tired
Weak Point:
・左肩
過去の負傷
・右脚
移動速度 -7%
――――――――
「……!」
Eidenの目が僅かに開く。
「Weak Pointまで分かるのか……」
だから。
Dariusが右脚を使う時だけ。
僅かに動きが重かった。
「Eiden!」
Dariusが踏み込む。
正面から。
一直線の攻撃。
今回は。
Eidenは避けなかった。
TAK!
木剣で受ける。
そのまま。
相手の剣を外へ流す。
そして――
身体が自然に動いた。
Eidenの木剣が。
Dariusの左肩へ。
ピタッ。
当たる。
その――
一センチ手前で止まった。
「……」
Training Ground全体が。
一瞬で静まり返る。
Dariusも。
動かなかった。
ゆっくりと。
自分の左肩の前にある木剣を見る。
「……今のは」
Eidenも。
そこで我に返った。
「……」
Dariusが苦笑する。
「本当の戦いだったら……」
「俺の負けだ」
周囲が。
一気に騒がしくなる。
「嘘だろ!?」
「Dariusさんが負けた!?」
「何者なんだ、あの子!?」
Eidenは慌てて木剣を下ろした。
「ごめん」
「たまたまだよ」
Dariusが。
逆に笑った。
「たまたま?」
「違うだろ」
Eidenの身体が僅かに硬くなる。
Dariusは。
自分の左肩へ触れた。
「俺の古傷を狙った」
Eidenの心臓が跳ねる。
「まずい……」
Analyzeの情報を。
無意識に使ってしまった。
だが。
幸い。
Dariusは。
Eidenが普通に動きを観察して見抜いたと思っているらしい。
Dariusが。
Eidenの肩を軽く叩く。
「本気で冒険者を目指すなら――」
「お前にはTalentがある」
「でも」
表情が少し真剣になる。
「敵を甘く見るな」
Eidenは頷いた。
「覚えておく」
Trainingが終わった。
その瞬間。
TING!
再び通知。
――――――――
【Skill Level Up】
Analyze Lv.1 → Lv.2
New Ability:
《Weak Point Prediction》
――――――――
「……もうLevel Up?」
Eidenは小さく笑った。
SearcherのSkillは。
想像していたより――
遥かに速く成長している。
だが。
同じ頃。
あの謎の洞窟。
黒いRobeの男も――
自分のSystem Windowを見ていた。
そこには。
《Analyze Lv.5》
男の口元に。
僅かな笑み。
「……まだLevel 2か」
「悪くない」
そして。
小さく呟く。
「でも――」
「先は長いぞ、Eiden」
その言葉は。
一つの事実を。
はっきりと示していた。
洞窟にいる謎の男。
彼もまた――
Hidden Job《Searcher》を持っている。




